「ミスター味っ子」上映会の感想


 上映会に於ける「ミスター味っ子」の感想なのだが、これは我々がわりと批判的に好き勝手なことを言い合って笑った記録である。かなりとんでもないことや差別的なことを口にし、作品中の事象や人物を笑い飛ばしているので、それが気に入らない・看過できない人は読まないで下され。
 勘違いしないで欲しいのは、私らがこの作品を愛好しているということ。本当にバカにしているのならば観もしない。敢えて階級差別的な視点から作品を考えていくことこそが、政治学を専攻する我々の思考様式である故、誤解のなきようにお願いいたす。


第1巻 「めぐりあい 味」

 ガンダムの「めぐりあい宇宙」と「哀・戦士」から影響を受けたタイトルなのか。
 まだまだこのへんはまとも。


第1話  天才料理人・味吉陽一登場

 この話は、主人公ミスター味っ子こと味吉陽一と味皇との出会いを通して、この作品の主題である料理勝負を描く。
 この作品の導入的なものである。


 陽一の登場シーンは、学ランの陽一がスケボーに乗って河川敷を疾走ところからはじまる。さすが'80年代、すばらしいセンスだ。このガキ、人のいない堤防上で滑っていればよいものを、スケボーに乗ったまま建物の影から商店街のメインストリートに踊り出す。ここで陽一は味皇の乗る車に轢かれかけ、「このガキ、いきなりとびだすな」と味皇の運転手や秘書めいたことを勤める垂目とトラブルになる。そこでの陽一の弁は、「狭い商店街に、こんなデカい車でスピードを出すほうがおかしい」と反発する。
 確かに垂目はスピードの出しすぎだったかもしれないが、どう考えても車道にいきなりスケボーで飛び出した陽一の方にこそ非がある。まったくなんつーガキか・・・。


 その後、高級メシ屋の視察を終えた味皇は、気まぐれで陽一の家である大衆食堂に足を踏み入れることとなる。
 この「日の出食堂」は場末の大衆食堂で、労働者のとっつぁん方が入り浸る空間。そんなところに入る味皇を止めようと、付き人の垂目は必死で「日の出食堂」をこき下ろす。「大衆食堂だから、げすで当然」とは陽一の弁だが、テーブルを指でこすって、ほこりがめいっぱい指にこびりつくようなメシ屋はどうかと思うぞ・・・。衛生基準以前に掃除ぐらいはしてほしい。


 車とスケボーとのニアミスの件もあり、陽一と垂目は「この店のメシはうまい、うまくない」とのケンカになる。そこで「だったら喰ってみろ」とメシを喰わせることとなるのだが、木で出来た札のメニューを投げつけることはないじゃろう。ケンカっぱやいガキじゃ。で、うまくなかったらお代はいらない、それどころか20年続いた店の暖簾をくれてやる、と啖呵まで切る。ケンカっぱやいばかりか博打好きとは、どうしようもないガキだ。結局味皇、垂目の両方が「うまい」と感嘆した事なきを得るのだが、「うまい」と言わなかったらどうなったんだ?殴り合いのケンカか、それとも大切な商売道具を明け渡すのか。


 そして味皇は名刺を渡して店を去り、味皇が「味皇グループ」というおそらくは外食産業の企業グループの総帥であることが知れる。ここで陽一の母(父ちゃんは死別しているので、日の出食堂の経営者)は、この味皇の権威に驚嘆する。そう、庶民は権威に弱い!(某氏曰く、「女は権威に弱い」。私は逆のケースの方が多いとのステレオタイプを持っているが)。だが、陽一はその権威に対して「そんなのがどうした」と、為せることなどたかが知れている貧民の分際で、反権威的な姿勢を示して強がるのであった。
 しかしその夜、陽一は権威である味皇に認められたことに一人、布団の中で喜びをかみしめるのであった。14歳というセンシティブな時期ゆえの、反権威姿勢と自己有能感との混在なのだろう。


第2話 スパゲッティで勝負だ
第3話 丸井シェフとの決戦


 味皇ビルに遊びに行った陽一は、アポイントをとってから行けばいいものを、受付を突破してビルに潜入し、そこで偶然味皇料理会イタリア料理部主任・丸井善男と出会う。そこでまた、よせばいいものを陽一は丸井シェフにスパゲッティの作り方についてケンカをふっかけて、どちらがうまい料理を作るかの味勝負を挑むことに。互いに料理を作り合って対決する、この作品を通しての決闘方法の初登場である。


 うまいスパゲッティソースについて研究する陽一。何種類もの野菜を使い、そうして出来た数種類のソースを一つ一つゆで上がったスパゲッティにかけて喰う。こんなに大量に仕入れて食材を使い、これで大丈夫なんだろうか?個人経営の食堂は、そんなに利幅がある商売ではないだろう。もしかしたら客のとっつぁん方は、カネ払わないでツケだったりして。
 この作品では、次々と味勝負をすることになるのだが、それは多重債務者だから勝ち続けて報奨金を貰わなければやっていけないとか。我々がそんな与太話をしているときに陽一が言ったセリフ、「あとがないんだ」。これには笑った。


