SDG

朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故の真相解明に挑む


第10章
鉄骨の「検証申出」に対する原告新潟県の「検証を拒否」に反論

     第9章の「検証申出書」を裁判所に提出したのが平成17年(2005年)6月9日であった。この申出に対して、原告新潟県が「検証の必要性なし」との回答を裁判所に書面で提出したのが、9月1日である。こんな簡単なやりとりに約3ヶ月の日時を費やしている。SDGが「検証申出書」を提出した翌日にでも「検証拒否」をするなら、新潟県の断固たる姿勢を評価できる。しかし、いまの急速に変化する時代の中で、もう忘れたころの3ヶ月後になってようやく「検証拒否」をするセンスを理解できない。
これが裁判というものだというのであれば、そういうものだと諦めるのではなく、このような裁判の進め方そのものを問い直すべきである。
この間延びした新潟県の「検証の必要性なし」に対して、検証にはこの事故に関して必然性があることを、再度、申し上げたのが、平成17年10月8日にSDGが裁判所に提出した、「準備書面(6)」である。



以下、SDGの「準備書面(6)」

原告新潟県は、平成17年9月1日付原告新潟県の準備書面7において、被告SDGが平成17年6月6日に提出した「検証申出書」に対し、その申出を却下すべきとしている。
被告SDGは、原告の却下要請理由が不適切なものであり、技術工学上、全く論外な主張であって、その主張自体が、本件落下事故の真の原因解明を疎外するものであることを明らかにし、むしろ、鉄骨の検証が必要不可欠であることを主張し、立証する。
原告は、以下のSDGの主張、立証を真摯に受け止め、二度とこのような不当、無意味な主張を、繰り返さないよう自覚すべきである。

以下に、平成17年9月1日付原告新潟県の準備書面7の記述項目に添って、主張、立証を行う。



第1 「検証の必要性の不存在について」の項目について

「R27上弦材鉄骨破断説の不成立」について

原告は、「R27上弦材の破断部分では、上下フランジが平均して水平より下方に8°の角度で曲がっていることから、・・・崩壊により下方へ傾いた後に鉄骨が破断したとの主張である。」としている。
それに対して、被告SDGは、平成17年3月25日付準備書面(2)のP25で「下方に曲っているのは常時、発生している曲げモーメントによるものである可能性の方が高い。あるいは、後述するが、第1回ジャッキダウン時に角度が付いた可能性も高い。」と、可能性についてしか論じていない。
なぜなら、どこに何度の角度が実際に付いているか、実際に調査しない限り判明しないからである。

R27上弦材の破断部分でどれだけ角度が付いていたか、いまだに、不明であることを原告自身が自認している事実を以下に述べる。

(1) 調査報告書(甲第1号証)のP54、図4.2.15にこの部分のフランジの曲がった角度についての図が掲載されている。
信濃川側上フランジ約7°、下フランジ約3°、入江側上フランジ約10°、下フラン約11°と表記されている。
しかし、この数字がどのように調査されたかの記録は、添付資料や参考資料を含めてどこにも無い。
当時、地上約10mの上空にあったこれらのフランジ角度を正確に測定できない。
(2) 同じ調査報告書のP84の上段では、「上弦材の破断状態である延性破壊および下方約8°の状況を説明できない。」とフランジの傾きを約8°としている。
(3) 上項の直ぐ下の記述では、「上弦材R26-27の変形が下方7°でR27上弦材において破断したと仮定したとき」として計算を行っている。
(4) 添付資料P6に実際に調査したとしている(株)日鐵テクノリサーチの記述では、「R27の破断部は入江側、信濃川とも、門型フレームに残存するフランジが10度程度下方向に変形し傾斜している。」としているが、その調査方法、調査記録は掲載されていない。

このように一つの調査報告書の角度表記は、3°から11°まで実に様々な数値を列記している。これは、角度に関する厳密な調査が行われておらず、どれだけ角度が付いていたか、不明であることを原告自身が自認している証拠である。

このような状況では、科学的に上弦材鉄骨の破断原因を特定することは、フランジの傾きに着眼する限り不可能である。
訴状第4・4(2)ア(エ)aAの記載は、もっと乱暴である。「上下フランジが平均して水平より下方に8°の角度で曲がっている・・・」。
入江側と信濃川側、そして上下フランジの位置関係を全て無視して、平均してしまったら現象を正確に分析することは不可能である。

これらの論証は、実物を正確に測定すれば、今、すぐにでもできることである。実物は、新潟県の保管倉庫にあるのだから、それを測定すれば明らかになることで、SDGは鉄骨検証申出を行っているのである。
原告新潟県の釈明を求める。(求釈明その1)

 
「被告SDGの主張が検証の必要性を自ら否定している」について

自然現象を科学的に分析するときに、数学、物理学、力学にもとづく分析と、化学、材料学にもとづく検証とが表裏一体の関係にある。
科学技術における真実を探求するときの定石である。

