「間違えた」のだから大した上達ぶりだ
1996年08月03日(土)


 今日も飲みもの買った。例によって腹具合悪い、と。ホットを買う。その後、さらに喉が渇き、冷水を飲むと腹が痛み出した。やはり飲み物は買う必要があるのか。

 模試、なんとも。現文、簡単なのに、記述の1問、わかっていながら、設問を解釈できなかった。古文、わけわかんねー。でも、67ぐらいか?古文は現文みたいに読めなくともある程度いけるし、そんなやっかいな文なら設問もそれなりだ。英、読めた。わかった。間違えた。「間違えた」のだから大した上達ぶりだ。でも45かよ。わかってて落としたものが多いな。

 模試の最中、あの傍若無人なKN氏、先生に何かを注意され、無声音だが教室の端まで聞こえそうな声で「うるっせえんだよ」と。また、何度舌打ちするわ、何か言っておるわ。何を言われたのか知らん。もしかしたら先生が何か間違っていたのかもしれん。だから何だ?感情をぶちまけやがって。世界は自分のためか。それ以前に、なんでそんなに腹が立つ?どんなバカ親に好き放題にさせられたのか、一応予備校に来るぐらいだから、ガキの頃は天才と呼ばれていた口で、それでちやほやされて、自分に反するものは許せねえってか?やっぱりこいつ、社会のクソだわ。両国駅のホームから霧にりやがれ!UH氏は最近見かけないが(根性ねーな)、WD氏はちゃんと来ている。そして注意されたらちゃんと「すいません」って。内心ではどうかは知らないが、彼の方がよっぽどできている。三重から来ているだけはあるよ。

 帰って洗濯、早くも満杯。半自動(?)を使う。布井氏にやっとスイスアーミー見せられた。6,000円と聞いて驚いていた。そりゃ俺だって6,000円は痛いけれど、その価値はあるんだぜ。彼も高校の時、小遣い1万円(定期券別)。
 彼は北陸大学以外すべてE判定だったそうで。うーむ。勉強、もっと気迫で勝負しようぜ。でも、まだCあるんか。北陸Cなら、道医療とかB行くかもな。
 岩淵氏来る。水漏れ全自動に洗濯もの入れる。布井氏「男の下着みてもうれしくない」、岩淵氏「俺だって見せてんじゃねーよ」とのこと。岩淵氏は衣類を裏返して選択していた。布井氏「おばあちゃんの知恵袋だ」と。

 荷造りした。衣類、学用品で結構になるな。

 明日池袋行く。アニメイト、ミリタリ、新宿書店。ミリタリは行ったことも見たこともない。でも、目には入っているはずだ。何度か前を通っているはずだよ。しかし時間あるかな3軒も。
 帰るとき、AM08:00に出て、AM11:00までどうする?AM11:00からは店も開く。勉強がいちばんだけれども、どこで?うーむ。そしてAM11:00にどうする?池袋でやり残し、あるならそれでもいい。ゲームはしない!たるむし。やらないと決めた。さらにポスターは別ね。

 
 林君、マンガ没収されること幾度か。寮監室のダンボール、きっとそうだな。その上にも積んであった。『黒髪のキャプチュウド』『プリンセス』……多少名のある漫画はあらかた買っているんじゃないのか、あの人は。
 岩淵氏によれば、林君はいつでもマンガ読んでいるという。笑い声が聞こえてくる。それをごまかそうとパイプイスを鳴らす。わかるっつの、とのこと。しかも、机の引き出しを開けたり閉めたり。それもごまかしか。それとも瞬間的にマンガを隠しているのか。
 見つかるわな。数十冊も。隠し場所変えたってさ。隠すっても押し入れぐらいしかないじゃんか。要領もわるいんだな。麻見氏など、ディスクマンを洗濯物の山の中に潜ませているし、ほかの連中もうまくやっているのだろう。まあ、ブツがあっても享受するそんなヒマそうそうないけれどもね。

模試のとき小耳にはさんだ。TS氏、世史やめた、と。彼、世史の授業さぼっていても、模試じゃ必ず上位。それならばよろしい。国立でもう一教科要るのか?なんにせよ、あのクソKNりような逃げじゃないことは確かだ。そして彼は帰らんで、友人のところに泊まり、河合にもぐりで出ているという。もぐりはどうでもいいが、友人のところに泊まる、ね。もうそんなことが出来るのか。自立して生活しているんだもんな(カネのことはともかく)。いろいろと義務や責任が絡んできたな。高校が人生で一番自由だったかも。別に高校に戻りたいとかこれからが嫌というつもりは毛頭ない。客観的事実として。


