Structural Design Group

海の博物館/重要有形民俗文化財収蔵庫


収蔵庫 収蔵庫
収蔵庫PC 収蔵庫PC

ローコストと高い耐久性

  文化財の収蔵庫であるから、設計のテーマは「ローコスト」と「高い耐久性」である。まさに安くて長持ち(最低200年くらいはもたせる)の構造は何か・・・という単純ではあるが最も難しい問題である。建築家・内藤廣の悩んだあげくの結論が、屋根材に我が国の伝統的な「瓦」を使う・・・ということであった。その瓦を支える構造体は現状の技術では、PC(高強度で高品質なコンクリート部材を現場で組み立てる)をあたかも石造のように扱うことが最適解であることは、それほど時間のかからない結論である。

架構のハイブリッド化

  「瓦」にとって5寸勾配が好ましいから、その下地になる構造も並行してあった方が何かとうまく納まりそうだ。収蔵庫としてスパン18m程度が必要ということになると、基本構造は必然的に5寸勾配の山型フレームになる。

  山型フレームの欠点は、周知のように、フレームが曲がる方のところで外側に押し出されて壁や柱となる部分に大きな応力が発生し、かつ中央の頂点が下がる傾向にあることである。だから肩のところにタイビームを入れて左右のバランスをとれば、この問題は簡単に解決することができる。直線のタイビームは効率がよいが、収蔵品にとっては高さの邪魔になる。邪魔にならない程度にタイビームの位置を徐々に上げていくと、これも簡単な計算でわかることだが、タイビームとしての効果が減少し役にたたなくなってくる。

  一方で18mスパンを架け渡すのにPCをイメージするのであればアーチ状の圧縮部材で力を伝達できれば、古来から行われていることだが、断面を小さくでき合理的構造法にできる。そこで、上方に移動させたタイビームに曲率をつけ、もとの山型フレームもアーチ効果が発揮できるように形状を若干修正してみる。タイビームとしての効果が減少した分だけアーチ効果が発揮されて全体としてうまくゆく、それにPC部材の現場での接合を考えると、中央で三角形をつくっておいた方が、部材間の力のやりとりが軸力だけですみ、接合部のディテールが単純になるだろう。

  こういった作戦でこのフレームの形状ができあがった。できたフレームはもはや、何々構造と名前がない幾つかの構造システムが複合・混合された構造になる。こういうのもハイブリッド構造と呼ばれるものの一種である。今まで誰でも知っていた構造方式を構成し直す手法だ。ここでは山型フレームとタイビーム、それに半剛接アーチが複合したものである。

  さらにグリッド幅を2.25mにしてこの構造構成をシンプルにするために、屋根面は屋根版と梁とを、壁面は壁と柱とを一体にしたPCを考える。そうすれば一列の構造がタイを加えた3つの部品で構成できる。これを長手方向に並べれば収蔵庫ができてしまう。

所在地:三重県鳥羽市浦村町大吉1731−68
設計:内藤 廣
構造:プレストレストプレキャストコンクリート造
ポストテンション組立構法
規模:地上1階
敷地面積:18,058m2
建築面積:2,173m2
延床面積:2,026m2
施工:鹿島建設
木工事:大種建設
PC製作:黒沢建設
東海コンクリート工業
竣工:1989年6月
掲載誌:新建築 90/07
建築文化 90/07
日経アーキテクチュア 930222
建築技術 93/06



海の博物館/展示棟


外観

内観

展示棟の架構は、3つの従来よくある構造形式を複合したものである。

1つは収蔵庫と同じように瓦屋根の下地をつくるための山型のフレームだが、屋根面の部材は斜交して全体の安定を保っている。同じ架構形式でもPCと集成材とではその構成法が違ってくるのは当然だ。もう1つの構造形式は屋根の重量をスムーズに基礎に流すためのアーチである。そして3つめは山型とアーチに直交する長手方向に架けた2段の立体トラスで、この3つの構造が共存している。

個々の部材寸法を小さいものにして、木造の特質を十分に引き出すためにこういった複合構造を考えるのである。

アーチは圧縮力を中心にして力を伝達するし、長手に架けた立体トラスも部材の軸方向力だけで力を次々に伝達していく構造である。
この場合、部材の接合部はピン的なもので済み、木造の加工性の良さと合致する。

一方、山型フレームでは軸力成分よりも曲げせん断が大きく、その継手に苦労するものだが、この場合には3つの構造の共存によって山型に発生する応力は小さく、それも複合構造の面白いところである。

所在地:三重県鳥羽市浦村町大吉1731−68
設計:内藤 廣
構造:架構部:木造
壁・床:鉄筋コンクリート
規模:地上2階
敷地面積:18,058m2
建築面積:1,487m2
延床面積:1,898m2
施工:大種建設
竣工:1992年6月
掲載誌:新建築 92/11
新建築臨時増刊 木の空間
日経アーキテクチュア 930222,941107
JA 94/02
建築技術 93/06
SD 93/04
GA JAPAN 93/03
日経デザイン 92/11



海の博物館/体験学習棟

所在地:三重県鳥羽市浦村町大吉1731−68
設計:内藤 廣
構造:RC造、木造
規模:地上2階
敷地面積:18,058m2
建築面積:202m2
延床面積:386m2
施工:大種建設
総工費76,000,000(建築52,050,000)
竣工:1998年3月
掲載誌:建築文化 98/08


logo
[ back ]

Copyright 1997 Structural Design Group
Updated Aug 19, 1997