暫定式スーパーロボット大戦

　万が一に備え、作業場の周りは荒野といわんばかりの大地があり、
それを見下ろす巨大な建造物がバシュタールの地に聳え立っていた。

　遥かを望めば、人々が農耕を営む家々も見て取れた。
ここはバシュタール、成功と表裏一体である失敗がもたらされる場所。

「誰か、アイツを止めろ！」 「彼は暴走している！」 「全てが失敗か！！」 「まだ調整は完全ではなかった！！！」 「危険すぎる！！」 「我々は此処を放棄する！」 「よろしい、君達に夜の創造者足る資格は無い！」 「私はコレと共に生き、コレと共に死す！」 「その行為に、何の躊躇いが在ろうかぁぁぁぁ！！！！」

　突如として現れたれた「黒い月」、それに属するように出現した「幻獣」。
その時事は時を同じくして科学者達に焦りを植え付けるのは容易な事だった。

　そのバシュタールの地で、とある科学者の
焦りを胸に秘めたままの実験が行われた。結果は失敗。

　全てはその時に始まった。
地球が制止した７日間の、その始まりの地‥‥そして。

　バシュタールで起きた実験失敗の余波は、全世界に浸透した。

　バシュタールより全世界ヘ向けて放たれたエネルギーは
ありとあらゆるエネルギーを中和し、通信は絶たれ、
全ての交通網は麻痺し、絶望の中、闇夜にさえ脅えながら、
今まで頼り切っていた文明の無力さに人々は恐怖した。

　しかしその失敗を糧とし完全無欠のリサイクル機関、
シズマドライブは完成した‥‥が、人々は
バシュタールの出来事をありとあらゆる文書より抹消、封印した。

　人の記憶以外のすべての記録を‥‥。

　ただその失敗が最悪の状況だったという事を
記憶より消し去る事が出来た人間はどれほど居たのだろうか。

　いま、この地球上にバシュタールは無い。
地名が無いのではない、実験により土地自体が「蒸発」してしまったから。

　かつてバシュタールと呼ばれた地には、実験の中心地である
半壊した建造物が残るのみである。誰も近寄らない、忘れられた土地。

　それが美しい夜を望んでいた者達の墓標であった。
それに巻き込まれた幻獣達の墓標でもあったのだが、
その事実を知るモノは居なかった。