「風呂は週に1回」
■■は、ヒゲは伸ばし放題。床屋にも年に1回ぐらいしか行かない。そのため、よく実年齢よりも20歳ぐらい上に見られ、仙人などと呼ばれている。競馬に行くときも、彼がいれば問題なく窓口でも馬券を買える。酒ビンとゴザが似合う男とも呼ばれ、学祭で彼が出店の一環として学部棟の廊下にゴザをしき、ペットボトルなど持ち座っていたら、あらゆる人間がその様子を見たとたんに逃げ帰ったという。学内にホームレスの人がいたとでも思ったのだろうか・・・。
その■■は、風呂は週に1回しか入らないという。これは最近の話で、ちょっと前まではアパートの湯船を使ったことがなかったとも。これを聞いた人間は即座に信じ込み、納得した。つまり彼が、週に1回程度しか風呂に入らない、不潔でワイルデイな生活をしていると。
これは大いなる勘違いである。彼は「湯船に浸かること」が嫌いなのであって、シャワーは毎日浴びているとのこと。なんでも、湯船に浸かると皮膚呼吸が出来なくて死ぬとかなんとか。それはともかくとして、彼が「風呂に入らない」というと、誰も「ならばシャワーは浴びているんだ」などという解釈はしない。浴室に入ることさえもない人間と、確信をもって見られる。人間に伴うステレオタイプとは、恐ろしい。もっとも■■はそれをわかっていて、敢えてそういう言動をしているのだろうけど。