 そしてソースにナスを使うことを思いついた陽一。大きくナスを切って煮込むと、水分が出てソースが水っぽくなる。一方小さくナスを切ると、ナスの風味が飛ぶ。このガキは、中間というものを知らないのか!
 陽一は必ず味勝負の準備期間、どう作るか悩み苦しむ。そして毎回、解決のヒントを陽一は日常生活の中で見いだす。ソースに入れる一工夫がクルミだと気づいたのも、母親がおやつにクルミを持ってきたためであった。ナスを麺に巻くというアイディアも、夕食のロールキャベツからだ。
 もしかしたら陽一の母親、実は料理の達人で、意図的に陽一にヒントを与えているのかも。最初から答えを言ったら陽一が成長しないから、自分で気づくようにしむけているのか!?もしそうだとしたら、この母親はすごい人物だ。天才料理人であるばかりか、人材育成のプロと言える。棒術部にも一人ほしいくらいだ。


 一方、丸井シェフと垂目は味勝負の勝算について話す。
「オレに追いついたらオレはそれ以上のものを作る。小僧がそれに追いついたら、オレはさらにそれ以上のものを作る。さらに小僧がそれに追いついたら、オレはまたそれ以上のものを作る。大丈夫だ、オレは勝つ」
 こんなようなことを言っていた。こんな抽象的な話にどんな意味がある!相手よりもうまいものを作るのは当たり前だろう。その具体的な方法やプロセスこそが必要なのであって、「オレは勝つ」根拠などまるでない。
 そして陽一の方も、「まともに正面から戦っても勝てない」と。
 だから毎回陽一は、奇策・小細工でもって勝負する。曰く、オレの料理は「工夫」だ、と。
 実は陽一、単なる器用貧乏で、料理人としては大した奴ではないのではなかろうか。ある料理に優れていたところで、まったくの畑違いの料理に関しては、何十年も一筋に修行を積んだ奴に勝てるはずもない。だから、「工夫」つまり奇策を用いる。こんなことでは、まっとうな正統的料理人としては大成できんぞ。
 結局、今回はスパゲッティを薄く切ったナスで巻くという、とんでもない奇策で勝負するのであった。


第2巻 誰がためにハラは鳴る

 ヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」のパロディ。
 誰がためって、そりゃあ自分自身がメシ喰いたいからじゃろうに。
 料理人のために腹を減らせるという殊勝な心がけの人間は、そうそうおるまいて。


第4話 カレーの天才・堺一馬
第5話 必殺パイナップルカレー


 陽一は丸井シェフからの味皇料理会への参加の誘いを断り続ける。なぜそんないい話を断るんだ、このガキは。味皇料理会は、本部ビルがカネのかかった高層建築であることを考えると、相当な大企業。そこの会長である味皇とイタリア料理部主任の丸井両方に顔が通じ、その上で入社したのならば、将来は明るい。中学卒業後からそこで修行するなり、大学や専門学校に行ってから幹候コースを歩むなり、かなり好条件の就職ができるではないか。
 しかし陽一は、亡き父との思い出の詰まった日の出食堂を守りたいと考えている。だから味皇料理会に入らないとのこと。なんとアホな。そんなボロ食堂、地価が高いうちに売っぱらって債務を消して、大企業で腕を振るわんかい。そんなに店を守りたいのならば、自分自身が料理会で修行してきた方が、よほど店のためになるはずだ。


 我々がそんな土地や債務の話なんぞをしていたら、なんともタイミングよく日の出食堂立ち退きの話が。
 日の出食堂は借地に建っているらしい。そこに一大レストランビルを建てるとして、地主は日の出食堂に対して立ち退きを要請する。これに対して、毅然と抵抗する日の出食堂。だが、民法では借地人よりも地主の権利の方が保護されていたような気が・・・。


 陽一は、地主である建設会社の社長・永田の会社に詰めかける。どうやら地主にして建設会社も経営し、それでいてレストランビルまでをも自分で建てて経営しようとは、すさまじい多角経営だ。2001年の今頃は多額の債務を抱えて、経営破綻していそうだ。第一、こんな場末に巨大ビルを建てて高級レストランを開いたところで、誰が来るというのだ。
 それはともかくとして、陽一は永田社長お抱えシェフである堺一馬に味勝負をふっかける。勝ったら今後の立ち退き要請はしないとの約束をとりつけるかわりに、負けたら即刻立ち退きをすると啖呵を切る。なんという博打好きなガキか。家であり生活の基盤である店を賭けるとは。そんな勝負で建設計画を変更するという永田社長もアホだ。銀行にどう説明するつもりだ。


 味勝負の題目はチキンカレー。陽一は田舎に出かけていい鳥を探す。学校はどうした?まあ、店がかかった大博打をやっているのだから、そんなものはどうでもいいか。だが、毎回こんなことをやっていたは、出席日数が足らんで困るぞ。それに田舎の人々の方言のいいかげんさ。どこのコトバだ!田舎をなめおってからに。
 陽一は田舎で、闘鶏に使う軍鶏を探すのだが、永田社長のスパイによって、それはすべからく買い占められてしまっていた。そこまでするか、永田社長!「うまい」と言わなければ、それで済むことだろうに。そこで陽一は、農家の人が強い闘鶏だったからと肉にしないで飼っている、一羽の年老いた軍鶏を貰うことにする。人様のペットを食肉にしようと取り上げるとは、なんてひどい奴だ。


 最高の鳥を用意し、その堅い肉をやわらかくする方法に苦悩する陽一。
 だが、ビデオを観る参謀長は言う。「私だったら病死のブロイラーを、わざと堅くして出す。私だったら社長を苦しめることしか考えない。これが最後の抵抗だ」とのこと。すばらしい発想だ。さすがは私の後輩だ。
 さて、この勝負への出撃に当たり、陽一の母は「ちょっと座りなさい」と父の仏壇の前に座らせ、形見の包丁と調理着を差し出す。
「タマ、とってこいや!」
というわけではないのか。残念だ。


