黒猫と邂逅
1996年04月12日(金)


 昨日というか今日というか、0130時に寝たので眠い。しかし、目覚ましが鳴る前に目が覚めた。


 学校へ行く途中、公園の横の民家玄関前に、黒猫が座っていた。近寄っても逃げない。しゃがんで呼び寄せてみたら、短く切ったような声をあげながらゆっくりと歩み寄ってきた。なでてやる。久しぶりの猫の感触。猫禁断症状とかそんなことよりも、俺についてきて車道まで出てきてしまわないか、ということが心配だった。


 信号待ちのとき、食堂で同じテーブルの人が追いついて来た。いつもこんなに早いの、まあね、などということから始まり、高校のことや寝る時間、ポットや定期券について話した。彼の名は山田。他にも親の旧姓がどうしたとか、自分の名前はどこぞの地方に多いとか、そんなことを話してきた。


 眠い。やっぱり眠い。テスト中に、ペン持ったまま意識が途絶えたこと4〜5回。なんとか目を見開く。しかし能率わるい。やはりちゃんと眠らないと。

 寮に帰ってから、棚の縁を触ったらトゲが刺さった。禁制品のライターでカッターを焼いて消毒。少しさましてから、皮を切る。そして、同様に消毒したニッパーでトゲをえぐり出す。何度も失敗してやっと取り出す(注1)。無理矢理とったが、放ってはおけないからね。


 部屋の窓に鳩が飛び込もうとして、網戸に当たった。びっくり。


 放送で呼ばれた。帰寮時間を13時のところ、1時と書いていた。訂正する。
 食堂でイス戻していなくても呼ばれるからな。


 はじめて部屋に寮監が巡回に来た。慣れるまで大変だけど、あせらないでやりなさい、と声をかけられた。標語の紙をきれいに貼っているとも言われた。学校の人もたまに来るらしいから、いつもちゃんとしておけ、とのこと。   


この日のカネの動き

なし

財布残高 21064円


注1・・・
禁制品のライターでカッターを焼いて消毒。少しさましてから、皮を切る。そして、同様に消毒したニッパーでトゲをえぐり出す。何度も失敗してやっと取り出す

 我ながら、なんて野蛮なことをしていたものか。毛抜きがあればもっと簡単だったのだろうけど、他に方法を思いつかなかった。ライターであぶるなどというのは、野外生活ガイドやサバイバル本の読み過ぎ。寮監に言って、毛抜きかとげ抜きを貸してもらった方が賢明だったような気がする。


解説

 正確な日を覚えていないが、そろそろこのあたりから本格的に勉強をしはじめたはずである。といっても、最初は単語帳の暗記しかやることがないのだが。最初の何日かは、寮生活の準備やなんだかんだでさほど勉強していなかった。だけれども、ある日机に向かっていて、このままイスからひっくり返って畳みで寝てしまえば、何て楽なんだろうかということが頭をよぎった。しかし、両国まで来てそれでは、永遠に大学なんて入られない。親戚や知人友人、高校の教師、ありとあらゆる人間になんと見なされるか。そう思い、奥歯噛みしめて机にしがみつくようになったのが4月の何日だったか。この日だったかもしれないし、違うかもしれない。何にせよ、勉強のやり方がわからないとか、やっても成果がでないとかいう以前に、私は机に向かうことさえできない怠惰なガキだったわけである。


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