SDG

朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故の真相解明に挑む


第4章
事故原因究明のために

     現実的には、事故原因究明の作業が、裁判所に移されてしまったので、ここでのルールに従わざるを得ない。
それで、SDGは「準備書面(2)」を作成し、平成17年(2005年)3月25日に新潟地方裁判所と原告新潟県に送付した。ここでは、調査委員会の調査報告書の出鱈目な記述について、記録したものである。



以下、SDGの「準備書面(2)」

本準備書面(2)は、本件訴状の前提となっている、落下原因究明調査と称している「事故調査委員会の調査結果報告書(甲第1号証)」を、工学的常識に照らし、その膨大な誤りを指摘し、結果として何ら真の落下原因を解明していないことを論証した上で、併せて、これらについて原告・新潟県の釈明を求める。
さらに、被告SDGが究明した本件落下原因を主張するものである。

調査結果報告書(甲第1号証)は、全編が8項目から構成されているが、技術工学上の直接的落下原因の解明は、4項「事故の状況」と5項「連絡デッキ崩壊過程の推定と検証」のみである。
本準備書面では、4項、5項に加え、補足的に7項「残りの連絡デッキの取り扱い」について取り上げる。



第1 調査結果報告書(甲第1号証)の4項について

(1) 落下状況の分析が杜撰である。
この項は、落下現象を正しく精緻に観察、記録することに徹すべきである。にも係わらず、既に「推定される」「判断される」などと、落下現象に対しての予断を行っている。
すなわち、この4項では、P34からP56にわたる23ページの記述に、以下の合計11ヶ所の推論を行っている。
「・・・と推定される」   4ヶ所
「・・・と考えられる」   2ヶ所
「・・・と判断される」   3ヶ所
「・・・と報告されている」 2ヶ所

これらの調査委員会の推論に対して、原告・新潟県はどのように検証あるいは実証したかの釈明を求める。(求釈明その1)

 
(2) 本件事故のような場合、落下現象の正確で精緻な観察が原因究明にとって根本的に重要である。
しかるに、第1回調査委員会(平成15年9月1日)後の丸山委員長の記者会見で、「今日、現場を見て、これ以上見ることはないだろうから、早い時期に撤去して良いと思う。」と述べている。(乙D第17号証)
被告SDGでさえ、3回にわたる現場観察(平成15年8月27日、28日、9月4日)を行い、詳細な調査を行っているにも関わらず、である。
しかも、9月1日の委員会のたった1回の現場調査に記録があるのは、委員5名のうちの3名だけで、残りの委員2名の観察記録はどこにも無く、現場観察に関しての意見交換の記録すらも存在しない。

調査委員会が落下現場の検証をどこまで行ったかの議事録の提出を求める。(求釈明その2)

 
第2 調査結果報告書(甲第1号証)の5項の全般について

(1) この項が落下原因解明にとって最も重要な項であるが、全記述にわたり推論をしているだけで、確たる技術工学上の見解となっていない。
この項はP57からP125にわたる69ページの記述であるが、その中で実に多くの推論を行っており、それらは、以下の合計105ヶ所である。
「・・・と推定される」    27ヶ所
「・・・と想定される」     9ヶ所
「・・・の可能性がある」   14ヶ所
「・・・と報告されている」  10ヶ所
「・・・と考えられる」    25ヶ所
「・・・と判断される」     4ヶ所
「・・・と伺える」       1ヶ所
「・・・と言える」       1ヶ所
「・・・と推察される」     5ヶ所
「・・・は考えられない」    3ヶ所
「・・・と仮定する」      3ヶ所
「・・・と思われる」      3ヶ所
驚くべきことに、この報告書は、平均して1ページ当たり1.5ヶ所の推論に立脚した原因究明論文となっており、このような技術論文は、古今東西にわたり皆無である。
また、調査委員会が推論にもとずく「仮説」を立てることは自由だとしても、それに立脚して訴訟を起こすのであれば、原告・新潟県には委員会の推論を検証、実証する義務がある。
なぜなら、委員会の「仮説」が真実である保証はどこにもないからである。

推論の全ヶ所について、検証、実証結果の釈明を求める。
原告・新潟県は、当然のことながら、検証、実証を行った上で提訴に臨んでいるはずである。(求釈明その3)

 
(2) 本5項の報告書記述は文脈が錯綜し論旨が乱雑であるため、専門家でさえ本5項の内容を理解することは至難の技である。

問題の所在を整理、集約すると以下の4項目である。

1.ロッド定着部の耐力評価
2.鉄骨溶接部の耐力評価
3.第一回ジャッキダウン時の損傷評価
4.崩壊シミュレーション解析結果の妥当性評価

問題点を明白にするために、以下の求釈明および被告SDGの主張は、上記の項目ごとに報告書記述を集約し、全貌を明らかにする。

 
第3 調査結果報告書(甲第1号証)の5項のうち、「ロッド定着部の耐力評価」について
 
(1) 本5項のP70からP75にわたり委員会は、四つの計算基準で、定着部のせん断耐力を計算している。
それらの計算結果を、表にまとめ直したものが下表である。
同じ定着部にA〜Dの四つの計算基準をあてはめて計算しているが、その計算結果は基準式によって大きくばらつく。
下表Aの、左欄が基準式の出所を示し、右欄が調査委員会の計算結果による、定着部のせん断耐力の大きさを、グラフにしたものである。

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  この表の後ろにある数字が算定値だが、基準ごとにまったく異なる数字である。この大きなバラツキは、各々の基準式に間違いがあるためでなく、いずれの基準式もこの定着部の計算に適したものでないために生じたものである。特に、建築基準法・告示第1450号の基準式も、この定着部のせん断耐力算定式でないことがわかる。しかも、これらの計算による耐力算定結果の数値は、この報告書のどこにも使われていない。

何のために、報告書に掲載したのかの釈明を求める。(求釈明その4)

(2) 本5項のP78およびP79に、実大実験(第一建設による)の結果が示されている。
しかし、ここには実験の信憑性を保証する、必要な事項の記載がない。
以下が、工学的な実験に際しての基本的な必要項目である。

1.実験の目的
2.実験場所と実施日時
3.実験の主催者と実施機関
4.実験装置の概要と加力装置の詳細
5.実験の方法
6.計測と記録
7.試験体の仕様
8.実験結果

以上の8項目のうち、報告書には7項と8項の一部のみが記されている。

上記1項から6項までの釈明を求める。
原告・新潟県が、この実験を妥当なものと判断しているのであるから、釈明を行うことに何ら問題はない筈である。(求釈明その5)


(3) 上記第一建設の行った実大実験の結果を調査委員会では採用し、このロッド定着部の破壊耐力を約65tf(報告書P110)として、その後の解析でR21入江側斜材ロッド定着部が落下の起点と特定している(報告書P118以降)。

前(1)項の計算値(表A)を再録し、第一建設の実大実験の結果(報告書P80)と、調査委員会が採用した耐力数値(報告書P110)を併記すれば、その意味を明確にすることができるので、次ページの表Bにまとめた。

報告書P79の第一建設の実験結果について、加力条件が付記されていないから、すべてが同一条件下で実験されたかのように記載されている。第一建設のホームページで発表した加力条件は、60N-3および60N-6の試験体はロッドに角度を付けて引張ったもので、定着部に対して偏心を起こしており、他の試験体とは明らかに異なる加力条件である。
報告書P110最下段、「この耐力は、設計された・・・耐力である。」は65tfを指しているが、もし、第一建設の実験が正しいものであると仮定しても、設計に対応しているのは、「補強筋有り」の場合で120tfである。次ページ表BのE欄でブルーでマークした、60N-3および60N-6の試験体はロッドを偏心させて荷重をかけたもので、このような状態は実際には存在しない。

表B 各種基準算定値と第一建設実験結果および調査委員会採用値の一覧表
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  上表のF欄が調査委員会が特定したロッド定着部の耐力65tfであり、E欄の第一建設の実験結果の最小値を採用していることが判る。

第一建設の実大実験内容を調査委員会は正しく読み込んでいたのかの釈明を求める。(求釈明その6)

(4) 調査委員会の定着部の破壊が、本件デッキの崩壊起点であるとする論拠をわかりやすく言えば、以下の図Cで説明できる。
下図Cの左側の図は、設計上、定着部に常時発生している力が30のとき、設計耐力が100あれば十分な安全率があるから、本件のような事故は発生しない、という設計上の考え方を示している。

