天井に響き渡る放屁


 安普請のアパートでは、あらゆる音が筒抜けになる。テレビの音、壁にコンセントを差し込む音、ビデオの巻き戻し早送り、ヘアドライアー、ドアの開け閉め、開錠施錠、水洗便所を流す音、シャワーなどなど。
 また、一階に住んでいると、二階の住人の足音は頭上から叩きつけられるかのように降ってくる。極端な肥満者でもなく、カカトから体重を突き落とすように歩いているわけでもなく、普通に歩いているだけでもその音は大きい。隣人の発する音としては最大級のものだ。まあ、四六時中抜き足差し足で歩くことなどできない。これは、慣れるしかないのだが。
 慣れると足音など気にならなくはなるのだが、それでも帰ってきた、和室に来た、便所に向かった、やっぱり便所だ、流した・・・と頭上の人間の行動が自然と頭に浮かぶ。そしてある日、和室に入ったな、私の頭上に来た、座ったな・・・と思っていたら。いきなり潰れた音がして、アパートの天井が振動した。ただ音がしたというだけではなく、アパートの板が震えて響き渡った。
 屁ぇこきやがった!なんというかまあ、座って屁をしたら、下の住人にその音まで響く。安普請とはこういうものである。よく、はじめて安アパートに越してきた人が、頭上の足音に腹を立ててトラブルになったりするけれども、そういう人は屁の洗礼に対してはどう思うのであろうか・・・。 


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