 結局この回は、中をくりぬいたパイナップルにカレーを詰めて、果糖で肉を柔らかくするという奇策で勝つことになる。
 そこで家に帰ると、永田社長の手によって、すでに日の出食堂はサラ地になっていたりして。


第6話 秘伝の味ラーメン勝負
第7話 熱闘ラーメン祭り


 陽一の通う中学校、ここの野球部には中田というエースで4番の選手がいる。この中田は家のラーメン屋の手伝いで試合に出られず、それ故野球部の部員は落ち込んでいた。曰く、中田がいないと俺達勝てっこないとのこと。こぉの、フリーライダーどもめ!1人にすべてを依存し、自分はろくな活動をしないのならば、それで負けても文句を言うな!
 棒術部から文官肌の部員連中が抜けたら、どうなるんだろうか。そんなことが頭に浮かぶ。


 中田の家の前にうまいラーメン屋が出来た。それで中田の家は売り上げが激減し、従業員も解雇。だから中学生である中田も店の手伝いで忙しいのだ。これに対して陽一、町内会主催のラーメン祭りで優勝して、客足をもどそうと画策する。
 友のために一肌脱ごうという心意気はいいのだけれども、ラーメン屋の主人である中田の親父に対して、大衆食堂の小せがれが「オレにまかせておけ」とは何事か。親父に恥をかかせる気か。
 一方、中田の店の前にできたラーメン屋は、甲山繁蔵という親父がやっている。この親父は、客を怒鳴りつけるガンコ親父で、陽一も散々と怒鳴りつけられた。そうした私怨も中田に協力する動機となったのだが、まあ私怨は結構なことだ。しかし、「中田の店の前に新しく店をつくり、それで客をとるとは許せない」って、それは不当な言いがかりだ。私怨で動くのは構わないが、私怨と批判を混同するな!店の前に店を出すことを批判されるのならば、この国ではどの業種も新規出店が出来なくなる。既得権益を至上に考えると、どうしても経済構造が腐敗するわい。


 さて、このラーメン祭りには熊田と玉川というラーメン屋も登場するのだが、ここの扱われ方はひどいものだ。数あわせのちょい役のつらさと言ったところか。玉川飯店はスープこそよいが、スープとからむ麺の太さが間違っているという初歩的なミスで撃沈。熊田は量だけの屋台ラーメンで、さんざんにこき下ろされた。
 そのころ中田は、陽一にラーメンを任せて野球の試合に出場する。野球の試合とラーメン祭りを交互に描いて、親父が頑張っているのだからオレもやる、息子が頑張っているのだからオレもやる、というクサい展開を予想したのだが、そんなに複雑な描き方はされなかった。当然のことながら中田、というか陽一のラーメンが優勝するのだが、ラーメン祭りが描かれている最中は野球のシーンなどない。優勝した陽一と親父が野球場にかけつけてようやく野球の試合が映り、ラーメン祭りの優勝トロフィーを見た中田が、喜びのあまりに9回裏にサヨナラホームランを放つという、すばらしく単純なものであった・・・。  


第3巻 ステーキがいっぱい

 元ネタはいまひとつ不明。「〜がいっぱい」とは、よくありそうな気がする。


第8話 やわらかステーキの秘密
第9話 決着ステーキコンテスト


 輸入牛肉の販促のため、いかに輸入牛肉でうまいステーキがつくれるかを競うステーキコンテスト。その優勝商品は牛肉1年分。これは仕入れが浮くというもの。日の出食堂二代目を自称する陽一は、早速これに参加することにした。
 だが、ここで傲慢な人格ゆえに味皇料理会を追放された「肉料理の天才」小西一也に、陽一は不当な暴力を受ける。「ここはガキの来るところではない」と。これに対して陽一、戦闘意欲を燃え上がらせ、小西に対する必勝を心に決める。相変わらずケンカ人生だ。


 結局陽一が勝つのは当然なのだが、審査員である味皇の評価は不当ではなかろうか。陽一と小西は技量に於いては互角。しかし、陽一には食べる者を思いやる心がある。これに感動したとのことだ。テキトーな理由をつけて憎い小西ではなく、目をかけている陽一を勝たせたと思われても仕方がない。
 職人・料理人・芸術家・武道家の世界では、そういった「心」が重視されるのはわかる。精神が作品や料理、技に出るというのもわからなくもない。しかし、味皇の言う「食べる者を思いやる心」というのは、肉を暖め直すというステーキ皿にもうけられた熱を持つ突起のこと。こんな小細工に感動するのかよ!


 この突起は、焼いた石に金属のカバーをかぶせた代物なのだが、小西の奴、まさかとは思ったが、やってくれおる。「それは何だ!」とか叫びながら審査員席に駆け寄り、何の躊躇もなくその突起を素手でつかもうとする。
「あちッ!」
 当たり前だ。冷めたステーキから湯気が上がるほどの熱を持っているのだ。そうでなくともステーキ皿とは熱いものだ。だから鉄の皿の下には、木製の受け皿が敷かれているのだ。なんというアホか・・・。なかなか笑わせてもらったわい。


第4巻 味将軍がやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!