図C 調査委員会の定着部破断が崩壊起点であるとした論拠を図化
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  上図の右側の図が、調査委員会が作成した「仮説」であり、原告・新潟県が提訴した根拠(本訴状P12)を図にしたものである。
すなわち、まず、定着部に100あるべき耐力が、@設計ミス(計算を間違えていたから)で80程度しかなかった、さらに、Aこの定着部に入れるべき鉄筋が入っていなかったので耐力が低下し60程度になってしまった。そして、B第一回ジャッキダウンで定着部に大きな損傷があったから完成時には40程度の耐力しか残っていなかった。そういった状態では、Cクリープ破壊という現象を考えると、30の存在していた荷重にたいして破壊してしまうと考えられる、というものである。
この委員会の「仮説」の@とAの立脚点は、前項の第一建設の実大実験の結果の最小値の採用だけである。他のいかなる理論式も介在していない。
BとCは後述するが、いずれも根拠のない推論である。

(5) 定着部の破断形状は、上段の写真は落下事故現場で撮影したものであるが、
下段の写真(報告書P79)が第一建設の実大実験の破壊形状である。

  写真D 定着部の破壊状態記録写真
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落下現場で撮影した定着部の破壊状態

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第一建設の実大実験結果の破壊状況

  誰が見ても明らかに異なる現象を示しており、第一建設の実験が実物を再現した実験ではなく、小さい耐力結果を意図的に出すための実験であったことがわかる。

(6) 調査委員会要旨(新潟県ホームページに掲載)から転載したのが以下である。

平成15年10月5日の第5回調査委員会での発言。(乙D第21号証)
丸山委員長: おおよその崩壊のメカニズムというものを想定した。それについて、今回以降解析的に、ちゃんとそれが正しいかどうか確認しながら、事故の原因の核心に迫っていきたい。
長         大: 構造解析について説明。
丸山委員長: 解析の中間報告は、まだチェックすることがあるかなと思う。次に行く前にこの委員会は、できるだけオープンでやっていた方がいいかと思う。委員会に対する資料提供に対しては、委員会として検討して、使えるものは使っていくこととした。第一建設が定着部の実験をして、定着部のデータを提供すると言っている。
委         員: 今の実験は第三者に出して行ったものか。自分の会社の中で行ったものか。
丸山委員長: 第三者です。

この第5回調査委員会で、丸山委員長は、第一建設が行った実大実験の紹介を行い、「(実験を行ったのは)第三者です」と明確に発言したことが記録されている。

丸山委員長はどういった経路で、この実験の存在を知ったのかの釈明を求める。(求釈明その7)
丸山委員長の発言の「第三者」とは、JR東日本の技術関係者を指すのか釈明を求める。(求釈明その8)


(7) その次の平成15年10月25日の第6回調査委員会要旨(乙D第22号証)から。

事務局: 第一建設(株)定着部試験結果報告書について説明。
委   員: 供試体にプレストレスは入れたのか、柱材の位置、基礎スラブと鉄骨の位置は現物とあっているのか。
事務局: プレストレスは入れていない。
委   員: 実験での斜材が抜けた破壊面と落下したものは同じ形なのか。
委   員: ここしか壊れようがないから、似ている。
委   員: 実物は圧縮が入って、引張っているが。
事務局: 圧縮は効いていない。
委   員: このデータは、我々が検討する上で目安となる。
委   員: 無筋で60t、補強筋ありは100tで破壊している。この値は委員会の試計算と合っている。三つの方法で検討した結果とほぼ同じである。
委   員: 試験の配合と実際の配合は異なっている。
委   員: 試験時の強度を合わせているため。

第一建設の実験内容が、最初に報告されたのは、委員会に対してなのか、事務局の調査班に対してなのか、の釈明を求める。(求釈明その9)
なお。この議事録要旨からは、最初に説明を受けたのは、事務局である調査班(すなわち原告・新潟県)と解釈できる。
最初に説明を受けたときの第一建設の実験説明の内容を明らかにするべきである。(求釈明その10)
この委員会要旨からは、調査委員会の約半数の委員は、この実験現場を見ておらず、第一建設から直接、説明すらも受けていないことが想像できる。
このような状態において、委員全員がどのようにしてこの実験結果を了承したのかの釈明を求める。(求釈明その11)
「ここしか壊れようがないから、似ている」と発言した委員は、実際に事故現場写真と照合したのか釈明を求める。(求釈明その12)
委員の一人が「補強筋ありは100tfで破壊している。」と述べているが、100tfは偏心させた実験で、正常なのは119tfおよび120tfである。実験データをキチンと読み込んでいたかの釈明を求める。(求釈明その13)
また、同委員が、「三つの方法で検討した」と述べているが、前述の通り、報告書には四つの基準で検討したことが明記されているため、この時点、平成15年10月25日の段階では三つだけであったことを示している。四つ目の検討はいつ行われ、どの基準を指しているのかの釈明を求める。(求釈明その14)
第一建設の実験は、コンクリート打設後4、5日後に行われている。一方、事故が起こった定着部のコンクリートは打設後2年以上を経過している。この両者のコンクリートが、同じ性状のものであることの証明を求める。(求釈明その15)


(8) 委員会要旨には上記第6回委員会の後では、この第一建設の実験が定着部の耐力試験として適切なものかどうかについて、まったく議論することなく、報告書P110に、「斜材ロッド定着部の耐力を把握する実験としては妥当であると判断されるので斜材ロッド定着部のひび割れ耐力および破壊耐力はおよそ以下のように推定される。・・・
          ひび割れ耐力  約40tf
          破壊耐力    約65tf    」
として、R21定着部が落下起点であると結論付けているのである。
これらの数値は第一建設の実験結果のコピーであり、技術工学的な説得力ある数値でないことは明らかである。
この安直な、誤った判断が、本件落下事故究明を混沌とさせてしまった元凶である。

(9) 落下事故は5スパンの連続桁構造のうち、1スパンだけに起こったのであって、残りの4スパンは事故後も、そのまま現地に建っていた。
この残存デッキの取り扱いついて、委員会の見解を報告書P137で記述している。
「県の試算によると、残存しているデッキの・・・復旧費用は約4億6千円と見込まれている。一方、残存デッキを撤去し、全てを鋼構造物で新規に建設する場合の費用は、建設費約6億円、撤去費約1億円と見込まれる。
残存デッキを活用する場合は、・・・長期的な安全性に問題が残ることから、全ての区間を新設すべきであると考えられる。」
この報告書全般の、曖昧で非論理的な記述と共通するものである。
すなわち、残存デッキをうまく復旧すれば4.6億円でできるが、撤去して新設すれば7億円かかる、しかし後者を選択すべきだ、と言っており、新潟県納税者の負担を無視した、熟慮の無い、安直で無責任な結論である。
しかも、この見解に原告・新潟県は同意した。平成16年2月議会で新潟県知事は、残存デッキの解体撤去を言明したのである。

被告SDGにとっては、全く理解し難い知事声明であったが、解体撤去を決定したのであれば、それを利用して事故原因解明に役立てるべきだと考え、知事に残存デッキを利用した現地試験の必要性を訴える書簡(乙D第8号証)を平成16年3月25日に送った。
これは原告・新潟県にとっても調査委員会の推論を立証するチャンスのはずであった。しかし、同年4月13日森川港湾空港局長名での書面は「現地での試験は考えられない」との拒否回答(乙D第33号証)であった。それに対して、被告SDGは現地調査の重要性を再度訴える書簡(乙D第9号証)を4月15日に森川局長に送った上で、4月20日に「残存デッキの取り扱いに関する要望」(乙D第10号証)を提出し、その後も、県当局と積極的、継続的に交渉を求めた結果、平成16年6月7日に「残存デッキおよび落下デッキを用いた試験に係る協定書」(乙D第36号証)を、新潟県知事との間の締結にこぎ着けた。
しかし、この協定締結に際し、現地試験は2カ所に限定すること、その他は現地から定着部を切り取って実験室試験を行うことを同意条件とすることの強要が県当局からあり、被告SDGはこれを踏まえて、翌8日に全体的試験最終計画書を作成、提出した。それが、「残存デッキおよび落下デッキを用いた試験計画書」(乙D第37号証)である。

