1週間の帰省はもう現実ではない
1997年01月05日(日)


 ここは寮だ。1週間の帰省はもう現実ではない。目の前には釧路も実家もない。しかし、この寮生活も連続していいと感じる。100年も前から、気がついたときにはここにいた、とは思えない。今日の午前中は家にいたが、すでに現実ではない。事実ではあるが。だが、午前中、寮にいなかったのも事実。そして、寮にいなかったことを身で感じられる。これも現実らしい。身体がまだ寮に落ち着いていないという現実。リアリティってのは、今現在の身体が感じることか。

 『レイアース』のバインダーが日記さ!どうして、こんなすばらしいことを今まで思いつかなかったのか。これなら、人に見られることも、堂々といい年して学校に持っていくこともない。そして日記は俺自身の痕跡だ。見ているだけで胸に染み入る『レイアース』と俺との融合だ!なんとすばらしいんだ!ルーズリーフも『レイアース』のがよいが、あったかな。そして、まだあるかな。放送終了して9か月以上。あったら買いまくるぜ!
 日記も落ち着いて書けないなあ。せめてワープロがあればいいが、それじゃあ『レイアース』のルーズリーフが使えない。この2か月で何ページ書く?ともかく、ワープロがあれば、思いついたことをそのまま書く一発勝負はしなくて済むし、FDやMOで金庫に保管できるし、大変便利だ。だからこそワープロは思考に関わる。文章の書き方も変わるだろうな。
 これからの一か月と少しが勝負。日記もあまり多くは書かない。1日の全てを書く必要はないし、その余裕もない。2週間勉強しなかったから、ここから勉強をし直すのは気合いと意地で引っ張らにゃあなるまい。やれよ!俺はやる。ここでたるめば、日大も國學院もダメだ。ここが意地の見せどころだ!気合いを入れようぜ。

 今日の飛行機はA320だった。エアバスはパイロットよりコンピューターを優先させるし、内装も安いので好きじゃない。
 釧路空港も画期的になったものだ。駐車場から空港の建物までガラスの通路が続く。搭乗通路もガラス。ガラスが多い!見晴らしはよかろうが、何かあったらガラスは刺さるぞ。テロや爆発事故があったら大変だ。くぐる金属探知機で引っかかったら、手持ちの金属探知機を使っていた。ずいぶん気の利いたものを!

 姉に電話したら2コールでわけのわからん機械音。FAXのコンセント抜いていない!とにかく電話をしまくり、姉を呼び寄せ、やっとつながった。そしてコンセントを抜くよう頼む。電話してよかった。

 ブラジルのSWATに相当する舞台はとにかく撃つので凶悪犯は恐れる。また広大な国土を軍警がカバーできるはずなどなく、市民が自分で身を守るしかない。警察もそのように勧める。ここではself defenceが当然のことだ。高校の■■先生のいうような「警官を増やせばいい」「銃はやはり規制しなければならない」など通用しない。正義はひとつではない。そして理想や感情に終始せず、実をとらねばならない。先生こそ「人が決めること」で自分を決め、それを普遍的な正義と思い込んでいる偏った人間だ。あとで必ずこの反撃をする。去年は「受験生にそんなヒマはない」「落ちたバカの遠吠え」と思われそうでできなかった。まあ、曲がりなりにもぶつかり合えてよかった。

 PM11:54。ねむくもない。もどると身体ももどるものだ!少し書こう。
 ふとんの中で銭を数え、14,396円とわかる!なんと!うち10,950円を非常用に。また靴下に入れて、いざというときのためのブラックジャックにするが、前のより軽いような……。邪魔な1円や使い勝手の悪い50円を排除し、500円と100円、そして95枚の10円からなる。それなりの重さだ。あと1,000円札をどこかに隠して、約2万円分の非常備蓄とする。

 アニメイト池袋、ひどく混んでいたが慣れているぜ。女の子も多い。もしかしたら女の子の方が多いかも。『サクラ大戦』のテレカを見て、この脚がいいとか言ってる女の子も。なるほど。

 早大の社学ちょろまかして35,000円着服しようすな。これはひどい罪悪だぞ。でも35,000円足せば、プレステ(orサターン)もNEO-GEO CDのソフトも護身具もちったあ買える。でも悪だ。もうねる。


この日のカネの動き

交通 モノレール 羽田→浜松町
交通 JR 浜松町→池袋
小計-710

交通 JR 池袋→巣鴨 -120

アニメイト レイアース・バインダー×2 -2,000
アニメイト エヴァ・透明ポスター -1,500
小計税込み3,605

交通 地下鉄 巣鴨→白山 -170

飲料 ビタミン飲料 -126
食糧 弁当(中華) -580
小計税込み-727

財布残高 29,396円


解説
 インフルエンザで1週間、正月の帰省で1週間の合計2週間ほとんど勉強をしていなかったことになる。日記が書かれていないので帰省中の過ごし方はわからないが、ゲームは一切しなかったことだけは覚えている。しかし勉強をしたわけでもなさそうである。4月からここまでかけて培ったものも、ここでカンを取り戻して調子を上げていかないとムダになるとして鼓舞している。國學院と日大は、実際に受けた「すべりどめ」に匹敵する大学だったので、このときはもう受験大学とその日程をほぼ確定していたのだろう。早稲田の社学を受けたことにして出願自体せずにカネをちょろまかそうと悪事を考えていることから、まだ出願が完了したわけではない。

 日記は基本的にごく平凡なバインダーにルーズリーフを挿して使っていたのだが、この日からはじまる最後の1冊だけはアニメグッズを使用している。それまでは、鉄の規律で持ち込み禁止物が多い両国では許されていないのではないかという懸念もあり、いい年(というほどいい年ではないが、アニメは子供のものという意識がまだあったのだろう)アニメグッズを実用に供することへの抵抗、人に見られたくないという心配もあり、アニメグッズは買っても使うことは乏しかった(『エヴァ』の比較的地味なクリアファイルぐらいだろう。寮の巡回に見られた代物)。
 しかしここにきて、腹が据わってきたというか、何が許され何が許されないのか見極めたというか、もう時間が少ないと割り切ったのか、『レイアース』のバインダーを使い始めるのである。アニメグッズのバインダーとルーズリーフとを使うだけで多幸感にひたっているのだから、意味のあることではあった。

 エアバスについて持っていた抵抗感は、1994年の名古屋空港墜落事故に際して報じられた事故原因の断片の聞きかじりについての粗雑な認識であり、もちろんそんな単純な話ではない。しかししばらくの間、エアバスに妙な抵抗感があった。内装についてはボーイングの同等機にもそんなに乗った回数があるわけでもなく、単なる印象のような気がする。

 唐突にブラジルの話がはじまるのは、帰省中に読んだ本に載っていた話なのだろう。高校時代の先生に対しては、多くのことで論争になったが、銃規制もそのひとつ。「反撃」というか、様々な時事問題に関する手紙やメールのやり取りはその後も何年かは先生とは続いた。意見の違う(あるいは自分の意見を受け入れない)生徒に対して、話の内容の是非ではなく、相手の知性と人格の欠陥に話を帰結させる傾向が強い人物で、それに反発もしていたが、しかし卒業しても尚、元生徒と往復書簡に付き合ってくださるとはよい先生だったのだと思う。 


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