 「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」のパロディと考えていいのだろうか。


第11話 味将軍からの挑戦状
第12話 究極の串焼きハンバーグ


 敵役、味将軍グループ登場の回。
 味将軍グループとは、味皇グループに匹敵する外食産業の企業グループと考えられる。味将軍グループは利益のためならば手段を選ばない連中で、欲しい料理人は徹底的に引き抜き、断る者は料理の世界で働けなくするという学会や芸能プロダクションのような連中だ。さらに、傘下に入ることを断る店は潰すという徹底ぶり。今回も、陽一の知り合いのハンバーグ屋が味将軍からの要求を断ったために、正面に味将軍グループのハンバーグ屋を作って潰しに掛かるという話。悪の組織と言えども、ただのメシ屋なのだろう、法律的手順を踏んで企業地図の拡大を図りたいらしい。
 だが、疑問的がある。味将軍の居城、中世の王族の城のような代物が過酷な地形に建っている。業務を行っている味皇本部社ビルと違って、あんな城では商売はできないだろう。外食産業の利益率で、個人的にそれほどの城を建てられるものなのだろうか?やはり、裏で良からぬ商売をしたり、犯罪組織とつながっていたりするのではなかろうか。


 陽一は、「奴らと関わるな」という味皇の警告を受け入れ(反抗期のガキにしては謙虚だ)、最初は知り合いのハンバーグ屋を見捨てようとする。しかし、陽一の父が味将軍グループの引き抜きを拒否したために、高級料亭の板前だった父が場末のボロ食堂しか行き場がなくなったことを知る。この話を聞いて、連中の恐ろしさを知って関わりにならないことを決め込めばいいものを、父について話を聞いて味将軍グループにケンカを売ることを決意する。
 ハンバーグフェアで味将軍グループのハンバーグ屋「ジェネシス」は、一気に客足をひきつけ客を独占しようと考えているのだが、それに対してよりうまいハンバーグを作って客を取り返そうというのだ。何かが間違っている気がする。一時の客足で決着がつく問題なのだろうか。


 陽一とハンバーグ屋の主人は、変装して「ジェネシス」に乗り込むのだが、案の定相手に見つかる。そこで味将軍側のシェフ阿部二郎は自分の作ったハンバーグの欠点を指摘されて、料理を床に叩き付ける。「ジェネシス」に派遣されている味将軍のマネージャーは、陽一らに味将軍グループの恐ろしさをとうとうと語る。
 ・・・昼間の営業時間だ。
 しかも流行っている店なんだろう。
 他の客がいるだろうに・・・。


 この勝負では、陽一の考え出した珍妙なハンバーグが客を呼び集め、客が全員いきなり「ブラボーおじさん」にメタモルフォーゼして街を闊歩するという天変地異によって幕を閉じる。すさまじくファンキーな回であった・・・。


第5話 明日に向かって食え!

 アメリカの'60年代の映画「明日に向かって撃て!」のパロディ。
 威勢のいいタイトルの割には、そんなに景気のいい話が収録されているわけでもない。


第13話 日本一のお好み焼き勝負
第14話 お好み焼き勝負・審査員も敵だ


 縁日には、日の出食堂も神社に出店を出すらしい。しかし、その出店の場所は先着順で、日の出食堂は出店場所を確保できなかった。これに対して町内会に抗議する陽一。出店地図を見て陽一は、お好み焼き屋の岡田が出店2店分の場所を確保していることに気づき、ここの場所をよこせと要求する。なんでも岡田は売り上げが高く、それゆえに2店分取るとのこと。
「不公平だ!」
 陽一は叫ぶ。なんて奴だ、自分が出店の申し込みに遅れたんだろうに。それに不公平とは何事か?人間も店も平等ではないのだ。売り上げの高い店を優遇し、あるいは町内会に貢献する店を優遇することこそが公平ではないか。違った店を均一に扱うことこそが不公平ではなかろうか。まったくガキめ。


 結局、出店1店分の場所を賭けて、陽一と岡田がお好み焼きで味勝負をすることとなるのだが、ここで陽一が作るお好み焼きはとんでもない。お好み焼きのソースは何ヶ月も何年も熟成させてつくる。しかし、数日しか準備期間がない陽一はスーパーで市販のふりかけを買い集めて、それをブレンドしてコクと深みを出そうとするのである。それが料理人のやることだろうか?
 一方、岡田は審査員の2人を接待して必勝を期する。自信があるわりにはやることがせこい。結局、買収された審査員も、陽一のお好み焼きにおもわず「うまい」と言ってしまうのだが、あのふりかけお好み焼きに感動するとは・・・。
 この回はいささか外れであったかもしれない。


第19話 オムレツ勝負マシーンを打ち破れ

 オムレツを調理するマシンに解雇されたシェフ。彼がとった行動は、ハンマーを振り上げて自分を解雇した店に殴り込むことであった。機械打ち壊し運動か!いきなりぶっとんだ始まり方の話である。
 オムレツを作る機械とは、マニピュレイターをいくつも備えてフライパンや調理機器を扱うという大がかりな代物。とても合理的な動きをしているとは思えない。いたずらに部品数が増えているだけのような。この機械を操るのは、落ち武者のごとき長髪ハゲ。名は俵三四郎。その外見は「ドラゴンボール」のスカウターのごとき器具を片眼につけ、白のスーツに赤紫のシャツという気の@った色彩センスをしている。ダメだ・・・、こいつはキ@ガイだ。
 この作品に出てくる料理人はだいたいがキ@ガイなのだが、こいつは最高レベルである。本来上映会では、この話は時間の都合からとばす予定だったが、ビデオのパッケージに描かれた長髪ハゲのその姿に感銘を受けて見ることとなったのだ。予想以上のキ@ガイ面だ。