(10) 協定書(乙D第36号証)の締結に当たり、県当局は、試験実施のための全費用をSDG負担としただけでなく、試験期間中の残存デッキの仮設支保工の損料の負担までを条件とし、その条件なしには協定は締結しないと主張した。
不合理な条件であったが、試験は重要であり、試験準備まで一日も猶予が無かったため、同意せざるを得なかった。その支保工の損料費用は、553万9千円であった。
本件訴状のP107の明細表1-1に、このときの費用負担が明記されているが、支保工損料の総額は、1171万8千円である。一方、SDGが、現地試験の準備、片付けを含めた、たった3日間のために県に支払った額が553万9千円である。これは、県が、試験を中止に追い込むために意図した金銭上の負担であったことは明らかであり、明白な不当請求である。
本件訴状が手元に届いた時点でこの事実が判明し、平成16年10月12日に協定書作成時の窓口であった港湾空港局野水参事に「試験負担金額の疑義について」(乙D第45号証)を送り回答を求めたが、同月28日に森川局長から回答拒否の返事(乙D第47号証)が届いた。

そこには、「訴状の内容に関する質問については、訴訟の中で対応すべきものと考えています。」とあり、改めてこの問題に関しての原告・新潟県の釈明を求める。(求釈明その16)

(11) 現地試験は平成16年6月10日に行われた。第三者の試験立会人を擁し、かつ公開試験としたため、当日約150名の専門家の注視の中で行われた。
次ページの写真Eのように2か所のロッド定着部にオイルジャッキをセットして徐々に荷重を対称に加えて定着部の耐力を測定したのである。

写真E 残存デッキを用いた現地試験(2004.6.10.撮影)
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  調査委員会は、報告書P110で、この定着部のひび割れ耐力40tf、破壊耐力65tfとしているので、実物はその通りであるかどうかの検証を目的とした試験である。
用意できたジャッキは100tonまでが限界なので、安全を考えて95tfまで張力を増加して試験を中止した。少なくともこの2カ所の試験では調査委員会が設定した耐力を大幅に越え、95tfまで張力を加力しても、定着部は健全であったことが実証された。

(12) 上記試験は、県職員および調査委員会の委員1名も立ち会っており、その結果は逐次、森川局長に報告されていたが、試験完了後も原告・新潟県は何の反応も示さず、こういった検証試験をひたすら無視する態度を貫いていた。
しかも、現地試験前日の6月9日に新潟県ホームページで「今回の現地試験の荷重のかけ方が妥当であるか疑問である。」(乙D第38号証)と表明している。協定書締結時(6月7日)には試験内容に同意しながら、試験の前日になって自ら異議を唱えるという、常識を超えた姿勢であった。

しかし、SDGは現地試験に先立ち、2種類の定着版を用意し、最初は厚い定着版を使用し、95tfに到達した後で試験装置を解除し、次に薄い定着版を使用して同じ検証試験を行った。このいずれでも定着部は95tfに達しても健全であった。すなわち、この定着部は「せん断耐力」も「割裂耐力」も委員会のいう65tfを大幅に上回ることを実証し得たのであり、6月9日の原告の「疑問である。」(乙D第38号証)という疑義にも適切に対応した試験結果であった。

(13) この現地試験だけでは、この定着部に実在した耐力を証明することはできないので、残存デッキから定着部を幅1m、長さ2mで切り取り、実験室に運んで、そこに試験用鉄骨構台を用意しておき、合計26体を対象にした試験を行った。
この実験室試験に関しても、SDGが切り取り施工費を負担した試験供試体の引渡しを、県が行わないという事態が発生し、結局、試験は、当初の予定より遅れ、平成16年8月13日から21日に実施された。
これも、調査報告書での「仮説」を検証するための残された唯一の方法であり、本来でれば原告・新潟県が行うべき試験である。

6月10日の現地試験の結果を承知していながら、原告・新潟県は報告書の「ロッド定着部の耐力評価」をどのように検証する積もりであったのかを再度、釈明を求める。(求釈明その17)

(14) 県当局からの「供試体引渡書」を受領できたのが8月5日になってからである。これを受けて、最終的にSDGが策定した「残存デッキを利用したロッド定着部の実験室試験計画書」(乙D第42号証)は平成16年8月10日付けである。

この試験の目的、その他の試験内容は乙D第42号証の通りであるが、特に試験の第三者性、客観性を確保するために試験実施は財団法人・建材試験センターにお願いし、試験場所は日本大学工学部安達・中西研究室に委託し、公開試験とした。この試験には新潟県職員も立ち会った。
試験体は、新潟の現地から切り出し、千葉県の実験場まで輸送した。実験場に到着した試験供試体(写真F)は、切り出しのときに大きく損傷していたが、試験を実際のもので行うことに重点を置き、補修をせずにそのままの状態で試験は行われた。
試験は写真Gの状況で行われた。試験台は、この試験のために制作したもので、実際に現地で、この定着部が置かれていた力学的環境を再現するために設計したものである。こういった試験では、試験台そのものの設計が最も重要であり、現地を再現できなければ試験結果の意味を失ってしまう。この試験台の設計に当たり、日本大学・安達洋教授と中西三和教授の指導を受けた。

  写真F 試験体を現地から切り出し輸送後、実験場に保管
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  写真G 実験場での定着部耐力試験
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  図H 試験台設計説明図
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  上図の中央ピンクが試験体で長さ2m、ブルーで着色した鉄骨架台がPC床にプレストレストを導入する装置で、現実にあった状態を再現している。緑色の装置は試験体の下にジャッキをセットして試験体を押し上げて曲げとせん断力を再現する機構である。そして、赤いロッドの先端にジャッキをセットしてここで段階的に引張って、定着部に加力する。ジャッキで引張った垂直反力は周辺の構台を通して試験台の中央、赤い鉄骨に加わる。ここは現実には鉄骨の柱が建っていた位置である。そして、これらの装置は自己完結型と呼ばれる機構になっており、試験台は実験場の土間に載せているだけで力の逸散を防いでいる。要は、現実を再現するためには、最小限、このような機構が必要である。

(15) 次ページの表IのG蘭が、この残存デッキを利用した実験室試験結果の一部である。同じ表IのE欄は、第一建設の実大実験の結果、F欄は調査委員会の採用値を再録した。
G欄の最上段に、補強筋不明とあるのは、試験後供試体を、県当局がSDGの了解なしに、新潟に持ち帰ったため鉄筋量の調査ができなかったためである。

表I 残存デッキを利用した実験室試験結果
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  調査委員会が設定したロッド定着部の耐力65tfに較べ、残存デッキを利用した耐力試験では、2倍以上の耐力を保持していたことがわかる。

(16) これだけ高い耐力を保持しているにも関わらず、実際の落下事故では定着部が破壊している。ロッドの張力が荷重の増加なしに自然に大きくなることはあり得ないから、何故、破壊したのだろうか。
その解は構造学的に以下である。

この定着部の耐力は、単純にロッド張力の大きさだけで決定されるのではなく、定着部に他の応力、すなわち曲げモーメントと軸力の増加によって急速に耐力が低下するためである。小さなロッド張力のままであっても、他の原因でここの曲げモーメントが急速に増大すれば、この定着部は破壊に至る。事故現象はそのことを証明しているとも言える。すなわち、この定着部の耐力評価は、複合応力の大小によって決定されるのである。

一方、自然の状態では、そのような複合応力の増大はあり得ないから、上表は少なくとも定着部が落下の起点ではあり得ないことを証明したことになる。本準備書面の後半で被告SDGは、上弦材鉄骨が最初の破断であることを述べるが、溶接欠陥による鉄骨破断が最初に起こったとすると、それによってロッド定着部に大きな曲げモーメントが発生する箇所があり、そこでは上表のような定着部耐力があっても曲げモーメントが付加されることで破壊に至るのである。

すなわち、鉄骨破断が事故の起点であり、定着部破断は落下過程での結果を意味し、この試験で、定着部破断は事故の起点ではないことが証明された。

(17) 残存デッキを利用した実験室試験での破壊形状が下の写真Jの下の写真である。上は事故現場で撮影したものである。
この写真から破壊形状が相似であり、この実験室試験が現場を再現し得たことを証明している。供試体がかなりの損傷を受けていた上での試験結果であり、試験結果の耐力数値は信憑性があることが判る。

  写真J 定着部の破壊状況記録写真
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落下現場で撮影した定着部の破壊状態

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残存デッキを利用した実験室試験での破壊状況

(18) 前ページの写真は、調査委員会が判断した「せん断破壊」ではなく「割裂破壊」であることを意味している。事故の実際は、定着版を介して生ずる支圧応力による「割裂破壊」であるから定着部の外側半分だけが押し出されて割れてしまう。
この力学的性状にたいする理解力が、判断に雲泥の差を産んでしまう。すなわち、調査委員会は、「せん断破壊」でありその耐力は65tfとし、せん断補強筋の有無が重要な耐力算定の要素だとしたのである。事故現象をより深く観察していれば、このような初歩的間違いを起こさないはずである。
残存デッキを利用した実験室試験の結果を見れば明白なように、補強筋の有無は耐力評価に決定的な役割を果たしていない。

