気合いの入った集団
1996年06月09日(日)
寮の真下の道路を、無言で集団が行進する足音が聞こえた。軍靴の響きのようだ。そして軽い金属音が時々混じる。窓から下を見たら、真っ黒い学生服の集団がほぼ全員傘を持って行進し、何人かはジッポライターでタバコを吸う。やはりジッポの音だったか。なんというか、別に並んで歩いているわけではないのだが、歩調はほぼ完全に揃っている。しかも一言も話さない。だからこそ、凄みを感じた。雨上がりということもあり、全員が右手で傘の中程を握って歩いていた。その格好は、まるで日本刀を持っているかのようであった。
今時珍しい、あんな気合いの入った集団は(注1)。やはり学生服は軍服だ。
誰かに電話を掛けたくなった。誰に?姉にかけるも、いない。日曜だ。昼飯食いがてら、買い物にでも行っているのだろう。迷惑だろうなと思いつつ、札幌の■■君の学生会館へ。いない。札幌の**予備校は日曜もやっているのか?いや、単に出掛けているだけか。同じ会館の奴の部屋にいるのかもしれんし。それとも寝ている?電話はいつでも、相手が何をしていても、一方的に掛けるしかない。まあつながらなくてよかったのかも。
大いなる野望。定期の自動継続で、名前を「アヤナミレイ14才」と入れるのだ!あとは申込用紙に「獅堂光」と書いたら通るかな。「光」は男の名前としてもありえるし(注2)。
この日のカネの動き
水 -200
財布残高 9420円
注1・・・
今時珍しい、あんな気合いの入った集団は
当時の私は、その集団を硬派なツッパリ高校生と思いこんでいたが、今考えたら大学の応援団かもしれない。
注2・・・
定期の自動継続で、名前を「アヤナミレイ14才」と入れるのだ!あとは申込用紙に「獅堂光」と書いたら通るかな。「光」は男の名前としてもありえるし
これはやがて、実行に移すのであった。ちなみに両国は学校法人ではないので、定期は通勤定期であった。だから現金さえ出せば、どんな名前でも購入できたのである。
解説
寮では親しい友人も作らず、多少口を利く人間はいても会話を楽しむことはあまりなかった。本来話好きで、友人との会話に生き甲斐を覚える私は、やはり親しい人間とたまには話したくなったのだろう。
当時携帯電話は、ビジネスマン以外にはあまり普及していない時代であった。公衆電話から加入電話へとかけたのだが、まったくつかまらなかった。まあ、繋がらなくてよかったのかもしれない。一度電話の快楽を覚えたら、ヒマさえあれば外出時間いっぱい電話するようになっていたかもしれないから。