 この長髪ハゲは言う。「この世に料理人など不要。これからは機械がとってかわる」と。このコトバはテレビで放送され、味皇料理会の本部メンバーは怒りをあらわにする。機械がシェフにとってかわるというのは、ランニングコストと設備投資を考えると、そんな機械を使った方が高くつく気がしてならないなんだけど。
 そして陽一は、たまたまテレビの取材現場に居合わせ、人の心こそがうまいメシを作ると宣言して、味勝負を機械に挑む。テレビクルーはそれを番組にしたいと申し出て、テレビ局にて味勝負が行われることに。


 この味勝負、陽一はほとんど何も考えていない。味皇料理会の各料理部主任が入れ知恵をし、陽一はそれに従っただけなのであった。勝負するオムレツのコンセプトは、機械が(正確には、コンピュータが)予想できないような代物を作る。つまりデータベースにないものをつくるということなのだが、またしても小細工を弄しやがって。
 陽一のオムレツはそれほど奇妙奇天烈な代物ではなかったのだが、その程度のことがデータベースにないとは大したコンピュータではないな。結局長髪ハゲは、調理をする料理人の心とやらに感動して、負けを認めることとなる。


 長髪ハゲは語る。自分が高級レストランに行ったときに、長時間待たされたあげくに出てきた料理には髪の毛が入っていた。シェフにそのことを伝えると、「お客さんの髪の毛ではないですか」と。こういう高級シェフの客を見下した態度が許せなく、マシンを作ったとのことである。
 まあ、大した話ではないが、あの長髪ハゲに対して「お客さんの髪ではないですか」と平然と言う様には笑いを禁じ得なかった。前面がハゲ、存在する髪も後頭部にしかなく、それも極端な長髪。そんなものがメシに入るはずがない。それ以前にハゲにそんなことを言うとは・・・。うむ、ひどい話であった。


第6巻 一馬はつらいよ!青森苦闘編

 言うまでもなく「男はつらいよ!」である。だが、ここで一馬がなにか苦労したであろうか?


第15話 味っ子苦戦・駅弁対決
第16話 魔法のあつあつ幕の内弁当


 陽一の父が昔世話をした人、彼の駅弁屋は同じホームに出来た新しい店のために、閉店に追い込まれつつあった。そこで陽一はそれに対抗する新しい幕の内弁当を開発して、駅弁屋のある青森まで出向いて、それ売ることとしたのである。


 細かい料理のことなど大した問題ではない。ここでの切り札は、寒い青森で、冷えた作り置きの弁当を暖め直すというアイディアだ。それは弁当箱を二重構造にして生石灰とパックの水を仕込み、水のパックを串で破ることによって化学反応で熱を出そうというもの。
 なんておそろしい・・・。生石灰と言ったら猛毒ではないか。それを食品に仕込むというのか!燗ができるカップ酒からヒントを得たのだが、カップ酒は化学反応を起こす場所を金属で厳重に密閉しているではないか。木製か樹脂製の弁当箱とは話が違う。それに高温の化学反応に弁当箱の材質が耐えるとは思えないし、客が過熱する弁当箱で火傷をする可能性は大だ。そこをきちんと対応したらコストがかさむ上に、わずかの日数でそんな特殊な代物を発注できたとは思えない。なんて恐ろしい弁当だ。


 ビデオを見ていたPGO氏曰く、「どうせなら(生石灰を)弁当の中に入れるとか」。
 それは猛毒を摂取するという以前に、口の中で化学反応を起こして白熱し、強アルカリが舌や粘膜を溶かす・・・。この作品がうまさを描く表現として、口から怪光線を出したり、極楽に昇る幻覚をみたりする。しかし石灰弁当を食ったら、本当に口がおかしくなるというものである。


第7巻 お茶漬けにかけるハシ

 「戦場にかける橋」より。箸のことが特に扱われてはいないのだが。


第20話 日本の味・お茶漬け勝負

 味皇引退の噂が味将軍グループによって流された。動揺する味皇グループ。後継者問題を本部メンバーの脳裏に浮かび上がらせ、権力闘争を意識させるとは、味将軍グループもなかなかにくい手を使う。こうした後継者問題を本部メンバーが意識する中、味皇が陽一の進路について尋ね、陽一を将来の味皇料理会を背負って立つことを期待するかのような発言をする。この話を、日本料理部主任の芝裕之が耳にしていた。そこで芝は、陽一に味勝負を挑むのである。


 この芝という男、昔気質の極道みたいで格好いいんだわ。
 この作品で素直に感心したのは、この回くらいかも。
 芝と陽一との勝負内容はお茶漬け。
 陽一は季節をあしらった正統な料理で芝の金目鯛茶漬けに対抗し、めずらしく小細工らしい小細工はみられない。芝は陽一に自ら負けを認めるが、これは芝が陽一が将来味皇の後継たりうる器かどうか確認する勝負であった。どこまでも極道な回であった。