(19) 以上で調査報告書のうち、調査委員会の「ロッド定着部の耐力評価」がまったく誤っていることを実証した。さらに定着部には十分な耐力が存在していたことも検証した。
これにより、本訴訟の根幹をなす3項目(訴状P12)のうち、@定着部設計耐力の不足、すなわち設計ミス、A定着部補強筋の不具合、すなわち施工不備、の2項目がまったくの虚構であることを、被告SDGは主張、立証するものである。

 
第4 調査結果報告書(甲第1号証)の5項のうち、「鉄骨溶接部の耐力評価」について
 
(1) 事故現場で鉄骨部材が完全に破断し落下しているのは、R27上弦材(入江側、信濃川側共)のみである。
報告書P83の上段で、「鋼材の破断については専門家に診断を依頼した。
・・・溶接部で破断した箇所近傍の母材は塑性域に達しているとの報告であった。」の「専門家の報告」とは、報告書・添付資料にあるP3の平成15年9月11日付け長岡科学技術大学・武藤睦治教授の「崩落箇所破断部調査報告書」を指している。しかし、このときの武藤教授の調査は実物破断面の目視検査のみで、しかも詳細な顕微鏡写真撮影検査も提言することもなく、上記の報告書記述とは異なる見解を述べている。このような調査では工学的真実性を解明できない。

この工学的に不十分な、武藤教授の診断に信頼を寄せた根拠の釈明を求める。(求釈明その18)

(2) そして、報告書P83で調査委員会は上弦材鉄骨の形鋼、H-200x200x8x12の引張耐力を計算している。
全断面積がA=63.5cm2、引張強さがσu=5480kgf/cm2で、これを掛け合わせて引張耐力348.1tfとしている。
この計算には初歩的な誤りがある。実際にはH型綱の縦の部分(ウェブ)は2-M16のハイテンションボルトで接合され、上下の二枚の水平部分(フランジ)だけを溶接しているので、この状態でのこのH形鋼の実際の引張耐力は260tfである。
さらに、下の図K(報告書P54に記載されているものと同一)のようにフランジ面は溶接欠陥で覆われており、入江側溶接欠陥範囲を耐力から差し引くと、この鉄骨は事故当時、既に45tf程度の引張耐力しか存在しなかったことが判る。

図K 報告書P54記載の溶接欠陥図
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  この溶接欠陥顕微鏡写真が、報告書・添付資料に記載されている。R27の入江側、信濃川側の上下フランジを撮影したものが次ページの写真Lである。

写真L 報告書・添付資料に掲載のR27鉄骨破断面写真
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  この溶接欠陥を拡大顕微鏡写真に撮影したものの一部を下に複写(報告書・添付資料P74およびP80)した(写真Mおよび写真N)。いずれも想像を絶する溶接欠陥を示している。

  写真M 破断面拡大顕微鏡写真(B-1)
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  写真N 破断面拡大顕微鏡写真(C-1)
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  これらの写真が示す工学的事実についての分析が十分にできていないので、被告SDGは別途「検証申出書」を提出する予定である。

このようなボロボロな鉄骨断面の耐力評価を一切行わない理由の説明を求める。(求釈明その19)

(3) 引張耐力の評価に誤りがあるから、報告書P85のこの鉄骨部材の引張力と曲げ耐力との相互関係を示す表は、根本的に成立しない。報告書P84で、上弦材の変形角度にたいして曲げ耐力の大きさを分析しているが、このP85の架空の表を用いているので根本的に意味をなさない。

(4) 報告書P86に鋼材検査証明書が記載されている。ここではこの証明書の発行製鉄所の名前が消されているが、新潟県の参考資料には明記されている。
これをコピーしたのが次ページの表Oである。(乙D第28号証)

表O 鋼材の規格検査証明書
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  この表Oは、新日本製鐵株式会社・君津工場の検査証明書である。
しかし、調査委員会は実際に使われた鋼材の材質試験検査を行っていないから、実際の鋼材が表の鋼材検査証明書と同一のものであったことを調査していない。
このことは、落下原因調査の基本をなすもので、被告SDGは別途、「検証申立書」を提出する。

原告・新潟県は実際の鋼材とこの検査証明書とは同一のものであると言っているが、その根拠の釈明を求める。(求釈明その20)

(5) 報告書P107、「上弦材の破断を起点とする推定の棄却」と表題にある。通常、技術工学の論文では「棄却」という用語は使わない。

わずかの可能性も残さない完全否定の用語「棄却」をここで使っている理由の説明を求める。(求釈明その21)

そしてこの項で、「鋼材の専門家による調査結果では、いずれの箇所にも疲労破壊の痕跡は認められないとのことである。破断面の顕微鏡観察でも疲労破壊の痕跡は認められていない。」としている。
ここでいう鋼材の専門家は、(株)日鐵テクノリサーチであるが、この会社に調査班(すなわち原告・新潟県)が調査発注したもので、訴状P121の明細表4-1に破断面調査委託141万7千500円の支払い記載がある。しかし(株)日鐵テクノリサーチは本件の鋼材供給会社である新日本製鐵株式会社の100%子会社である。このような民間営利会社に落下原因究明上重要な調査を発注すること自体が非常識である。

第三者機関では調査ができないことの証明を求める。(求釈明その22)
(株)日鐵テクノリサーチに調査発注することを、調査委員会の同意を得ていたのかの釈明を求める。(求釈明その23)
ここでは「疲労破壊の痕跡は認められない」としているが、「引張破壊」の可能性には言及していない。疲労破壊の有無だけを調査委託した理由を明らかにするべきである。(求釈明その24)

(6) 同項の下欄には、「破断部分付近の鋼材には鋼材が塑性域に達していたことによる塗装被膜(皮膜の間違い)が剥がれるという現象が見られていて、鋼材が降伏域に達した後の溶接部破断と推定される。」とあるが、これを平易に言えば「母材が引張られて降伏したために溶接部が破断した」であり、あまりにも非工学的分析である。このような記述は調査班が発注した(株)日鐵テクノリサーチの調査報告書(平成15年12月18日および平成16年1月10日付けの2回の調査報告書)の中の記述には、どこにもない。
「溶接部は欠陥に覆われていて耐力を発揮できないので、母材部分が降伏し破断した」という分析が正しい。

この論理を故意に逆転させた調査班および調査委員会の理由の説明を求める。(求釈明その25)

(7) 報告書P108の最上段に「・・・下方に約8°の角度で曲がっていることから・・・落下に伴う力が加わったものと推定される。」と独断的な見解が記されているが、下方に曲がっているのは常時、発生している曲げモーメントによるものである可能性の方が高い。あるいは、後述するが、第1回ジャッキダウン時に角度が付いた可能性も高い。

推定ではなく各可能性における数値的解析での説明を求める。(求釈明その26)

(8) 上項の下に、「上弦材の上下フランジが純引張で降伏するためには、1本あたり約180tfが必要になる。・・・」と記述してある。

ここでの180tfの根拠は何か。報告書P83では降伏点引張耐力240.1tfと算定していたのに、180tfに下方修正した根拠は何かの説明を求めたものである。(求釈明その27)

そして、「そのような大きな引張力が作用したとは想定できないことから、・・・連絡デッキの落下に伴う大きな曲げモーメントが作用したためと考えられる。」としているが、前提となる耐力数値が大幅に違えば、すなわち溶接欠陥を評価した数値であれば耐力は大幅に低下するから、その後の分析は意味をなさない。

(9) 続いて、「上記の調査により・・・上弦材が仮に破断したとしても、連絡デッキ全体の崩壊にはつながらないと推察される。」と結論している。
上記の調査とは、前(5)から(8)項を指しており、これらの項についての報告書記述の不合理さが証明されたので、この結論には到達できない。

(10) 同じP108の中段で(注)記がある。「・・・JIS製品である限りにおいては・・・」と記されており、ここに何故このような一般論として当然のことを注記した意味が不明である。

原告・新潟県は実際の鋼材がJIS製品であることを実物で確認したのかの釈明を求める。(求釈明その28)

(11) 報告書P109上段。ここで鉄骨破断が生じたとき「衝撃力は無視する」と断定している。

ゴムひもを両手で引張った状態で、はさみでプツンと切れば、両指にパチンと当たり痛みを感じる。これは引張った力より数倍の力となって当たるからであり、その現象を衝撃力という。実際に引張っている力の大きさにたいして実際に生じる力の大きさの比を衝撃係数という。これは中学校の物理の教科書に出てくるような初歩的な力の現象である。これを報告書では「衝撃力は無視する」としているのである。

