塩、コショウ、醤油の三種類では、味が扁平になるのは当然だ。
そう考えて、調味料を調達することとした。
砂糖(私は紅茶やコーヒーを飲まないので、部屋になかった)、ガーリック、チリペッパー、レッドペッパー、ナツメグ、タバスコなどを調達し、さっそく炒め物に試してみることとした。
塩コショウが基調の野菜炒めにガーリックは一ひねりと言ったところか。
ピーマンのような渋みのある炒め物に、ナツメグは合う。
醤油で炒める際には、砂糖があった方が引き立つよな。
このように、調味料はなかなか役に立ってくれた。塩コショウだけでは出ない味が出るというものだ。私の部屋の台所にはあまり聞いたこともないような調味料が増え続け、それ組み合わせを楽しむようになった。
だが、食い物は理科の実験のように簡単ではない。
化学薬品よろしく調味料を組み合わせれば、それでうまいメシが出来るというわけでもない。まあ、野菜炒めに5〜6種類の調味料を振りかければ、それはそれでおいしく喰える。しばらくは、それだけで満足していた。
しかし、1週間もただの野菜に調味料ばっかぶっかけていても、決定的な味覚に欠けるということに気付きだした。それで、時折「もっと、複雑な味を!」「深みのある味を!」と思い、外でメシを喰ったりもした。
結局の所、同じ材料にどれだけ調味料をぶっかけようと、その味には限界があるのだ。
だが、カネが惜しくてはじめた自炊、肉や魚を買って旨味を抽出していては、カネと手間がかかることとなる。あまり多くの食材を一度に買っては、冷蔵庫の中で材料が傷んでしまうのは必至。
そこで思いついたのが、ダシの素の類である。
魚から抽出したダシの素、チキンコンソメ、ビーフコンソメ、そして中華料理の素なるものを常備するようになった。
これらは肉や魚の旨味を抽出したものであり、しかも塩まで利いている。これは調味料としては切り札的存在となった。
炒め物はもちろん、素スパゲッティに粉末をかけても喰える。ちょっと何だが、米に微量をかけても喰える。米を炒めるのもよし。そして、煮物・スープの類も可能となったのである。
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