入学式
2000年04月01日(火)

 中大に入学してから、四度目の入学式である。
 サークルに縁のない人間は、まだ春休み。ここぞとばかりに勉強でもしているか、友達と遊んでいるか、それとも昼まで寝ているか。
 私らサークルに所属する人間にとって、入学式とは新入生勧誘活動(以下、「新勧」)の最前線である。


 モノレールが出来て初の入学式。
 私はビラ配りでモノレール駅前に張った。
 ビラ配りってのはコツなんだよ。新入生は、まず、ビラを受け取らない。それどころか、ビラ配りを災いをもたらす「敵」のように避け、中には走って突破を試みようという奴もいる。
 まったく、街角の、くだらんチラシや風俗の客引きじゃないんだから、そんなに警戒しなくてもいいのに。私が新入生のときは、どんなサークルがあるのかと、すべてのビラをもらい、吟味したものだがね。


 で、私はビラを「差し出す」のではなく、有無を言わさず手に「載せた」。無論、営業スマイルで気の利いた挨拶のひとつも言いながら。すると、結構受け取ってもらえるものである。
 ビラを渡すことによって、棒術部の存在と、サイトのアドレスを知らしめることが出来る。それで関心を持つ奴は持つ。来る奴は来る。


 モノレール側では大盛況だったが、それ以外の門では、ビラ配りの方が新入生よりも圧倒的多数だったそうな・・・。


 そして、あとは入学式やガイダンスの合間のヒマな新入生を、営業突撃兵が勧誘。出店や食堂でサークルの説明をし、体験稽古に誘う。体験稽古で、棒術部の稽古に関心を持った者、その後の飲み会で盛り上がった者は、棒術部をサークル選びの候補として挙げる。
 そして、あとは入部するかしないかだ。


 今年の新勧は、初日からまずまずの成果だっただろう。
 数多くの新入生に説明を聞いてもらい、その中の何人かは体験稽古に参加し、そして飲み会へ参加してくれた。


 この成功の反面、思ったよ。
 新入生の「体質」が変わりつつあるな、て。
 基本的姿勢が「守り」の奴が多数派を占めてきたな・・・。
 別にサークルの説明聞いたからって、入部決定ってな訳でもないのに、それすらも避ける奴。そんな奴は昔から大勢いたが、どうも年々増加しつつあるような気が・・・。私がキャンパス慣れしすぎたということなのか?


 営業突撃兵として声をかけても、「ヤバイッス、ヤバイッス!」とか意味不明なことを言いながら、必死になって逃げようとする奴も少なくない。あたかも、外国にでも売られるか、変な宗教に入れられるとでも思っているかのようだ・・・。
 営業突撃兵を避ける者は昔からいたが、その理由は「うざい」「面倒」が主だったはずだ。しかし、今時の若いものは「ヤバイ」なのかよ・・・。


 まったく失礼な。
 我々は、貴様のようなクズに用などない!
 誰が、好きこのんで労力・体力・精神力を使って、そんなクズを無理矢理部員として迎え入れようか。我が栄光の棒術部が汚れるわい。


 そして・・・「守り」に入っているのは、新入生だけではない。キャンパス全体の雰囲気が沈んでいるのだ。
 飲み会自体が少ない。
 当日予約して飲み屋に行っても、同類がいない!
 ビラ配りも少ないような気が・・・。
 学内の勧誘ポスターでさえも少ない気がする。


 そう、ポスターも少ないのだ。
 入学式の何日も前から、学内の壁という壁を競ってポスターで埋め尽くし、よそのサークルのポスターに上貼りなんか当たり前。それで一触即発なんてことも、めずらしくはなかった。特定のサークルに敵意をもって、敢えて潰し合うこともめずらしくはなかった。


 しかし、それは私が1〜2年のときをピークに、年々おとなしくなってきたようだ。
 今年は、入学式直前までポスターを貼るサークルの方がめずらしく、他サークルのポスターを潰すなんてことも一部の激戦区以外ではほとんど見られなかった。愚衆の人海戦術によって、すべてを自分のサークルで埋め尽くす悪名高い某オールラウンド・サークルも、今年は他サークルのポスターから外していた。
 何が変わったんだ・・・。
 やはり、時代が「守り」に入ったな、との感を禁じ得ない。


 谷は越したとされる経済不況と、それを喧伝する大衆メディアの影響によって、世間の空気は「守勢」になったのだろうか。経済のゆとりと心のゆとりは、情緒に大きく影響するからね・・・。
 まあ、私は私の道をゆく。
 されど、共に道を歩む者が、世代の近い者だけ・・・ということになりそうだ。まあ、それはそれでよい。日々の生活スタイルや享楽の在り方にまで、あえて迎合して自己を折ることもあるまいて。  


戻る