後の項で詳述するが、被告SDGの分析では、最初に入江側R27上弦材鉄骨が破断したとき衝撃係数を大きめに「3」と仮定しても本連絡デッキの崩壊にはならないことが判明している。このときに目撃者が経験した音と振動を感ずる。しかし、崩壊はしない。

1時間後に信濃川側R27上弦材鉄骨が溶接欠陥を起因として破断すると、このとき(既に入江側は破断しているので)は、衝撃係数を小さめに「2」と仮定しても下弦PC床版には大きな応力が発生し連絡デッキ全体の崩壊に繋がってしまう、ことを解析上証明したのである。

この分析は、「原因調査報告書」(乙D第29号証)で、平成15年11月15日に調査委員会にも報告してあるので、被告SDGの分析結果を否定するために、わざわざ非常識な「衝撃力は無視する」上での解析を行っているのである。

(12) 「鉄骨溶接部の耐力評価」について、以上のような初歩的なミスを調査委員会は何故、犯してしまったのだろうか。
調査班および調査委員会・丸山委員長は、調査の最初から落下起点として鉄骨破断の可能性を除外して、ロッド定着部が起点であると決めていたからである。
調査委員会議事録要旨からもその様子を伺い知ることができる。

平成15年11月23日の第8回調査委員会議事録要旨から抜粋。(乙D第25号証)
事務局: 資料「鋼材調査結果について」説明
委   員: SDGは、ここを起点とした議論をしている。これできっちり説明できるのか。
委   員: ブローホール以外の溶接欠陥はなかったのか。
委   員: ブローホール以外の溶接欠陥がないと言えればいい。
事務局: 他の溶接欠陥はない。
委   員: R27の破断を構造解析で定量的に行うこと。
事務局: 破断面を走査顕微鏡写真で撮れば、判定ができる。
その後、他のやりとりがあり、
事務局: 次回は12月21日、最後の委員会は1月16日(金)でお願いします。

と、鉄骨問題を棚上げして、事務局(調査班、すなわち原告・新潟県)は調査の終焉を命令している。
この後の記者会見記録の中に次ぎの発言が記録されている。
記 者 質 問: SDGは、上弦材の溶接不良が原因といっているが。
丸山委員長: 溶接面で破壊していません。溶接が悪くて破断した状況ではありません。

鉄骨溶接部にとって最も重要な、破断面の走査顕微鏡写真の撮影による分析を行う前に、丸山委員長は結論を出していたのである。

(13) 日鐵テクノリサーチによる走査顕微鏡写真は、平成16年1月19日の調査委員会が知事に提出した本報告書の添付資料に掲載された。この添付資料P57以降に「上弦材破断部の破面調査解析」として(株)日鐵テクノリサーチが平成16年1月10日付けで提出したものである。

被告SDGは、このときにはじめてこの顕微鏡写真を見て、あまりにも極端な溶接欠陥写真であり、これをどう読むべきか、この写真から何を読みとるべきかを考えたが、わからないことが多過ぎる。
それで調査した本人に聞けば多くの技術的真実を教えてくれるのではないかと思い、表紙にあった(株)日鐵テクノリサーチに解読説明を平成16 年1月20日にお願いした。

しかし、日鐵テクノリサーチからは、(新潟県に問い合わせたところ)本件の依頼者以外にお答えする立場にない、としてSDGに説明できないという回答(乙D第32号証)しか得られなかった。

時間的に考えて、調査委員会もこの日鐵テクノリサーチの走査顕微鏡写真を見ていないと考えられる。

調査委員会がこれを十分に分析したのであれば、その結果の釈明を求める。(求釈明その29)

これらの既に撮影された走査顕微鏡写真を見ただけでは、その内容を理解することができず、高度な専門家に直接、顕微鏡で見てもらい、そのものを観察してもらう必要がある。したがって、別途、これについても「検証申出書」を提出する。

(14) 被告SDGは、事故直後から落下原因の究明に取り組み、さまざまな崩壊シミュレーション解析を経て、R27上弦材鉄骨の破断が事故の起点であることを発見した。これを新潟県内報道機関が「上弦材鉄骨破断説」と名付けた。

被告SDGの解析は、設計や施工のさまざまなプロセスを考慮の枠外において、純粋に、事故現場で観察できるロッド定着部や鉄骨の破断している箇所のすべてについて落下起点であると仮定して、最初にその位置で破断が生ずればその次には力学的にどこが破断するかという構造解析的追跡調査をしたのである。
そうするとある起点を想定すると次々に部材の破断が解析上明白になり、最後に崩落する形を計算することができる。その形が崩落現象の形と一致したものが、崩落起点として特定できるというもので「崩落設計」と名付けた(乙D第49号証)

このシミュレーションで到達した崩落起点は、R27上弦材鉄骨である、という結論であった。この検証のポイントは以下の4項目である。

現場の状況を検証すると、第一に、実際の鉄骨破断は現場溶接した位置であり、当時の冬場の工事時期の気象記録から考えても溶接欠陥の可能性があり鉄骨耐力は大幅に低下していたこと。

第二に、鉄骨工事における発注から建て方に至るまでの期間があまりにも少なく、鋼材の材質が検査証明書と一致したものであったかの疑問が残ること。

第三に、平成12年度工事が完了したときこの部分は補強鉄骨フレームが取り付けられており、平成14年度増設工事が完了するまで完全に保護されていた部分であり溶接欠陥の発見が困難であったこと。

そして第四に、平成14年度工事が完了したのが、昼と夜の気温差が最も少ない、冬季であり、その後、平成15年の春を経過して事故発生の夏を迎えたこと。つまり、新潟においては、夏期は昼と夜の気温差がもっとも大きくなり、鉄骨部材は約10℃の温度差で約10tfの伸縮となる。このときR27に存在していた引張力は約30tfで、7月と8月の毎日、鉄骨にとっては30%近い伸縮を起こしていた。昼間は鉄骨は縮むことになり夜間に気温の低下とともに引張力が付加される。溶接欠陥が存在すればこの引張力の繰り返しの付加で破断に至る。
そうであれば、事故が平成15年8月26日午後8時20分に起こった事実を説明できる。完成した連絡デッキが最初に経験した夏場の夜間、気温が低下する直後だからである。

しかし、この結論も一つの「仮説」でしかない。この「仮説」が真因であることを証明するためには、解析内容のすべてを検証・実証する必要がある。
その意味で、この落下原因を特定するためには「鉄骨部材」の試験が必要不可欠である。落下デッキの「鉄骨部材」は原告・新潟県が保有しており、さらに残存デッキから切り出した「鉄骨部材」も県の保管倉庫に移設してしまった。
県は、SDGの鉄骨検証の実験計画を拒否してきた。残存デッキからの鉄骨部材切り出し費用を、SDGに負担させていたにも関わらず、である。
そして、原告・新潟県は、あくまでもその試験の必要性を認めていない。これでは真因の究明ができないので、被告SDGは、別途「検証申出書」を提出するのである。

原告・新潟県が鉄骨に関する調査を拒否してきた証拠が、以下の書簡のやりとりである。

平成15年12月10日 SDGから調査班森川班長にあてた「鉄骨部材についてのお願い書」(乙D第30号証)および「県保管部材の破棄禁止要望書」(乙D第31号証)
平成16年3月25日 SDGから平山知事にあてた要望書「解体撤去の前の実物試験について」i
平成16年5月10日 SDGから森川局長にあてた「残存デッキの取り扱いについての要望書」(乙D第10号証)
平成16年5月25日 SDGから森川局長に提出した「残存デッキおよび落下デッキを用いた試験計画書」(乙D第34号証)
平成16年5月27日 SDGから県・野水参事にあてた「鉄骨保管ピースの受け渡しメモ」(乙D第35号証)
平成16年6月14日 SDGから野水参事に宛てた「部材切り取り計画書」(乙D第39号証)
平成16年6月15日 SDGから野水参事に宛てた「破断面調査の貸し出しのお願い」(乙D第40号証)
平成16年7月6日 森川局長から「鉄骨部材の貸し出しの拒否回答」(乙D第41号証)
平成16年7月8日 SDGから森川局長にあてた「鉄骨部材の貸し出しの再度のお願い」(乙D第12号証)
平成16年9月1日 SDGから森川局長にあてた「鉄骨部材の貸し出しのお願い」(乙D第13号証)
平成16年9月6日 上記お願いに対して森川局長から「鉄骨部材の貸し出しの拒否回答」(乙D第43号証)
平成16年9月15日 SDGから森川局長にあてた「鉄骨部材の貸し出しの再度のお願い」(乙D第14号証)
平成16年10月1日 上記お願いに対して森川局長から「鉄骨部材貸し出し依頼の拒否回答」(乙D第44号証)
平成16年10月12日 SDGから森川局長に「再度のお願い」(乙D第46号証)
平成16年10月28日 上記について森川局長から「10月12付けSDGのお願いの拒否回答」(乙D第48号証)

