αと語る会
2000年10月24日(火)


 意味内容を理解できる人間がいたら、ぜひとも教えて欲しい


 この日は、参謀長(仮名)主催による「αと語る会」であった。
 1年生のα氏(仮名)は、公式の飲み会以外には来たことがない。それを同期の参謀長が自宅に招いて、もてなす・・・というか、それを口実に開いた飲み会であった。
 この飲み会に参加するのは、ほとんど1年生で2〜3年生が1人ずつ。私も飲み会とくれば行きたかったのだが、老兵4年生が飲み会のたびに顔を出すのは健全な社会ではない。ここは、後輩だけの場を尊重し、私は参謀長宅へ向かう面々と某駅で分かれ、私は電車にて自宅へと向かった。


 帰宅したのが、午後10時ごろだったか。
 それから何をやったのかは覚えていないが、12時近くに参謀長宅に意味不明なFAXを送り、それから寝ることとした。
 その1〜2分後、3年生の■■から私の携帯に電話が。
 何を言っているのかよくわからん。
 騒乱の飲み会の中で、本人も酔ってわけわからんのだろう。
 そしてキ@ガイは言う。
「晴天さんも、来て下さいよ!」
 まあ、飲み会にご招待とあらば行きましよう。くだらんゼミコン・クラコン(クラスのコンパ)は行かなくとも、仲間内の価値ある飲み会ならば、時間やカネが欠乏していようと無理をしてでも馳せ参じる。それが棒術部員である。
 しかし今回は、少し事情が違った。
 ■■からの電話が切れた直後に、1年生の携帯から私の携帯に電話が入り、「■■さんが壊れて大変です。1年生だけでは止められない」との救援信号が。■■は酔うとタチのわるい男。これは急いで行かなければ。
 私が自分の最寄り駅に到着する前、終電の車中、参謀長宅の最寄り駅から降りた直後と、わずかな時間の間に、複数の1年生の携帯から「今どちらですか?」との電話が何本あったか。よほど事態は切迫しているらしい。
 別口で酒を飲んでいた3年生のトーマス(仮名)も、自分の飲み会が終わり、帰宅寸前であったらしいが、わざわざ参じてくれるとのメールも届いた。


 参謀長宅に到着すると、何故か参謀長のアパートの外に1年生の歳三(仮名)が。彼はチャリにて逃走するところだったようだ(注:チャリやリヤカーも飲んで乗ったら、飲酒運転になります)。そうして、参謀長宅のアパートに入ると、上半身半裸になった■■が、イった目をして奇声を発して大暴れし、1年生が部屋の隅や玄関口近くに待避していた。
 このクズ!早速私は■■を抑え込んだが、酔って力が暴走している■■を抑えきれない。
 参謀長宅は木造の2階建てアパートの2階。真下は大家の部屋である上に、某警察署とは目と鼻の先の距離である。■■が1年の頃、2年(当時)義盛氏(仮名)宅で大暴れした際には、警察が踏み込んできたことがあった。もっともこのときは、酔った義盛氏が窓を開けて演説をしていたせいなのだが・・・。
 今回、警察沙汰になったりしたら、参謀長や■■本人に多大な損失になる上に、参謀長も部屋を追い出される。第一、この中でもっとも学年が上の私が「場」の責任者だ。問題を起こされては困るなんてもんじゃない。


 扇風機を振り回そうとするのを殴っておさめ、裸でコンビニに行こうとするのを引き倒し、後輩を殴ろうとするのをヒジでなぐり、暴れようとするのを全身で押さえ込んだ。「ポリースカモーン!」だのと奇声を発するのを、さらに殴って黙らせようとするも、噛まれたらたまらん。口だけはふさげなかった。救援に向かっているというトーマスの到着が待ち望まれた。私ひとりでは抑えきれない。
 あたりを見回したら、2年生のWild(仮名)氏、家主の参謀長などごく少数しか私と■■の周囲には、いや、視界に入る範囲にはいなくなっていた。トーマスが参謀長宅に到着したとき、1年生が何人もアパートの外にいたため、これはヤバイと思ったという。つまり外に待避していたわけである。無理もないことである。
 やっと参謀長宅に到着したトーマスは、■■の頭突きで歓迎された。
 その後は、私とトーマスが左右から■■を抑え込み、何かしようとするたびに引き倒し、ぶん殴っておとなしくさせた。だが、突発的な行動は防ぎきれない。1年C氏が無謀にも■■に近づいてぶん殴られたときや、「主賓」であるはずのα氏が不用意に■■の正面に立ったばかりに■■の蹴りをくらったときは、私もトーマスも抑えきれなかった。
 「貴様は息をし、動いているだけで有害だ!寝ろ、クズ!」と、■■を無理矢理寝かしつけたのが午前2時過ぎだっただろうか。しかし、1年生とWild氏だけだったら、どうなっていたことだろうか。私とトーマスが来ていなかったら・・・というのは、後輩共通の見解らしい。


 1年のC氏が、無謀にも■■に殴られながらも■■の不条理かつ破綻している言葉にいちいちまともに受け答え、そしてそのたびに殴られていた。泥酔者に論理は通用しない上に、正面から真摯に話しているつもりでも、泥酔者から返ってくるのは鉄拳と破綻した答えたけである。泥酔者に対するのに必要なのは、物理的な力と無視・黙殺である。
 しかも、C氏は■■に次々と日本酒や焼酎なんぞを勧めて飲ませる。なんということを。貴様は■■を殺すつもりか。C氏曰く「次々飲ませて酔い潰そうとした」とのことだが、それは映画かマンガの読み過ぎである。
 すでに泥酔して大脳皮質がマヒして爬虫類並にまで機能低下している人間に対して、エタノールを追加注入しても、1時間や2時間かけないと行動力そのものをマヒさせるのには至らない。それに、ここまで泥酔している人間が「潰れる」というのは、心肺機能を機能不全化して死に至らしめることと大差ない。酒は麻酔の一種であるということを的確に認識せずにイメージだけで扱うと、大変な結果を招きうる。
 そういう意味に於いても、私やトーマスが駆けつけてよかったというものである。


 朝8時過ぎだったか、ようやく■■が目を覚ましたとき、なんで晴天さんとトーマスがいるんだ、などと言ったものであった。このアホ!飲み会が始まってからすぐに、歳三と飲み比べをやって、それから記憶が乏しいとのことだ・・・。
 本人に記憶がなかろうとも、心神耗弱状態で暴れていようとも、それで自己の行為は許されはしないぞ。
 この手の話は後になると、笑い話や武勇伝として伝わって行くが、実はとんでもないことをしでかした、ということをもっと真摯に認識し、自己の行動を受け止めないと、他者からの信用や社会的地位さえも失うに至る。
 などと言っても、記憶もなにもない、それゆえ責任感も罪悪感も、さらには自己の行動に対して現実感もない人間は、まともにこんなことを考えられないのだが。


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