SDG

朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故の真相解明に挑む


第24章
東京高裁は法的責任論を中心に「和解」を推奨する

東京高裁がどの程度、事故について認識しているかわからないので、僕が最初に提出した書面は、「事故原因に関するSDGの見解」を述べたものとした。(2012年12月12日付け控訴補助参加人SDG準備書面(1))

「落下原因の特定は、事故現象のすべてを説明し得るものでなければならい」としたこの準備書面の要点は以下。

第1 事故現象における構造的特徴
  @ 5橋間のうちの1区間だけの崩壊で、両側の区間への影響がみられなか
    った。
  A 上弦材鉄骨は全体的に佐渡汽船側に、下弦材PC床版は朱鷺メッセ側に
    移動して落下していた。
  B PC定着部は、破壊したものと無傷のものとがあった。
  C 上弦材鉄骨が完全破断したのはR27だけであり、入江側R27のロッドだ
    けが大きく曲がっていた。
第2 事故の時系列上の特殊性について
  @ 連絡デッキが全スパン完成したのが平成14年9月、歩行者が朱鷺メッ
    セから佐渡汽船まで供用されだしたのが平成15年5月。自然落下であ
    るにも係わらず何故、完工から11ヶ月、供用から4ヶ月の間安定して
    いたのか?
  A 落下1時間前、ドンという音のあと縦揺れ、横揺れが20秒くらい続い
    た、地震かと思った、との歩行者証言を科学的に説明できるか?
  B 落下40分前、帰宅すべく立体駐車場の朱鷺メッセ側の階段を利用した
    通行人は普段通りだったと証言している。
第3 事故原因の特定にはコンピュータシミュレーション以外にあり得ない。
  現実に破断している箇所は16箇所であり、そのどれかが落下起点であ
  る。その各々を破断起点と想定して力学的・幾何学的シミュレーショ
  ン解析を行えば、最後の落下した状況を再現できる。それが事故現象
  の第1項に合致しているものが崩壊起点であると特定できる。
  その後で、なぜその点が崩壊起点になったかを分析すれば、あるいは
  実物を使って実験すれば崩壊原因が判明する。原因は最初にはわから
  ない。シミュレーション解析が終わった後の分析と実験で判明するも
  のである。
第4 控訴人新潟県の主張する事故原因―PC定着部破断説―について
  @ 控訴人の主張する落下原因、(1)PC定着部の設計ミス、(2)PC定着
    部の配筋不具合、(3)第一回ジャッキダウン時の施工不具合、の三
    点は、原因として証明されたものではなく単に、「疑惑点」を指し
    ているに過ぎない。
  A 本件事故を本質的に解明するためには、推論や状況論を挟んではな
    らない。原因と特定できるのは、第1項と第2項を科学的、合理的に
    説明できたときのみである。
第5 SDGの主張する事故原因―上弦材鉄骨破断説―について
  @ SDGは第3項のコンピュータシミュレーション解析を徹底的に行い崩
    壊過程を含むすべてを論理的に明らかにした。
  A 後は、新潟県が所有する実物を使用した鉄骨溶接部の破断実験で実
    証するだけである。だから、平成15年12月以来、再三にわたりSDGに
    その鉄骨部材を提供するよう要請してきたが、新潟県は現在に至る
    も頑なに提供を拒否してきた。
第6 責任論について
  事故にもとづく責任論だから、事故の原因を明確にした上での責任論以
  外はあり得ない。単に本件工事に関与したというだけで責任論を展開す
  るのはまったくのナンセンスである。
  事故原因は、単に、本件関係者のみが納得するだけでなく、本件事故に
  関心を寄せる世界中の構造技術者が、「なるほど、そういう原因であの
  前例のない事故が発生したのか」と、科学的に理解できるものでなけれ
  ばならない。
  その真の原因に立脚して、責任を問うべきである。

以上が要約であるが、SDGがこれまで新潟地裁で終始一貫して主張してきた骨子をまとめたものに過ぎない。

この準備書面を提出した直後の2012年12月26日の進行協議のときに、裁判官に呼ばれて東京高裁の裁判の方針を告げられた。
裁判官「新潟地裁では7年もの時間が経っておりご苦労さまでした」
僕「ハー、でも結構、楽しませてもらいました」
裁判官「東京高裁では迅速に裁判を終わらせたい」
僕「賛成ですね」
裁判官「ここでは技術論よりも法的責任論を中心にします。法律にもとづいて裁判する方針です」
僕「でも自然落下事故だから技術的に原因を明らかにしないと責任論には移れない」
裁判官「技術的解明は100%である必要はありません」
僕「自然落下だから、直接的には設計者と施工者に何らかの法的責任があることは解るけど、発注者にも発注者責任があります」
裁判官「発注者責任を問う法律は何ですか? それをあなたが明らかにすればもちろん裁判所は採用します」
僕「ハー、考えてみましょう」

「設計責任」とか「施工責任」ということばは横行しているし、おおむね建築基準法や建築士法か建設業法でその責任を定義されている。僕は、法律には滅法暗いから、「発注者責任」の法的根拠など知る由もない。東京高裁が技術論でなく法律論で裁定するなら、この問題に積極的に取り組むしかない・・・とこのとき覚悟を決めた。

その議論のあとに、

裁判官「東京高裁はこの事件を「和解」で終結するのが最良であると判断しています」
僕「へー、和解ですか。そんなのあり得るのですか。それは困る。新潟県は証拠の鉄骨部材を捨ててしまう! 真相が闇の中に消える!」
裁判官「それはあなた方の問題で裁判所が関与することではないのです。和解で終わることは裁判所の方針です」
僕「イヤー、本当に困ったな、僕は和解には絶対、反対だ」
裁判官「あなたは補助参加人だから。被控訴人が和解に賛同すればあなたはそれに従うしかない」

実に嫌な気分である。僕には「和解」をぶち壊す方法論がない。



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Updated 12.NOV.2011