参考のために被告SDGが行った、R27上弦材鉄骨破断が起点のときの崩壊型を次ページ図Pに掲載した。崩壊過程での現象との一致、最後の姿が崩落現場と同一であることが証明されている。

(15) この訴訟において、原告・新潟県は「ロッド定着部破断説」を採用した。しかし、これまでの本準備書面で明らかなように定着部の破壊が起点であるという論拠の全てが誤っており、残るのは「上弦材鉄骨破断説」しかない。
このことは、いま、わかったことではなく被告SDGはすでに平成15年11月には解析上判明していたことである。

一方、前述したように、当時の鉄骨工事における溶接施工に疑義があり、その事実に立脚すれば、原告・新潟県が共同不法行為の被告として鉄骨工事会社を含めて居ないのは不合理である。
このため、やむを得ず被告SDGは、本件鉄骨工事、溶接工事を行った大川トランスティル株式会社を「訴訟告知」したのである。これは平成16年11月17日、新潟県地方裁判所第1部民事部に提出済みである。

図P R27上弦材鉄骨破断が起点となった崩壊プロセス図
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  @R27入江側上弦材鉄骨が破断、音と振動が発生するが架構は安定している。1時間後に、AR27信濃川側上弦材鉄骨の破断。BからGまで応力分布の移動によりロッド定着部が破壊、HでPC床版目地部が切断される。この状態で大変形を起こし、PC床版は全体的に朱鷺メッセ側に引き寄せられ、佐渡汽船側V柱頂部で曲げ破壊する。Kで入江側R26定着部が破壊するが、すでに大変形を起こしているのでロッドは下方に大きく曲げられる。崩壊の最後の姿は、現場で観察された全ての現象と一致している。

 
第5 調査結果報告書(甲第1号証)の5項のうち、「第1回ジャッキダウン時の損傷評価」について
 
(1) 報告書P59に5.2検証方法とあり、P66に(3)解析ケースの項がある。
ここで本連絡デッキの施工段階に合わせた過程解析(ステップ解析)を行うときの、間隔を定めている。平成12年度工事開始段階をステップ0とし、順次、施工を進め、平成14年度工事が完了した段階をステップ12としている。全部で13の施工段階を経て、この連絡デッキが完成したことを示している。
こういった施工段階に合わせたステップ解析は事故原因を調べる上でも重要な検討であるが、その解析モデルの設定に疑義がある。

報告書P61に「暫定系モデル」と「完成系モデル」とを定義した図が掲載されているが、P66の記述と整合していない。すなわち、P66ではステップ1〜ステップ2で「暫定系モデル」を用いて解析し、ステップ3〜ステップ12は「完成系モデル」を用いるとしている。
しかし、これは事実に反して「暫定系モデル」を使用しなければならないのはステップ1〜ステップ8までであり、ステップ9〜ステップ12までが「完成系モデル」である。

ステップ3〜ステップ8までの重要な段階が間違えた解析モデルを使用していたことになり、釈明を求める。(求釈明その30)
報告書P67の図は、「暫定系モデル」を示しておらず、実際にどのようなモデルで解析したのかの釈明を求める。(求釈明その31)

(2) 上記のような初歩的なミスは、解析に責任をもった者が調査に参加していないからである。
第1回ジャッキダウン時解析は、落下原因究明にとって重要な作業であるが、この解析を調査委員会自身が行っていない。
平成15年9月6日の第2回調査委員会後の、記者会見で丸山委員長自身が言明している。(乙D第18号証)

委員長記者会見要旨から
記 者 質 問: 解析は委員が行うのか。
丸山委員長: 専門家にわれわれが指示して進めようと思う。

実際のシミュレーション解析は、調査班(すなわち原告・新潟県)の業務委託で、丸山委員長発言の専門家として(株)長大が行った。事実、第3回調査委員会以降は、この原因究明のための委員会会議に最終回まで、(株)長大の社員が出席している。
本訴状のP121の明細表4-1に解析調査委託として1480万5千円が、(株)長大に支払われたことが明記されている。
(株)長大は、民間営利会社であり、仕事の依頼主(ここでは調査班)の意向に添うのは当然である。特に「解析」という作業は、「何について何のために行うのか」の設定なしにはスタートできない。その対象と目的設定を委託主(調査班および調査委員会)が行い、(株)長大は、ただ、数学的に解析作業を行うだけで、その解析結果は都合良く委託主に利用されてしまう。これでは真因を探るシミュレーション解析は不可能である。

こういった工学的常識を原告・新潟県は知らなかったのか否か、の釈明を求める。(求釈明その32)
高度な解析技術をもつ第三者性を維持した公的機関あるいは全国の大学研究室がありながら、この解析を、(株)長大に委託した原告・新潟県の法的根拠の釈明を求める。(求釈明その33)
(株)長大は落下事故現場そのものの調査に参画したのかの釈明を求める。(求釈明その34)
(株)長大に支払った解析調査委託費の法的算出根拠を明らかにするべきである。(求釈明その35)
(株)長大の委託成果品が適正であったかどうかの評価について釈明を求める。(求釈明その36)


(3) 報告書P89の表5.3.1は表記の通り第1回ジャッキダウン時のPC床版の変位(たわみ)量である。この表の直上に、「ジャッキダウン前(H13.3.4)の状態からジャッキアップ後(H13.3.7)までの変位量は表5.3.1に示す通りである。」と記述されている。
ジャッキダウン前は(H13.3.3)であり、ジャッキアップ後は(H13.3.21)が事実である。したがって、第1回ジャッキダウン失敗後の放置期間は、同じ行の15日間ではなく17日間である。

報告書では、故意に日付をずらしたのかの釈明を求める。(求釈明その37)

後段で「・・・正確な最大変位量は確認できない。」としている。この表5.3.1の変位量をキチンと定義しないと、これ以降の第1回ジャッキダウン時に何が起きたかの分析ができない。
この表5.3.1の変位量は第1回ジャッキダウンを行っていた過程で、第一建設が記録したPC床版下端の変位測量値である。
この測量後もジャッキダウンは継続していたが、寸法的には小さなものであるから、一応、この表の数値がジャッキダウン時の変形量と設定したのである。
しかし、17日間放置されて、その後、ジャッキアップするときに測量していないから、この17日間でどこまで変形が進んだかの記録がない。

(4) 報告書P89の最下段で、「・・・シミュレーションは@支保工無しのモデル、A支保工を考慮したモデルを用いて実施する。」とあるが、「支保工無し」とはジャッキダウンを行って、すべての力が解放された場合であり、「支保工を考慮した」とは上述の表5.3.1の記録された変形の値を、架構に強制変形として与えたものを指している。
実際には、R23とR24の支保工はジャッキダウン後も荷重を受けていたから、「@支保工無しのモデル」の解析は何ら意味をなさない。
だから、報告書P90での結論、「実際の第1回ジャッキダウン後の状態は、支保工無しのモデルと支保工を考慮したモデルの中間に存在すると推定される。」は全くの誤りである。ここでの推定を行うとしたら、表5.3.1が最終的に維持された変形量であると仮定すると、Aの応力が部材各部に発生する、という記述が正しい。

(5) 上記のように解析モデルが錯綜しているから、その解析結果を示す報告書P90とP91の記述は、なんら論理的合理性を伴わず、解読不能である。
ここでは、第1回ジャッキダウン時における部材の損傷評価には一切、触れていない。

解読できるよう記述を改めるべきである。(求釈明その38)

(6) 本来、この項ではこの事故のより本質的な問題について論ずるべきである。
この報告書本項では、故意に触れていないが、第1回ジャッキダウンが行われた平成13年3月4日の直前の2月28日の現場会議で、ジャッキダウンを行うのであればR26の支保工は外さずに翌平成14年度工事が終了するまで残すべきだ、という強い意見が出た。
その意見を原告・新潟県に伝えたところ県当局は拒否して、結果として第1回ジャッキダウンが強行された。