第8話 味っ子まんが祭り 怪獣総進撃

 東映あたりの映画が春や夏に行う、子供向けキャンペーンのパロディ。


第21話 開催料理人グランプリ・フライで勝負
第22話 料理人グランプリ決勝・四天王カレー戦
第23話 激突!超豪華シーフードカレー
第24話 一馬と決闘・ピザパイ勝負
第25話 陽一・一馬の燃える情熱!ピザパイ大決戦


 味皇が引退のデマでゆれるグループの動揺に対して、権威付けをし直し、不安を一掃する意図も兼ねて開いた一大イベント。ここではじめてフランス料理部主任の下仲基之が料理の腕を振るう。1話から出ているのに。


 料理をするのは下仲基之、小西和也、堺一馬、味吉陽一。先に料理を食われた人間が負けるこの作品では、結果がどうなるか見えるというもの。下仲基之、小西和也がシーフードカレーで敗退し、堺一馬、味吉陽一が一騎打ちでピザパイ対決をする。一馬が永田社長に、強引に巨大なレンガ造りオーブンを建てさせたり、陽一が幻覚を見たりと見所はあるのだが、いかんせんひとつの話がこうも長いと飽きてくるというものである。


 ちなみに予選はフライがテーマだったが、陽一はソースのいらないフライを作る。試食した土、いや労働者のとっつぁんは、いつも腐るほどのソースをぶっかけてフライを喰っているため、ソースのないフライに不満である。陽一はそこを気にするのだが、どうせ場末の大衆食堂にいりびたるとっつぁんなんかに、上品な味なんぞわからんのだから、気にする必要などない!などと我々は好き勝手なことをテレビに言い合ったものだった。


 さらにシーフードカレー勝負では、陽一はサザエを使う。
 漁師から焼いたサザエをもらうとき、陽一の幼なじみのみつ子は黒いワタの部分をかじり喰う。参謀長は叫んだ。「あいつクソの部分だけ喰いおって!」サザエのワタが黒いのは、必ずしも内臓だからではなく、本当に排泄物が溜まっているからだそうな・・・。
 しかも陽一は、そのワタの部分だけを切り取り、こともあろうとワタの方を料理に使う。しかもすり鉢でペースト状にして。おぞましいペーストだ。しかもそれをカレーに入れるとは。すばらしい料理である。


第9巻 13日の土曜の丑の日

 「13日の金曜日」なのはいうまでもないが、いい加減ネタが尽きてきたようだ。


第29話 強敵!ミスター鍋っ子登場
第30話 味試し!味っ子対ミスター鍋っ子


 自作の野菜でもって味皇を唸らせた少年・中江兵太。陽一は未だ見ぬ中江に会うことを切望し、福岡までやって来ることとなった。
 中江は田舎で野菜を栽培するだけではなく、鍋物の店もやっている。藁葺きの粗末な鍋物屋には、開店まで何人もの人が並んでおり、しかも予約でも入れておかないと喰わせてもらえないらしい。流行っている店なのはわかった。しかし、彼には家族はいるのか?14歳で店をもって調理して出すとは、凄まじい話だ。描かれていないだけで、店の経営者であり調理師免許を持つ親か親類がいるのであろう。そう解釈しておく。


 そして九州出身の参謀長が怒り狂ったのは、中江の鍋物屋や住居とおぼしき小屋の風景。あるいはその近辺の温泉街。中江の店と家は藁葺き・土壁の粗末なもので、古くボロであった。近隣の温泉街はトタン屋根で壁はむき出しの材木。どこの貧民街だ、こんなところは福岡にはない。この番組は地方をナメとんのかと怒っておった。
 しかも出てくる現地人はうさん臭いコトバを話し(中江は標準語だが)、審査員のジジィはおそるべき奇怪なコトバを話しておった。「うまかっちゃん」とは何者だ。こんなコトバは福岡には、いや九州にはないとのこと。昔出たラーメンの商品名が「うまかっちゃん」であっただけで、福岡人は「うまい」と言うときはただ「うまい」というか、方言でもせいぜい「うまいばい」程度らしい。九州中国四国あたりの方言をすべてぶち込みまくり、中には存在しない言葉も入り交じる。これを作った制作者は、どこの人間で何を考えていたのやら。
 おそらく北海道がこの番組で描かれたら、福岡以上のド田舎として描かれ、今時存在し得ないボロ屋やうさんくさい方言もどきが登場して、私も怒り狂うのだろう。「北海道では、ものを凍らせないために冷蔵庫に入れる」などという寝言は、いまだに耳にすることがある。何十年前の話だか。しかし、このネタが使われる可能性は高いだろうな。


 この話の問題はそんなことではない。この中江という男、今までの料理人とは一線を画しているのである。まったく違った種類の料理人だ。今までの料理人はいい材料をとりよせ、それを工夫によって調理していたが、この中江は自分自身で最高の食材を栽培し、あるいは漁で獲り、その素材を活かすことを主眼にして料理をするのだ。
 設定としてはこんなところなのだが、問題はそんなところではない。今までの料理人は全員どこかしらキ@ガイであったが、この中江兵太、彼はキ@ガイではないのである。そう、彼は電波なのだ。


