水道橋のダフ屋を見る
1996年07月20日(土)


 昨日、水道橋でダフ屋の山を見た。早い話がヤー公だろう。100%そうとは言えないだろうけれども。一目でまっとうな連中じゃないとわかった。「余りない、余りない」の声や、左手に持った千円札と入場券の束だけのせいだろうか。グラサンもいたし、メガネ(ただのプラスティックの黒やチタン)もいた。恰好は黒ずくめのスーツもいたし、普通の背広もいたかな?GパンTシャツみたいなラフなのが多かった。連中は必ずしもヤー公とは言えないが、ヤー公がそんな俺の目指すような極道ファッションをしているとは限らないということだ。裏を返せば、黒ずくめで決めたりアロハにしなくても、「やくざ風」にはできるというわけだ。

 今日は寝まくった。自発的に。午後6時近くまで。5分の4は寝ていた。メガネをはずしたり、横になったり、最初から寝るつもりで寝ている。ここで根性入れ直せ!まあ最低限のノルマはこなしてはいるが。特段やることがない(そんなことはない)とこのザマか?

 30分の外出で教員採用試験の本を手に取った。何じゃあこれは。数学、物理……。理系の能力がいるのか?まあ公務員についてもそうだから別に構わないが、選択科目ではないのか?

 夜、8時少し前、避難訓練。外は薄暗い。防塵ゴーグル、防塵マスクもポケットに入り、スイスアーミーナイフも持っている。これこそが非常時の心得だ。でもタオル持ってない。

 寮母さんが巡回のとき、「冷房嫌い?」と。いえ、別に。「楽をしたら寝てしまうので」と答えたが、俺は別に何とも思っていない。これが当然と感じている。本日の天候は曇りがちで、そんなに暑くなかったが。

 一時帰国まであと何日だっけ?17日か。別にどうでもいいや。ところで帰ったらどうする?もちろんワープロやテレビには一切触れない。『エヴァ』のLDにも。たまっている書も何も見ない。それはいいとして、どこで勉強する?俺の部屋、暑くて勉強できない……わけはないな。東京でクーラーをつけてないぐにいだもの。しかし(ガラス越しではあるが)直射日光を頭に浴びるのはまずい。でも、何とかする。
 自分の足を触ってみた。こんなにたくましかったけか?やはり毎日6階まで階段で鍛えられているな。毎日歩こう(チャリは使わず。手を折ったらやばい)、ついでにジュースも間食もなしだ。

 宮村氏、千歳から電車(厳密な電気鉄道なぞ存在しないが)で6時間。稚内行は午前のみ。本州人らは「どういう世界よ」と。スケールが違うぜ。田山氏、千歳で降りて車で40分、と。井上氏、「車で40分なら歩いて帰れるのでは」と。感覚違うよ。市街地抜けたら信号がない(この段階ですでに驚愕)。広い道で車は100km/hは出す。なまじこっちの高速道路の方が遅いぐらいだ。

 そろそろ寝るか。明日は池袋に行ってみようかな。錦糸町には綾波のテレホンカードもうなかったし。別にいいけれど。カネ残っているか?毎日2,000円だ。200×17=3,400円、白山⇒羽田空港はわからん。どうかな。医者代を補填すれば、それに25日はincome日だ。


この日のカネの動き

なし

財布残高 4,829


解説
 今日では情報通信技術の進歩によって衰退しつつあるダフ屋だが、当時は水道橋の東京ドーム周辺には相当な数がひしめいていた。それがどういう素性の人間なのか、いわゆる「やくざ」としてひとくくりにしていいのかはわからないが、しかし田舎から上京してきて4か月程度の若者の目には都会の風景として新鮮に映り、そしてテレビや漫画でしかみたことのないやくざなのかという興味をも喚起された。安藤昇組長の自伝や宮下あきらの漫画の影響で、どうも古式ゆかしき極道(というかそのファッション)に関心があった私は、実物(なのかどうかはしらんが)がどんな外見なのか興味深く見ていたらしい。

 また、高校入学以来ろくに勉強をしておらず、授業についていくことも出来なくなり、追いつこうとしても思っても何をしていいのかもわからない3年間を過ごした私が、予備校生活においてようやく物事を理解し、授業に積極的に参加することができた。そうした学びを得た喜びから自分自身も教師になろうかと少し考えたのもこの時期である。実際問題として教育学部を選んだわけでもなく、教職を取ったわけでもないのだが、当時は少し「大学の次」の進路として教師に関心を持って、教員採用試験の問題なんか見てみたのである。もちろんまったく学んでも習ってもいない試験の問題がわかるはずもないのだが、予備校でも触れていない数学や理科に関する問題が目に入っておののいているのが見て取れる。もし教採や公務員試験を受けることにしても一から勉強すればいいのではあるが、しかし学部においてそうした機会を設けることもなく、高校で数学や理科を捨てて予備校でも学部でも触れなかったことは、後の人生においても大なり小なりついて回ることになる。


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