東京を去る日
2002年03月07日(木)


 東京のアパートを引き払う作業は、かなりの吶喊作業で、よくぞ完遂したと自分でも思うほどだ。何はともあれ荷物は搬出し終わり、6日の夜は立川のホテルで寝た。それから退室点検のために、最初から誰も住んでいなかったかのようなアパートの部屋に戻り、退室点検の係を待つ。釧路行きの飛行機の関係で、退室点検は午前11時の約束であった。


 時間は11時を20分は回った。まあ年度末だ。回るところが多くて管理会社も忙しいのだろう。余裕を見て飛行機を取ってあるので、多少遅れても飛行機に間に合わないと言うことはない。そんなとき、私の携帯電話が鳴る。知らない番号なのだが、市外局番から見ておそらく管理会社であろう。電話に出る。
「**さん、おひさしぶり〜」
 名前は多分私の姓を呼んだのだろうけど、よく聞き取れなかった。そしてお久しぶり?一瞬、間違い電話かと思ったよ。ここの管理会社の人とは、ただの一度も会ったことはないし、電話はいままで全て女性だったぞ。つまり、はじめての相手のはずなのだが、お久しぶりとはいかに?まう、営業の人間としては、「久しぶり」と言っておけば、まず間違いないんだろうけど。でも、おひさしぶり〜、はどうかと思います。


「退室点検なんだけどね、11時ということで聞いてましたよね。ちょっと時間かかるんだけど、いいかな?」
 私は確かに学生であるが、5歳か6歳のガキにでも話すかのような口調は気分悪いッス。それはともかくとして、いいかなと聞かれても、いいわけがない。いつ頃ここのアパートにやって来るかと聞いたが、午後1時か2時になると。さすがに2〜3時間も遅れられると、飛行機の時間に間に合わなくなる。第一、どれだけ忙しいのかどうか知らないが、1ヶ月以上前から予約しておいたじゃねえか。いい加減な会社だ。
 私が、飛行機の時間があるので、そんなには待てないと伝えると、「今立て込んでいまして・・・」と返事になっていない返事が。そちらの事情などどうでもよろしい。時間ズラしてくれと言う以上、ヒマなわけがない。
「はい?」
 予想外の返事に、私は聞き返した。


 すると相手はこう言ってきた。
「いや、今ぁ大人の人がたくさん来てて」
 ・・・。ガキが管理会社に来るか!大人以外の誰が会社に来るというんだ!大体私は5歳児か、6歳児か。「立て込んでいる」までならばともかく、忙しいことの説明が「大人の人がたくさん来ている」だと!?私は幼児か!こいつは私を幼児だと思っているのか。
 そこで怒鳴り散らしてもまったく生産性がないので、私はもう行かないとダメだから、鍵を置いて行くこと、私が不在の状態で退室点検をやるよう頼んで、電話を切った。こんな奴が退室点検して、ふっかけられないかどうかが気になるところであります。


 さて、なんとかアパートを後にした私は、聖蹟桜ヶ丘駅からリムジンバスで羽田に直行。引っ越しのとき残った物品が思いの外多く、それらをすべて詰め込んだトランク、旅行カバンは重かった。それをまず最初に航空カウンターの預け荷物に入れてしまい、ノートパソコンだけの身軽な格好になる。
 そしてこの羽田空港に、乗り継ぎの都合でП氏(仮名)が立ち寄っていることを、携帯のメールで知った私は、早速落ち合うことに。


 П氏とロビーの時計の下で待ち合わせ、なんとか顔を合わせるのに成功。
 私よりもП氏の出発便の方がやや時間が早いので、搭乗時間まで茶店で軽食でも食いながらアホな談義をしたものであった。東京を去る日に、乗り継ぎで羽田に立ち寄った後輩と出会すとは、なかなかの偶然である。
 ま、これで死ぬわけではないので、まあ会うこともあろう。卒業式の日には東京に戻る。だけれども、私が東京在住者ではなくなってしまうことを考えると、こうして後輩と話すことも滅多に出来まい。それを考えると、この偶然は貴重な時間であった。 


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