損傷程度を解析的に分析するためには、報告書のこの欄では、R26に支保工を残してジャッキダウンした場合と、現実に残さないでジャッキダウンした場合の構造工学的差異を明らかにするべきである。(求釈明その39)

(7) 報告書P112の表5.4.2は、第1回ジャッキダウン時の(株)長大が解析した斜材ロッドの引張力を示しており、表5.4.3は同じ意味のものであるがSDGが算出し、調査班に平成15年9月14日に提出したものである
この両者は、前出の表5.3.1の第1回ジャッキダウン時に記録された変位量を、強制変位として架構に加えたときのロッドの引張力ということは共通だが、解析結果の数値に大きな差が見られる。この差の原因はいまだに、議論されていない。
表5.4.2および表5.4.3を再録したものが以下の表である。

表5.4.2 第1回ジャッキダウン時の斜材ロッドの引張力
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表5.4.3 第1回ジャッキダウン時の斜材ロッドの引張力
(SDGの解析より 参考)
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  しかし、表5.4.3は、SDGが第1回ジャッキダウン時に定着部に損傷を起こしたかどうかを、調べるために計算したもので、定着部のひび割れ耐力は80tf〜90tfとSDGでは設定していたので、どこの定着部にもひび割れ損傷は生じていなかった、ことを証明するための解析結果であった。

一方の表5.4.2は、(株)長大が計算したものであるが、この表にもとづき調査委員会は、R20とR21にひび割れが発生したとしている。第一建設の実大実験結果では40tf程度でひび割れが入るとしているので、そのような見解が誘導されるのである。しかし、調査委員会が設定した定着部耐力(報告書P110)、ひび割れ耐力40tf、破壊耐力65tfが正しいとしても、数値上、まったく辻褄が合わない。それを以下に証明する。
表5.4.2で、ひび割れ耐力40tfを超過しているのは、表に黄色くマークした箇所である。
完成した連絡デッキの状態で、この定着部に発生していたロッド引張力は、報告書P111の下表、表5.4.1(報告書P119上段で表5.4.4として同表が再記載されている)である。

表5.4.1 斜材ロッドの引張力
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  この表と先ほどの表5.4.2とを見比べると、第一回ジャッキダウン時より完成した後の方が、引張力が増大しているのは、上表、表5.4.1で黄色くマークした位置である。すなわち、R21のロッド定着部およびR20信濃川側の3か所だけが引張力の増加がない。それにも関わらず調査委員会は、R21が崩壊の起点であるとしているのである。万が一、第1回ジャッキダウン時の損傷がR21に発生していたとしても、表5.4.1の数値はR21が崩壊起点でないことを表している。
さらに、調査委員会の設定にあるクリープ破壊が、静的引張力の80%程度で起こるとすると、65tfx0.8=52tfであり、その該当個所はR27入江側しかない。
すなわち、調査委員会は二つのミスを犯したのである。一つは第一建設の実験結果のひび割れ耐力の数値を採用したことであり、二つ目はその数値を採用するのであればR27入江側が崩壊起点の可能性として最も高い、という判断をしていないことである。
被告SDGの解析上の分析では、第1回ジャッキダウン時にひび割れ耐力を上回った箇所はないから、定着部には損傷は起こらなかったと結論した。解析上、PC床版や鉄骨材に損傷を与えていたことは証明できるし、その事実の記録もあるが、定着部に損傷が発生したという記録はどこにもない。

(8) 報告書P112の中段に、「なお1回目のジャッキダウン時において、@朱鷺メッセ側の斜材ロッドはそのナットが緩んでおり斜材ロッドには引張力が作用していなかった、・・・がPC工事下請業者から報告されている。」の記述がある。

ここでのPC工事下請業者とは、黒沢建設(株)を指しているのかの釈明を求める。(求釈明その40)
第一建設との関係、県との契約関係から、このようなPC工事下請業者と呼称をするのであれば、本報告書の全編にわたりSDGとあるのは削除し、「SDG」は「福地事務所の構造設計に関する協力事務所」と書き換えるべきである。なぜなら、SDGは県との一切の契約関係にないからである。(求釈明その41)

被告SDGも第1回ジャッキダウン直後に、黒沢建設から上記の報告を受け取っていた。しかし、「ナットに緩みがあり」支保工が全部はずれていれば、その時点でこの部分の連絡デッキは崩壊してしまう。R23およびR24の支保工のみが働いており、その他の支保工が無い場合には上弦材鉄骨が破断してしまう。
だから、この報告から解釈できる唯一の現象は、全支保工は第1回ジャッキダウン後もそのまま存在していた、しかし、ナットは緩んでいたから定着部には力が働いていなかった、ということである。すなわち、黒沢建設の報告は、第1回ジャッキダウン時に定着部には損傷は生じていないことの傍証となるのである。

報告書では、こういった分析を行っておらず、黒沢建設の報告をただ単に書き放しである。

改めて、この報告をどのように解釈したかの釈明を求める。(求釈明その42)

(9) 報告書P112の上記の記述に引き続き、「また同じ報告にある・・・鉛直変形を見ると・・・小さく、斜材ロッドに生じた引張力が、設計で想定した力より大きかった可能性がある。」としている。
再び、中学校の物理の教科書を参照してほしい。正しくは、「変形が、同じ報告の通りであれば、前提としていた表5.3.1より小さいので、そこに発生していた引張力は、表5.4.2の解析値より小さいことがわかる。」である。

このような記述の逆転の意図を原告・新潟県は説明する必要がある。(求釈明その43)

そして、「以上のことから、R20およびR21の作用した力は、弾性解析で得られた作用力よりも大きかったと推定される。」としており、この記述は表5.4.2との関係で書いており、この表の数値ではR20とR21に決定的な損傷があったことを証明できないので、この数値を割り増して考えると損傷があったはずだとしているのである。

工学的な現象を解説するときに「結論」を先に出した場合に、こういった自己矛盾に陥るのである。
調査班と調査委員会は、落下原因を最初に決めてしまったから、自然の摂理に反するこういった論理しか組み立てられないのである。

(10) 以上で、第1回ジャッキダウン時に定着部には損傷が発生していなかったことを論証した。そもそも、損傷があったことを調査委員会は証明していない。
したがって、本訴訟の根幹をなす3項目(訴状P12)のうち、B第1回目の安易なジャッキダウン、すなわち、そのときの損傷が破壊を早めた、の項目がまったくの虚構であることを、被告SDGは主張、立証するものである。

 
第6 調査結果報告書(甲第1号証)の5項のうち、「崩壊シミュレーション解析結果の妥当性評価」について
 
(1) 報告書P114に目撃証言が記載されているが、これは多くの証言のうちの一部でしかない。実際の目撃証言は、調査委員会が発行した「朱鷺メッセ連絡デッキ事故調査報告・参考資料」の中の目撃証言記録(調査者と調査日は不明)と、福地事務所の調査記録があり、この両者を併記したものが次ページの表Qである。(乙D第27号証)

(2) 報告書P114の上段に、「・・・「ミシミシ」は縦揺れにより、天井材から発生した音と考えられる。」と勝手に推定しているが、実際の記録からは上記の表現は読みとれない。それを同記述の直下に書いている。
A「ミシミシ」という音が天井から伝わってくる感じ。
B強い縦揺れだった。
この二つの証言と報告書の上記の表現とはまったく異なるものである。別々な二つの証言を上記のように繋げてしまい「天井材から発生した」としたのは、この項の後で行っている崩壊シミュレーションの結果を正当化するための伏線として記述しているからである。

表Q 目撃証言
4_602.gif

(3) 報告書P114の中段に、「F佐渡汽船側から落下し、手前に迫ってくる感じだった。」のR27付近にいた男性の証言とともに、R10付近にいた男性証言「音的には、自分に迫ってくる感じ、佐渡汽船側に走って逃げた。」を併記し、考察の対象とすべきである。

何故、後者の証言を取り上げないのかの釈明を求める。(求釈明その44)

同ページの後段で、「これらの目撃証言から以下のことが推定できる。・・・  A崩落は佐渡汽船側から始まり、朱鷺メッセ側に連続して落下した。」と結論にしている。
これでは後者の証言は、採用できない嘘の証言だった、ということである。

目撃証言の再調査を求める。(求釈明その45)

(4) 報告書P114の最後段からP115上段に、「・・・落下後、PC床版はすべて朱鷺メッセ側に移動している。このことは、・・・佐渡汽船側から落下が始まり、朱鷺メッセ側へ順に落下していった・・・」の記述がある。
このことは「移動している」ことが落下の結果ではなく原因であると誤解しているのである。朱鷺メッセ側に移動するためには、こことこことが破断しなければそうならない、だからそこから落下が始まり・・・と結論付けてしまえば、当然、朱鷺メッセ側に移動することになる。
そうではなく、崩壊シミュレーションを行ったら、最初の崩壊はここであったという解析上の結論を最初に導き出し、それであれば朱鷺メッセ側に移動したことも説明できる、としなければならない。