 食材の野菜や魚介類が絶妙の調和を演じることを称して、中江は言う。
「僕の野菜達の歌が聞こえる」
 この段階で少しおかしいのだが、この程度は詩的な表現として大目に見よう。しかし、台所で食材や調理器具に耳を傾け、「君には聞こえないのか?この歌が」などと言いつつ、空気の振動に依らない、彼の脳内にしか存在し得ない「歌」を聞いているのだ。
 さらに食材選びがうまくいかないとき、苦悩する中江は言う。
「ダメだ!野菜達の歌が聞こえない!」
 だから、そんな音は最初から聞こえないのだ。しかし彼は真剣にそれが聞こえないことに悩み苦しむ。
 そんな中、彼はあるものを見つける。画面には中江主観の視界が写し出されるが、その視界は異常に狭く、歪みさえある。色彩はほとんど薄れ、青っぽい歪んだ狭い世界の中で、中江はイカの影を見出す。そう、彼は足りない食材としたイカを選んだのだが、この視界、覚醒剤でもやっているんじゃないのか?まともな人間のものとは思えない。


 また、中江は、自分自身がおそらくは知人の漁船に乗り込み、前述したイカやあなごなどの食材を獲るのだが、その様もいかれている。暴風雨の中、無理矢理漁師のおっさん方をつきあわせて出漁し、自分はマストに掴まり叫ぶのだ。
「(食材の)何が足りないんだぁぁぁ!教えてくれぇぇぇ!海よぉぉぉぉ!」
 暴風雨の中、マストに掴まっていること事態が、転覆や転落を招きかねない異常行動なのだが、そこで海に向かってそんなわけのわからんことを叫び出す始末。これでは漁師のおっさん方も、逆らえないというものであろう。
 この中江の叫びに応えたかのように、漁船の進む先の海は十戒のごとく割れ、その中から吹き上がる海水の渦が魚介類を巻き上げるのである。そこから中江は自分の求める食材を見出すのである。
「海よぉぉぉ!ありがとぉぉぉぉ!」
 だが、海が割れ、海水が天高く噴き出すようでは、地球はもう終わりだ。中江の主観では、自分がいい食材を選ぶまでのプロセスが、そのように見えたのであろう。おそるべき人物だ。さらには、自分が野菜を引っこ抜くときには、野菜が自ら浮かび上がってくる様をも思い浮かべるらしい。


 こうして中江と陽一は味勝負をするのだが、ここでは珍しく引き分け。
 互いが食材そのものの調和の料理と、食材のポテンシャルを活かす工夫の料理。それぞれのスタイルを認め合って終わるのであった。そして別れ際に中江は言う。今度、東京に行ってみたいと。
 なんということを!藁葺きの家に住み、畑仕事と鍋物が生き甲斐のこの青年、一見ただのドン百姓のように思えるがそれだけではない。野菜や魚介類の歌が聞こえる電波で、それでいて深緑の地に黄緑で「土」の一文字を胸に描いたTシャツを着るという抜群のセンス、東京に来たら迫害されるに決まっている。彼はおとなしく人里離れた田舎で野菜たちとともに生きた方が幸福というものであろう。


第40話 うな丼勝負!黄金のうなぎを求めて

 陽一が包丁を振るう日の出食堂に、いかれた客が来た。その客は大衆食堂である日の出食堂に鰻丼がないことに不満を漏らし、何も注文しないで出ていった。客商売をやっていると、アホぐらいしばしば出くわす。大衆食堂でウナギを要求するようなアホなど無視すればいいものを、陽一はウナギを仕入れようと考える。
 そこでウナギ料理の老舗・鰻浜にウナギを分けてもらうよう頼むのだが、このガキ、そんな簡単に大切なウナギを分けるわけがない。それにしても陽一は、いつも自分の店にない料理を作ろうと試行錯誤するが、その材料の仕入れはどうしているのだろうか?結局、鰻浜の老主人・栄吉に怒鳴りつけられた陽一は、栄吉に認められるウナギ料理を作ると啖呵を切って味勝負に出ることとなった。


 ウナギ探しに、またしても田舎に行く陽一。店の命運がかかった大勝負ならばまだしも、こんなに頻繁に味勝負のために学校サボっていいんだろうか?店を継ぐにしても調理師免許もいるし、中学ぐらいは出ていないとまずいのではなかろうか。
 また、やはり田舎の人々のしゃべるコトバの奇怪さが気になった。北関東のような東北のような謎のコトバをしゃべる村人。私はこんな方言を聞いたことがない。この作品の制作者は、つくづく地方をバカにしておる。北海道を舞台にして、訛りや方言を出したら殺すぞまったく。北海道にはほとんど方言はないのだ。


 そうした田舎でウナギを手に入れ、それを子供や女性向けの鰻丼に仕立てる陽一。大衆食堂だから、家族みんなで食べられるウナギ料理を目指す。その心がけは立派だ。しかし、味の判定人として陽一の料理を喰った親子連れ、陽一の鰻丼を喰ったとたんに母親の首が数回転して痙攣しはじめる。
「お母さん、大丈夫?」
 いや、そんな症状が出るのならば、手遅れではないか・・・。
 「うまい」の表現がますますいかれてきた回であった。


第10巻 太郎・次郎の異常な愛情 又は私達は何故にして心配するのをやめて丼を愛するようになったか

 スタンリー・キューブリックによる、痛烈なアイロニーを込められた映画「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」のパロディであることは一目瞭然。だが、「博士の異常な愛情」はけっこう知らないひとは多いみたいだ。ガキで知っている者はなかなかおるまい。このビデオは子供向けではないということか。