SDGの崩壊シミュレーション解析で、落下起点をR27上弦材鉄骨と特定できたが、それはコンピュータ内の「仮説」ともいうべき論証であり、それを材料学的に「実証」できたとき「真実」といえるのであり、そのためにSDGは鉄骨検証申出を行っているのである。
このような科学技術における試行錯誤を否定することは、新潟県の青少年の科学教育の上でもあってはならないことである。

事故原因の真摯な究明の努力を否定する理由の釈明を求める。(求釈明その2)

 
「被告SDGの検証申出事項は検証の必要性がない」について

(1) 「鋼材材質検査について」

原告は、「鉄骨上弦材の材質に関し、甲第1号証86頁にある被告第一建設より提出された鋼材検査証明書に記載の数値をもって主張しており」とある。原告新潟県は、落下した鋼材の材質を実際に検査していないことを堂々と述べているのである。鋼材検査証明書と同一の鋼材か、を調べていないのである。
これは、原因調査におけるもっとも初歩的な事項である。
「鉄骨上弦材が崩壊の起点となり得ないから調べない」は全く工学的論理ではなく、「調べた結果、起点とはなり得ない」が当然の工学的姿勢である。
原告の保管倉庫にある鋼材を検査証明書と同一物かを調べるのは、きわめて容易なことであり、費用も時間も僅かしか、かからない。
それを拒否するのは、原告はすでに秘密裏に調査したところ検査証明書とは違った材質だったことを知っている、故に検証を拒否しているのだ、と解釈されるのが自然であり、専門家であれば当然その様に判断するであろう。
被告SDGは、原告新潟県がそれほど悪質な公共団体とは考えないから、この初歩的検証を提案しているのである。
基本的かつ好意的な提案を拒否する理由の釈明を求める。(求釈明その3)

(2) 「破断面の拡大顕微鏡による溶接欠陥の性状分析」について

原告は、「鉄骨上弦材破断面の性状に関し、甲第1号証添付資料No.3、4の鉄骨破断部報告書の内容を妥当と考え甲号証として提出しており、新たな分析の必要性はないと考える。」としている。
この添付資料のNo.3は平成15年9月11日の長岡技術科学大学の武藤睦治教授の事故直後に行われた目視検査であり、No.4は(株)日鐵テクノリサーチの平成15年12月18日の目視調査報告書である。いずれも目視である。
原告の主張によれば、添付資料にあるNo.5、6の内容を調査委員会は見ていないことになる。

添付資料No.5は、上弦材破断部の変形調査解析であり、P8からP56に亘る膨大な詳細変形調査記録である。
何のために調査したのかの釈明を求める。(求釈明その4)

添付資料No.6が、上弦材破断部の破面調査解析である。P57からP93の37ページの破面マクロ写真撮影と観察および走査型電子顕微鏡によるミクロ写真撮影と観察結果がまとめられている。ここでは異様な溶接欠陥が明らかにされている。
No.6の調査結果を(株)日鐵テクノリサーチが新潟県に提出したのが、平成16年1月10日であるから、調査結果報告書を新潟県知事に提出した平成16年1月19日に、破面マクロ写真の観察結果を反映した報告書にはできなかったのである。
すなわち、これを調査委員会は見ていないから、鉄骨耐力の算定時に溶接欠陥の評価を行っていないのであり、そのために調査委員会の鉄骨耐力評価が非常に不自然なものになっているのである。
これを事実として判断することに反論できるなら機会を与える。(求釈明その5)

鉄骨耐力評価を行う上で最も重要な、添付資料No.6の調査が不完全であり、それを完全に行うために表記の破断面の拡大顕微鏡による溶接欠陥の性状分析が重要なのである。
すなわち、ここでは16ピースに分断した部材の12ピースしか調査していない。
被告SDGは何か工学的に難しいことを言っているのではなく、16ピースの溶接欠陥の部品が現実にあって、その内の12ピースだけしか調査していないから、全部をキチンとやる必要があり、残りの4ピースについての調査は、当然、必要だという、一般市民なら誰でもがもつ、著しく常識的な見解を申し立てているのである。
これは争い事とは無関係である。それさえも拒否する理由を述べて頂きたい。(求釈明その6)
さらに、添付資料No.5とNo.6の不十分な調査には、膨大な費用(税金)を投入している。新潟県納税者の方々に代わり、その投資効果の釈明を求める。(求釈明その7)

(3) 「部材の一部を利用して溶接欠陥を再現し、引張り試験を行う」について

この項の冒頭に、「原告は、鉄骨上弦材が崩壊の起点となり得ないと考えており」とある。ならば、試験を行ってその原告の考えが正しいことを実証するのは、立証責任を有する原告の責務である。これは、原告の考えを実証できるチャンスでもある。
公正な試験の必要性は、本来は原告側にある。訴訟代理人の見解を求める。(求釈明その8)