この日のカネの動き

のみもの 16茶 -103
水 -200

財布残高 9,204円


解説
 英語の問題について「間違えた」ことについて上達していると述べているあたり、高校時代の私がいかに出来なかったのか(勉強を怠っていたのか)がよくわかる。「間違える」というのは文章の解釈を誤ったり、設問の意図を錯誤したり、文法や語彙についての知識が曖昧で解答について迷ったり、ある程度出来ていないとできないことだ。私はそもそも、英文がアルファベットの羅列にしか見えず(稀に知っている単語がピンポイントで現れるが文章の類推さえできないほど疎ら)、設問で何を問われているのか理解できず、語彙も文法も知識がなく、解答について自信がなく曖昧以前に白紙以外提出のしようがなかった(3択4択など選択式以外何も書けなかった)。それから見ると大した上達ぶりだ。

 「傍若無人なKN氏」は、確か、以前も先生に些細な注意をされて大声で先生に罵声を浴びせたことがある人物だ。別に、この小規模な予備校の中でのみ通用するルールは道徳でも社会規範でもないし、破ったからといって人倫に悖るわけでも犯罪でもないが、そこにいる以上、ある程度はそこの在り方に従っているふりぐらいしないと、暮らしが大変困難になる。それに自分から勉強して大学に行きたいと思って入った予備校だ。奇怪なルールを自らを律する補助として活用する心構えもなく、かといって少なくないダレた連中(上でいうUH氏やWD氏など)のように適当にごまかし先生には適当に調子のいいことを言いつつサボるのでもない。ただ感情の高ぶりをそのまま口にしてもよいことは一つもない。
 UH氏やWD氏らは、外見的にはいわゆる不良少年からチンピラに近く、他方でKN氏は外見的には真面目でおとなしそうに見えた。そこからひり出した想像をしているが、KN氏がどういう経歴の人間かはわからないし、些細な注意に対して怒りをむき出しにするような人間性がどのようにしてできたのかは知らない。しかし日記で記述されている想像は、田舎の発想だ。大学は、田舎の上位数パーセントの秀才しか行かないという発想が当時の私にはあり、そして田舎においてはそれはそんなに的外れな発想でもなかった。だが、都会においては、そんなガキの頃から秀才、優等生として誉れ高くなくても、物理的距離や経済的負担の面での圧倒的な軽さ(田舎よりは遥かに)のため、高校の延長のように気軽に進学したりすることを当時の私は想像できていなかった。

 高校時代の月の小遣い1万円は、少なくとも自分の周囲では破格の金額で、多くの同級生が2,000〜3,000円しかもらっていなかったり、5,000円貰っている人間が責められたりしている環境では、言い出せなかった。その点、とても恵まれていた。こんなカネのかかる予備校に行かせてもらえたりも、東京のカネのかかる私立大学にも、さらには大学院にも進学できたのは、もちろん地元では相当に恵まれていたからだ。だが、周囲から突出して恵まれているということは、そうではない大多数の人間のやっかみを買い、恵まれていることがまるで罪、犯罪であるかのように語られがちで、恵まれた境遇のみを根拠にして知性に欠け人格に劣るかのようにさえ言われる危険があることを、私は18年間ですでに学んでいた。だから高校時代には小遣いの額を隠した。だが、両国に来ると都会出身のやつは定期代別で同額を貰っており、心強く思ったものであった。

 林君は、見るからにアニメ・マンガが好きそうな人物で、実際に部屋に大量のマンガを持ち込んでは没収されていた。マンガも富士見書房など比較的マニア向けのものを好んでいたらしく、それについて他の寮生からは不審がられていた(私としては自分からみると奇異にみえる娯楽を享受するからといって異常者扱いする姿勢には不快感を覚えていたが、特に反論はしなかった。面倒なので)。そんな彼も安からぬカネを出して購入したマンガ類を大量に没収されては古紙回収に出されつつも、最後まで予備校と寮とに居続け、それなりによいところに進学した。もともと出来たのか、短時間で成果を上げる要領がよかったのか、両方なのか。どちらにせよ私にはマネのできない所業だった。


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