第11話 となりの大トロ・ホタテの墓

 宮崎駿の映画からきているのはわかる。だが、「ホタテの墓」はないだろう。


第31話 回転寿司勝負!のれんの味を守り抜け
第32話 味将軍を打ち破れ


 「土」Tシャツの中江兵太との味勝負の続きで、陽一らはまだ博多にいる。
 そこで味皇と陽一は老舗の寿司屋「初音寿司」にて食事をすることに。
 「初音寿司」!なんてすばらしい店なんだろうか。
参謀長「初音ちゃんが寿司をにぎっているんですね。これは行きたい」
私「いやいや、私はもっと別のことを連想した・・・」
参謀長「『私を食べてね』と」
私「いや、『皿』でしょう」
参謀長「皿まで喰えるとは・・・」
 この番組スタッフも原作者も、こんな会話が為されるとは思ってもみなかったであろう・・・。


 結局、この「初音寿司」を恐れ多くも潰そうとする味将軍グループに対して、味将軍グループから抜けて「初音寿司」で修行している小西が陽一と組んで、回転寿司で勝負することとなる。回転寿司で客が喰った皿数で決着を決めるという、今までの勝負ではもっとも結果が明白な代物。
 今度の敵はデューグ西城とロビン島田。江戸時代のゴルゴ13みたいなデューグと、古の暴走族のごときロビン。彼らはなんと、一言もしゃべらない。無言で寿司を量産し続けるマシーンである。
 当然のことながら、最終的には小西・陽一コンビが勝つのだが、またしても客がブラボーおじさん化して街を闊歩するという天変地異で終わる・・・。


第12巻 戦え!愛食戦隊ウィーン少年料理団

 5人1組で悪と戦う、特撮物を思わせるタイトル。だが、誰と戦うというのだ?親善試合としての味勝負であろう。


第35話 外国からの挑戦状!ウィーン少年料理団

 グランプリで自らの未熟さを認識したフランス料理部主任の下仲は、フランスで修行をし直していた。そして今回帰国したのだが、彼はウィーン少年料理団と称する5人の少年料理人を連れていた。彼らを陽一に紹介する下仲。浅草寺や東京タワーを案内し、親睦を深めていく少年達。だが、私はどうしても納得がいかない。なぜフランスにいた下仲が、ウィーン少年料理団を連れてくるのだ?


 フランスからオーストリアに行くのは、そう難しいことではない。だが、なぜわざわざウィーンの少年達を連れてきたのだ?「私の後輩達だ」と下仲は言った。ウィーンの少年達は、フランス料理を修業していたのだろうか。フランス料理とオーストリアつまりはドイツ料理は、かなり違う代物だ。まあ、フランス料理はヨーロッパでもっとも権威のある料理なので、フランス以外でフランス料理の養成学校があってもおかしくはない。
 ウィーン少年料理団がフランス料理を修業していたとして、なぜフランスにいた下仲が彼らを連れてきたのか?ウィーン少年料理団は、オーストリアからフランスに集団留学でもしていたのだろうか?どんな稚拙な理由でもいい。そのへんのことに少し説明が欲しかった。
 おそらく制作者は、ヨーロッパというものを漠然としか考えていないのであろう。ただウィーン少年合唱団をパロりたいがために、ウィーン少年料理団を作り、そしてヨーロッパにいる下仲に連れてこさせたのだろう。制作者にとっては、フランスもドイツもオーストリアもたいした違いはないということか?


 デザートとしてもオムレツで親善勝負とのことだが、そんなことはこの疑問の前にはどうでもよかった・・・。



第36話 世界最高のお子様ランチ

 ウィーン少年料理団が敗北したことに、師匠のジョルジュ・ムスタキは激怒した。このムスタキの書いた料理教本を、ウィーン少年料理団はドグマとして絶対視していた。おそらくはムスタキは、独善的な指導をしていたことであろう。自分の教えを権威化し、他者にそれを認めさせねば気が済まない人間。そういう人間であるムスタキは、弟子の敗北に対して報復に日本へとやってきた。


 ムスタキと陽一との味勝負は、お子さまランチ。
 陽一と仲がいいジャリ・しげるの誕生日に、それを出すというのだ。
 ここで陽一はお子さまランチという題目に難色を示すのだが、しげるの友達である少女にお願いされて、あっさりと承諾してしまう。14歳にもなって、小学校低学年の少女に心奪われるとは先行き心配なガキである。


 まあ、ここでも陽一は皿や容器の小細工でもって、決定的な勝利条件とする。


第41話 タコ焼き合戦・味将軍と対決だ!

 祭りの出店が立ち並ぶ公道に、トレーラーが乗り込んだ。このトレーラーは味将軍グループの杉本が率いる移動たこ焼き屋で、出店の売り上げを独占しようとするのである。味将軍グループは、寿司屋やレストランを統括する外食産業グループのはずだが、出店潰しとはせこいことを・・・。移動たこ焼きトレーラーとて、購入に2000万ぐらいかかっているはずだ。大した利益率が出ない商売で、減価償却費分の収益を上げられるのかよ。


 陽一は、堺一馬のアドバイスを受けつつも、うまいたこ焼きを作って客を呼び戻すのだが、大衆心理の恐ろしさ。この番組で店対店の勝負をするといつでもそうなるのだが、大衆はまずうまいと評判の店しか見向きもせず、そして陽一のつくる食い物がうまいと知れると、今度は陽一の店になりふり構わず集結する。なんという愚かな連中だ。愚衆とはこのことか・・・。
 杉本はドーピングまでして頑張るのだが、保存性が悪いという弱点をつかれて敗退する。


戻る