SDG

朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故の真相解明に挑む


第16章
真実は小説より奇なるもの
原告新潟県が裁判所に提出した証拠書類から知り得たこと
2008年10月26日  

この裁判がはじまって、丸4年が経過した。うんざりする長さであるが、しかし、「時を経ると真実が自然と明るみに出る」という世間の一般的で普遍的な法則も経験することができた。

原告新潟県の訴状は、以下の4段論法を骨子としている。

@「新潟県は、第三者機関として調査委員会を設置した。」
A「調査委員会は、事故状況の分析や崩壊過程の検討をとりまとめて調査報
   告書を作成し、これを知事に提出した。」
B「調査報告書は、本件事故の発生原因を、@定着部の設計ミス、A定着部
   補強筋の施工不備、Bジャッキダウン時に定着部に損傷を与えた、この3
   点であるとした。」
C「したがって、新潟県が蒙った損害額8億9455万円について上記3点に関与
   したものに賠償を求める。」

この単純明快な論法でいえば、原告新潟県が行ったのは、最初の調査委員会の設置と、最後の賠償請求訴訟の実行の二つだけである。訴訟の根拠となる崩壊原因は、原告新潟県とは関係の無い、信頼すべき調査委員会の客観的な調査報告によって証明されていることになる。

僕は、裁判がはじまって3年の間、この新潟県の仕組んだ罠に気が付かなかった。最初の3年間、僕は、4段論法の内の第B項、調査報告書の過ちだけを追及してきたのである。裁判が始まる前から、そして裁判が起こってからも、僕は終始一貫して崩壊原因について報告書の誤りを指摘し、かつ、真実は僕が提唱してきた「上弦材鉄骨破断説」ではないかと主張してきた。
しかし、調査報告書の中の初歩的な計算の過ちに対しても、原告新潟県は「馬耳東風」で何の反論もしない。僕の主張に対して、まったく無視の姿勢を通してきたのである。

裁判では、「訴えを起こした原告が自身の訴因を立証する義務がある」と誰に聞いても同じ答えなので、僕は、それを信じてきたのであるが、この事件に関しては原告新潟県は訴因を立証しようとする気配すら感じられない。
で、どうしてなのかな、と僕は考え続けてきて、去年になって、ようやく冒頭の4段論法に気が付いたのである。

すなわち、原告新潟県にとっては、「わが国の最も権威ある調査委員5名の客観的な結論こそが、事故原因を特定したもので、すでに訴因は立証されている」という立場を崩す必要はない。たとえ、SDGがゴチャゴチャと文句を言ってきても、社会的に末端にあるものの主張は、裁判所では通用しない、事実、公的な立場にある日本建築学会や日本建築構造技術者協会(JSCA)は5人の委員の作成した事故原因報告書に賛同しているではないか。報告書は日本土木学会誌にも公表され、誰からも異論が出ていない。事故原因についての立証は、既に終わったことなのだ、としてきたのである。

そこで、僕は、去年から、「調査報告書」は調査委員会が作成したものではなく、原告である新潟県自身がこの賠償請求訴訟を目的にして、自らに都合よく、自らが捏造したものであることを証明しようと試みてきた。

最初に、調査報告書に調査委員が作成したことを明らかにする調査委員の署名捺印が無いことを指摘した、公的文書ではないのである。しかし、原告新潟県はそのことについていまだに説明できないでいる。

次に、調査委員に対して知事からの任命書のごときものの有無を問いただしたが、そのようなものは無いと回答してきた。その上で知事から発行したとする各委員の所属機関への委員就任のお願い書を証拠書類として、原告は裁判所に提出した。

第三に、その知事からの就任お願い書には、審議委員として参加するよう書かれていたので、「調査委員」と「審議委員」との違いを追及したが、これもいまだに回答がない。

第四に、委員会議事録の提出を求めたが、原告新潟県は、議事録は存在しないと回答してきた。

第五に、議事録が存在しないのに、既に公表されている簡単な「議事録要旨」はどやって作成したのかと問いただしたら、録音テープをもとに県の職員が作成したと回答してきた。
それで、録音テープそのものの提出を求めたら、原告新潟県は、録音に雑音が多く判読できないのでという理由で提出を拒否。

そんな膠着状態でありながら、原告新潟県は今年の7月7日に、彼らが要求している損害賠償金を説明するための明細を大量に裁判所に提出してきたのである。さまざまな契約書類や県からの支払い明細の膨大な証拠書類である。
僕は、それを丹念にチェックしてみた。そしたら、その中に県が地元の印刷会社に支払った11通の明細書があり、調査委員会や委員長の記者会見などの「テープ起こし」費用、355万円を発見したのである。10回の調査委員会での録音テープが合計で2,295分、約38時間にわたり、それを文字化したものが存在することが明らかとなったのである。

で、僕は、そのことを猛暑の最中だが8月27日に書面にして裁判所に提出した。議事録さえあれば真実の一端が明らかになるではないか、と。

9月10日に開かれた裁判所での準備弁論で、裁判所から原告新潟県に対して、「テープ起こし」にもとづく議事録の提出を命令したが、原告の弁護士は言を左右してうやむやにしてしまった。

現在の状況は以上である。

僕の当初の推理は、時間を経るごとに確信に変わって来た。
事故発生の翌日から、新潟県は、「事故処理として事故原因を追究するのではなく、賠償請求訴訟を起こすことだけを目的にしていたのだ」。一見、民主的な裁判を利用した、「責任転嫁」だけが彼らの目的だったのだ。

その真実を知ることだけでも、この裁判は面白いと思うし、いまだに、江戸時代と変わらぬ地方行政があることも勉強になった・・・と考えている。

それに、こんなことに負けてはならないという「技術者の尊厳」を守ることにファイトが自然と沸いてくる裁判でもある。





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Updated 03.September.2007