本項の中段に、「被告SDGが実施に固執するのであれば、同じ規格の鋼材を入手し、組み立てて自ら行えばよいことである」と明記している。
この主張は、訴訟代理人弁護士が書いたものか、新潟県当局の技術系職員が書いたものかを明らかにして頂きたい。(求釈明その9)
鉄骨に関する技術工学上、あまりにも非常識な記述だからである。
一般に規格は、機械的性質を規定したものである。しかし、鋼材には機械的性質だけでなく化学的性質があり、溶接性能は後者の化学的性質に大きく影響される。そして機械的性質が同一な規格品であっても、化学的性質は異なるのが常識であり、実物で溶接欠陥を再現しなければ、まったく意味がないことは、通常の技術者であれば常識事項である。

以前、残存デッキを利用してPC定着部の耐力試験を行う提案を、SDGがしたところ、新潟県港湾空港局長は、「残存デッキは事故ですでに大きな損傷が発生しているからそれを利用した試験は意味がない」と主張した。
これに対し、被告SDGは、「損傷があるならば、より試験の重要度が増す。新潟県が、第一回ジャッキダウン時に定着部も損傷が発生した可能性があると主張するならば、損傷の可能性のある現物で試験することが落下の真実を見つけ出す上で重要だ」と申し上げ、原告の了解を得て現地試験と実験室試験を行った。このときのやり取りで、新潟県も十分に試験の意味を理解した、と考えていたが、上段のような主張により、原告が技術工学上の試験意味をいまだに全く理解していないことが明らかであり、被告SDGは慄然としている。
これでは、原告新潟県には、試験の必要性を議論する資格が無い。

本項後段に、「被告SDGの検証申出事項は、既に原告が提出した甲号証により明らかにされている事項か、又は実施が無意味な事項であり、原告としては、検証の必要性はないものと考える」としている。
原告の主張の立証責任を果たす機会を原告自らが放棄したと解してよいのか。(求釈明その10)
原告が自ら検証することを放棄したのであれば、必要部材を被告SDGに限らず、その調査の必要性を求めている者に無条件に引き渡すべきである。

 
「検証の相当性について(1)明らかにしようとする事項」について

被告SDGの検証申出書3項の「検証によって明らかにしようとする事項」は、専門家による鑑定を通して明らかになる。
この3項に記述した内容が明らかになると、原告新潟県は不都合が発生するのか。(求釈明その11)
「検証の必要性はないと考えるが」と原告新潟県は、何度も同じ主張を繰り返しているが、客観的状況において事故原因はなんら究明されていないのであり、被告SDGは、事故原因を解明するために、検証が必要なのである。

 
「検証の相当性について(2)検証機関」について

被告SDGの検証申出書4項の「検証機関」は、法令上は「鑑定機関」の誤りであり、訂正する。

 
「原告が貸し出しに応ずる義務がない」について

平成16年5月26日の被告SDG作成の「朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故 残存デッキおよび落下デッキを用いた試験計画書」(乙D第37号証)は本件落下原因を特定するためのすべての問題を含む包括的な試験計画書である。

この計画書にもとづき港湾空港局野水参事と試験実行の協議を行った。被告SDGはこの協議に当たり、最初に、申し上げたのは、「試験は断片的、あるいは一部だけを行っても全く意味がありません。
この計画書にあるようにPC部材も鉄骨部材も等しく全部の試験を行い、落下した構造の性状を実体として明らかにすることが重要です。」それに対して、野水参事から、「いまは、残存デッキの解体撤去を急いでいるので、現地試験が必要なものについて重点を置き、協定書を締結し、実験室でできるものは後回しにしましょう。」と強制的な提案があり、結局、SDGがその提案を了承せざるを得ず、その結果、平成16年6月7日の「協定書」(乙D第36号証)を締結し、PC定着部の試験のみを行った経緯がある。

しかし、この「協定書」は、その後の鉄骨の試験実施も前提にしているので、表題は「朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故に係わる残存デッキ及び落下デッキを用いた試験に係わる協定書」とした。これは野水参事も十分に承知している。もし、原告代理人が主張するように、この協定書にはその後においても鉄骨が含まれないのであれば、試験は「残存デッキ」のみを対象としたもので、「落下デッキ」と明記する意味を失う。

そして、鉄骨の試験のための供試体は、「落下デッキ」の部材が主であり、残存デッキから必要なのは2箇所である事を、野水参事と合意し、その切り取り費用を被告SDGが負担するなら、試験供試体として扱うことを港湾空港局も合意しましょう、と原告の回答をSDGは得たのである。

試験に係わる全般的筋道は以上の通りであり、原告新潟県が被告SDGに対して貸し出し義務を負っていないとの主張は、事故発生以来、2年間にわたる被告SDGと新潟県港湾空港局との協議経緯を否定するものであり、事実に反する。

 
「以上の諸点に鑑みて・・・却下されるべき」について

本準備書面(6)により、被告SDGが申立てた検証を実施することが、必要性、相当性、実体法上の利益状況のいずれからみても、妥当であることを明らかにした。

 
  以上


 
求釈明

本準備書面(6)中に赤字で記載の、(求釈明その1)から(求釈明その11)までの11項目について、原告新潟県の迅速で誠意ある釈明を求める。



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Updated November 19, 2005