射的抽選会
2000年10月13日（金）

　私は部屋にある物品を、遠くにない将来の引っ越しを鑑みて、処分することとした。
　古本屋はそうそう簡単に古書類を引き取ってくれるものではないし、個人的に録画したビデオなんざは売るわけにはいかない。すべて、ゴミの日にそれぞれ燃えないゴミや古紙回収の日にでも捨てておけば話は簡単なのだが、それも忍びないので後輩連中に譲ることとした。
　これがその「放出品リスト」である。


　「放出品リスト」は渡米前に公布し、希望者が単独のものは私が大学に持っていくか、あるいは時間をあわせて希望者が取りに来るかして、私の部屋の物品は次々にはけていった。しかし、希望者が重複するモノは数多くあった。今日この日に行われたのは、その抽選会である。
　劇団The座と棒術部を兼部するべーやん主演による、ミュージカル「美女と野獣」を鑑賞した後、抽選参加者は部室にて闘いを挑むこととなった。べーやんの演技についても何某かの評価を記述したいところだが、舞台を観ることが極度に少ない私が評価するのもおこがましいので、差し控えておきます。
「さあ、行くぞクズども！」
　私はワルサーＰＰの空砲を頭上に発射し、抽選参加者どもをひきつれ、部室へと向かった。


　抽選方法は、誰にも簡単に理解できて単純なものを、と考えていたが、その結果「サイコロ」と「射的」を行うこととした。
　「サイコロ」は、６面の何の変哲もないサイコロ２個を転がし、合計数の多い方が勝利という単純なもの。
　「射的」は、私の用意したワルサーＰＰで部室のカーテンに貼り付けた的を打ち、その合計点を競うというもの。弾数は６発。安全には最大限留意して行ったつもりである。


　銃の撃ち方。それは十人十色であったが、どれもとても適切な持ち方・ねらい方とは思えなかった。
　私は実銃なんぞ撃ったこともないが、小学校の頃から専門誌や専門書を買い漁り、その数は数百冊を数える（誇張ではない）。まあ、実際に訓練を受けて実銃を撃っている人間にくらべたら、私の知っている射撃の知識などゴミカス同然だが、同じ射撃経験のない人間の中では、マシな方だ。
　とりあえず、ヒジをのばせ。指を遊ばせるな。力任せに引き金を引くな。片目をつぶるな・・・といったことが気になって仕方がなかった。


　そして、課長（仮名）の撃ち方は最悪だった。
　左目を堅く閉じ、両手で保持した銃を右目の数ミリ前まで引き寄せて撃つ。
　実銃でやったら、火薬カスや後退するスライドで失明するかもしれない。反動で銃が顔面強打ということもありそうなことだ。
　しかし、奴め、このキ＠ガイ射法で最高得点を叩き出しやがった。
　小中学校とワルガキだった課長は、こうしたエアガンの射的には慣れているのだ。だが、これはエアガンの至近距離射撃にしか通用しない、クソ射法だ。江戸時代中期以降、実際に剣を振って殺し合いをしなくなった剣客たちは、竹刀でしか使えないような道場剣法を次々と編み出したというが、課長のもまさに「射的術」である。「射撃」でも「狙撃」でもないわけである。
　私の（本で読んだだけだが）実戦向け射撃法と、課長の「射的術」。どちらが勝つか勝負したかったのだが、ワルサーＰＰが弾詰まりを起こして故障したため、それは出来なかった。いつか機会を作って、射的大会をまたやりたいものである。
　今回の射的抽選会では、何人かの参加者に銃の楽しさを教えたようなので、それが冷めぬ内にまたやらねば・・・。　

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