トーマス氏、最終号令
2001年12月05日(水)


 今日は、副将トーマス氏(仮名)の最終号令であった。
 稽古は素手技の突きを基本から徹底し、そして後半は組み手。トーマス氏は、後輩や同期の突きを、自らの腹で受け続けた。
 突きの稽古台として腹を貸すのが先輩たる者の姿。これをいい加減にして、投げたり、手で受けたり、払ったりして腹を貸すのを避けてきた先輩は、日常生活でも信用されなかった。
 過去には、後輩の突きを延ばしてやる、全身全霊の突き自分に打ち込ませてやる、という趣旨の約束稽古で、自分が痛い目を見たくないからと、自分を信用して全身で打ち込んできた後輩にカウンター攻撃を喰らわせてきた愚かな先輩もいた。彼は信用されないどころか憎まれ、最終号令のボイコットや慰労飲み会の拒否という憂き目にあった。
 しかし今日、トーマス氏は自らの腹が赤黒く内出血するまで、突きを受け続けた。大した男である。


 トーマスは稽古中、涙していたそうな。
 別に突かれて痛いからではなく、最後の号令という感慨のためであろう。
 かつては軽すぎて笑いながらでも受けられた後輩の突きが、血ヘドを吐くぐらい重く、いやらしく的確に打ち込んでくる様には、感無量であったことであろう。
 ちなみに、トーマス氏が受けて、一番キツかったのは3年のWild氏(仮名)の突きだったそうな。


 この稽古の後、集合写真を撮影。
 人数から部室には入れないと判断され、居酒屋で慰労の飲みが開かれた。
 トーマス氏はこの日帰れず(帰らず)、居酒屋を出た後もどこかのアパートに転がり込んだそうな。


 どうでもいいが、稽古場に現れた狂人。


 さらにどうでもいいが、今日の名言。
「俺の右手が葉っぱに萌える」
 深読み厳禁。別に大した意図はない発言だそうな。


■後年記■
 何度も書いているが、特殊警棒をみだりに携帯することは軽犯罪法に抵触する恐れがある。しかし武器術に従事する棒術部では、武器への興味関心を持つ者が少なくなく、こうした武器を所有する者は何人かいた。深夜の帰宅時に持ち歩く女性部員もいた。だが、特殊警棒は武道具ではなく、護身用具としての携帯にも違法性があるので、みだりに持ち歩くべきではない。
 しかし稽古で遅くなった女性部員が夜間1人で帰宅するときに、犯罪に巻き込まれる危険性を鑑みると、護身用具としての携帯を「みだり」と断じることは私には出来ない。もちろん違法性があり、警察官に咎められる可能性もまた重大な問題であり、抵抗したがためにより事態がわるくなる可能性もある。護身は本当に難しい問題である。
 ちなみに警棒を携帯していた女性部員は、後にプロ格闘家となった程に、身体能力に優れた人物であることを付記しておく。


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