出征兵士を送り、そして魔都アキバへ
1999年10月03日(日)
今日は、釧路から来た友人・ケンシロウ(仮名)が中国大陸へ出国する日だ。彼は大学の研究室仲間と連んで、卒業旅行に行くのだ。奴は、私や國學院の友人・総統(仮名)と会って遊ぶために、ひとりだけ一日早く東京に来たのである。
ケンシロウのカバンに青天白日旗を入れたり、台湾元をサイフにねじ込んだりしようとしたが、失敗に終わった。中華人民共和国は現在、建国50周年で沸き立っている。ここで国民党の旗や紙幣なんぞ見つかったら、なかなかシャレにならないことになるであろうな。
この日が休日でよかった。
朝の京王線上りは、釧路人にはかなりキツイはず。電車は座れるほど余裕があった。
新宿駅で中央線に乗り換え。上野が集合地点とのこと。
「ああ、あれだ」
「あれに乗ると大宮まで行けるぞ」
「安心しろ。まだスーパーあずさには時間がある」
「松本もいいぞ」
「あっちのホームだ」
「甲府に着いたら連絡くれ」
「こちらのホームでございます」(中央線上りの方へと案内しようとする)
ケンシロウ「おいおい、また言ってるよ」
はじめての人間にはわかりにくい新宿駅で、ちゃんと最短ルートの中央線に乗せようとしたのに、疑うとは友達甲斐のない奴だ。
京成線上野駅には、ケンシロウの研究室仲間がすでに待っていた。
「お前の友達ヤクザ者かよ」
失礼な。私、中央大学法学部政治学科のまっとうな学生でございます。ちなみにそのときの私は、アロハにダボズボン、金縁メガネに金時計。おまけに短髪にヒゲである。
本当は、「××上等兵殿の出征を祝って万歳三唱!」とか、「アニキ、行ってらっしゃいやし。ムショはツラいでしょうが、辛抱して下せえよ」なーんて言いたかったのだがな・・・。
それから総統と別れ、サークルの後輩と待ち合わせている秋葉原へ。同人誌、同人ゲームを漁るが、最近のはどうも好みではない。「最近の」というコトバは使いたくなかったが、そう思えてならない。
性表現が露骨で直接的すぎたり、ちょっと病的に思えたり・・・。なんでも、過激にすりゃあいいってモンじゃないでしょうに。3年前に、喜んで何十冊も大差ないモノを買った人間のセリフとは思えないが・・・。
しかし、ある店に行ってから私の同人観・アキバ観は一変した。
看板らしい看板もなく、詳しい奴にその店の存在を聞き出さねば、一生知らなかったはずだ。そこの店内は凄まじかった。
商品のレベルが高い。どの絵やCGを見ても、描き口はおとなしめで、私好み。そして何よりも絵がうまい。オリジナルの制作者本人が作っているんじゃないかという代物ばかりであった。そして、違法かな?と思うような品々。CD-Rを安定して読めるプレステ、エロゲーのCG吸い出しソフト、そこいらで売っているグッズを改造した品。
私は感動した。私の知っているアキバは表層にすぎなかった。アキバの複雑怪奇な迷宮の奥には、かくも凄まじい空間が存在したのか。店ばかりではなく、客までもがその道のプロに見えてきた。私など、まだまだ甘い。それを再認識した。