「ナイフない?」
1996年11月01日(金)
11月らしい。時の流れはいつでも一定。速いとも遅いとも、思わない。やっぱ4月の入寮時は昔だよ。昨日のようには思えない。時間が速いとは思えない。ただ確実に1日1日が過ぎるだけだ。
今日(も)古文、寝続けてた。しかも額を机にぶつける。情けねえよ。気合いと努力とが足らんのだ。KG先生の授業では完璧だろうに。
帰って、気合いを入れ、背筋を伸ばしてやってみた。眠くない。しかもはかどる。なんというか、充実。ここちよい。やはり遊びの類をやるとたるむ。やらないで勉強に直行する方がいい。本は寝る前のこの時間に。
父、19日に来るらしい。最近は家族のことも特別どうとも思わなかったが……いや、来た時からそうだ。まあ特別な考えなどそうそう起きないか。とにかく面会だ。
姉の誕生日はポラロイドカメラがプレゼントらしい。前々から言っていたもんな。どう使うんだろえ?まあいいけれど。
山田氏帰寮、これでよし。これでこそ83寮だ。でも、まだ足りんぞ何名か。
明日はいよいよ防医の入試。曰く、受かるまい、ということらしい。まあどんなにできても各県2人じゃあな。田山氏、高村氏、金城氏の3名がトライ。受からんと思うし、受かったら喜ばしいが、となりが空室になるのは寂しいな。2月、3月と空室が次々と増えて、この生活の終わりつつあるのを感じるとき、どう思って暮らしているのかな。
五十嵐氏、缶切り返却。俺の方も忘れかけていた。ナイフない?と来たので、パジャマ(上着だけ)をめくってナイフケースのボタンをはじくと、「そういうのじゃなくて」と。果物ナイフか。持っていない。見ちゃいけないものを見たようなことを言っていたな、彼は。しかし、なぜ謝るのだ?
高校の同じ浪人中の■■君に、おきて破りの一通を書いてみるか。一通だけだ。
この日のカネの動き
なし
財布残高 8,264円
解説
「時の流れは速い」「昨日のようだ」という慣用表現を嫌い、速くも遅くもなく特に何も感じていないことを示している。当時は巷間で言われるような実感がないということを殊更に示そうとする人間だった。そして親との再会についても特段感情が起きないことも。夏休みに会ったばかりだし、まだまだ若く元気でそう死にそうなわけでもなく、東京にこれから住んでも大して遠くもない親なので、そんなに心が動く理由もなかったのだろう。それは心の動きとして事実であるかもしれないが、殊更に言い立てると冷血漢になってしまう。日記にとどめたかどうかは心配である。
禁制品の本については、隠れて読むのが当たり前になってしまい、それが勉強を妨げていた。まず帰ったら初手で勉強をし、それからひと通り終えてからやったら時間はムダにならないし集中も途切れなくてよい。それはその通りである。志望校群であるMARCHに入れそうな気がしてきて、どうも危機感が薄れてきているようだ。
山田氏とはいろいろと摩擦があり、これからも一層摩擦があるのだが、しかし帰寮については素直に歓迎している。少なくともそのように書いている。