ここでも、調査委員会は結論を最初に出しておいて、その辻褄合わせの分析しかしていないことを証明できる一例である。

(5) それに引き続いた記述で、「また、・・・破断するためには、・・・の斜材ロッドが外れる必要がある・・・」としているが、そのことと落下起点とはまったく関係ない。にも関わらず、調査委員会でこれを記述しているのは、あたかもR21の定着部の破断が、落下の起点であると錯覚させるためにここに記述したのである。

(6) 報告書P116に座金の変形状態についての記述がある。
調査委員会は、定着部アンカープレートのことを、わざわざ「座金」という用語を使用している。一般的には「座金」はアンカープレートとナットとの間に挟まれるワッシャーを意味する。だから調査委員会は、アンカープレートが他に存在していたと認識していたようである。

調査委員会は鋼材部品を、一般的な呼称と変えた理由の説明を求める。(求釈明その46)

この項で、「しかし、R21の入江側の座金だけが、ほとんど変形していない。・・・実破壊耐力が低下して破壊した・・・」としている。
しかし、座金が変形していないのは、小さなロッド張力でも、何かの原因で他の応力が発生すれば、定着部は破壊してしまうので、ここが最初に破壊したのではない証拠である。

ここでの分析も逆転現象を起こしているので、「この破壊が崩落の起点となった可能性が高い。」と逆の結論になってしまうのである。

しかし、このような稚拙な逆転説明は工学的にあり得ないので、やはり、調査委員会は調査の最初からR21入江側定着部が崩落起点と決めていたから、こういった記述しかできないのである。

(7) 上記のことは、調査委員会議事録要旨からも読み取ることができる。

平成15年9月21日の第4回調査委員会。(乙D第20号証)
丸山委員長: 崩壊ストーリーについて各委員の意見を聞きたい。
委         員: シナリオとして3つ考えたが、目撃証言から、入江側のR20からR21の斜材が抜けた場合に絞った。
委         員: 崩壊シナリオは、R20から21の斜材が最初に抜けることが一番考えられる。

まだ、調査が何も進んでいないときの発言である。調査期間が短いと、工学的な調査は後回しにして、このような直感に頼る原因究明も起こってしまうのである。

直感にもとづく原因解明で、それを実証することなく、善意の関係者を提訴できるのだろうか。(求釈明その47)

(8) 報告書P118からP124まで崩壊過程として崩壊シミュレーション解析が記載されている。

ここでのほぼ全項目について、被告SDGは、調査委員会の記述とシミュレーションを行った(株)長大の報告書と一致していない数点を既に発見しているため、その記述の間違いを指摘できるが、敢て省略することとする。

むしろ原告・新潟県の責任ある再検証を求める。(求釈明その48)

(9) 被告SDGは、調査委員会のシミュレーション解析の結果が正しいと仮定して、その崩壊過程を作図した。
その結果、R21入江側定着部が最初に破壊し、その次にどこそこが破壊するという調査委員会の崩壊プロセスを追っていくと、最後の崩壊形は現象とはまったく合致しないことが判明した。

その最も顕著な点が、調査委員会の論理では、上弦材鉄骨の破断がR27で起こるのではなく、R19側で破断しなければならなくなることである。

被告SDGが作成した、調査委員会の崩落過程を次ページ図Rに掲載した。

(10) 以上の証明で、調査委員会の崩壊シミュレーション解析の結果が、まったく妥当性に欠けることを、被告SDGは主張する。

図R 調査報告書の崩壊プロセスを図化
4_610.gif

  報告書記述にある通り、@入江側R21の定着部が最初の破断だとし、A〜Cまで定着部の破壊が進み、DでPC床版が目地部で破断したとしている。
この状態で、PC床版は朱鷺メッセ側に引き寄せられるが、同時に、R19上弦鉄骨に大きな負荷が生じEでここが破断する。同時にFからHへと朱鷺メッセ側の破断が生ずるが、R27上弦材鉄骨が降伏変形するのは最後の段階である。
解析による最終形は、落下現場で観察された姿と合致しない。

 
第7 真の落下原因の究明を目指して
 
(1) 落下原因に調査委員会の「ロッド定着部破断説」と、被告SDGの「上弦材鉄骨破断説」があることを、これまでに明らかにしてきた。

これらは「仮説」として有力なものである。しかし、本準備書面で何度も記してきたように、「仮説」を検証し実証しなければ、真の原因とは言えない。

その検証、実証のための試験(真相究明のための)を以下のフローを、被告SDGは考えてきた。

図S 原因究明のための検証フロー
4_702.gif

(2) 上図で黄色くマークしている部分は、既に完了した試験である。
そして、この試験によって調査委員会の「ロッド定着部破断説」は成立しないことを実証した。


(3) そして、黄色でない白い部分は、その試験がまだ行われていない。
したがって、「上弦材鉄骨破断説」は完全に実証されていないのである。
被告SDGは、この空白の部分の試験実施が落下原因を特定する上で必要不可欠なので、その試験の早期実施を主張するものである。



 
求釈明

本準備書面(2)中に赤字で記載の、(求釈明その1)から(求釈明その48)までの48項目について、原告・新潟県の迅速で誠意ある釈明を求める。



添付証拠

乙D第1〜14号証は平成16年11月19日の被告SDG答弁書に添付してあり、乙D第15、16号証は平成17年1月27日の被告SDGの準備書面(1)で添付した。以下は今回、準備書面(2)で添付する証拠である。

乙D第17号証平成15年9月1日第1回委員会要旨および記者会見要旨
乙D第18号証平成15年9月6日第2回委員会要旨および記者会見要旨
乙D第19号証平成15年9月13日第3回委員会要旨および記者会見要旨
乙D第20号証平成15年9月21日第4回委員会要旨および記者会見要旨
乙D第21号証平成15年10月5日第5回委員会要旨および記者会見要旨
乙D第22号証平成15年10月25日第6回委員会要旨および記者会見要旨
乙D第23号証平成15年11月9日第7回委員会要旨および記者会見要旨
乙D第24号証平成15年11月23日第8回委員会要旨および記者会見要旨
乙D第25号証平成15年12月21日第9回委員会要旨および記者会見要旨
乙D第26号証平成16年1月16日第10回委員会要旨および記者会見要旨
乙D第27号証平成15年8月28日福地事務所の聞き取り調査および参考資料
乙D第28号証平成13年3月使用鋼材証明書
乙D第29号証平成15年11月25日
乙D第30号証平成15年12月10日鉄骨破断面の観察のお願い書
乙D第31号証平成15年12月10日鉄骨破断面を破棄しないようお願い書
乙D第32号証平成16年1月21日日鐵テクノリサーチからの協力拒否
乙D第32号証平成16年4月13日森川局長から残存デッキを用いた現地試験の拒否回答書
乙D第34号証平成16年5月25日残存デッキを用いたロッド定着部の試験実施について
乙D第35号証平成16年5月27日鉄骨破断ピースおよび部材の引き渡し要望書
乙D第36号証平成16年6月7日残存デッキおよび落下デッキを用いた試験に係わる協定書
乙D第37号証平成16年6月8日SDGの「残存デッキおよび落下デッキを用いた試験計画書」
乙D第38号証平成16年6月9日新潟県ホームページに掲載された「現地試験の試験計画内容について」
乙D第39号証平成16年6月14日実験室試験用部材切り取り計画書
乙D第40号証平成16年6月15日上弦材破断面の貸し出しのお願い書
乙D第41号証平成16年7月6日森川局長から貸し出しの拒否回答書
乙D第42号証平成16年8月10日残存デッキを用いたロッド定着部の実験室試験計画書
乙D第43号証平成16年9月6日鉄骨部材貸し出しの拒否回答書
乙D第44号証平成16年10月1日鉄骨部材の貸し出しの再拒否回答書
乙D第45号証平成16年10月12日試験負担金額の疑義について
乙D第46号証平成16年10月12日鉄骨部材の貸し出しの再度のお願い書
乙D第47号証平成16年10月28日試験負担金額の疑義について回答拒否
乙D第48号証平成16年10月28日鉄骨部材の貸し出しの再々拒否回答
乙D第49号証平成16年10月SDGの崩壊設計解析概要



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Updated October 14, 2005