last up date 2003.04.07
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ソ連製兵器の輸出版の蔑称。ソ連は同盟諸国、あるいは第三世界に広く兵器を輸出・供与していた。しかし、輸出された兵器はソ連国内に配備される兵器と外見は同一でも、電装品・アビオニクス・エンジンなどの性能が1〜2ランク低くされていることがあった。その目的は、輸出相手国から兵器の性能が西側に漏れることを恐れたため、と言われている。
しかし例えば、新型戦闘機の機体に旧式のエンジンや簡素な電装品を載せることは、簡単なようで設計のし直しや試験生産、実験運用などに相当な手間がかかる。西側でもそのような「簡易版」の発想がなかったわけではないが、そこまでして輸出版と国内版を区別してはいない。むしろ手間を掛けずに、米国で使用していた中古兵器を払い下げるか、あるいは供与・輸出専用兵器を新規に開発して提供してきた。米国では、最新兵器の開発も輸出用簡易兵器の開発も(少なくとも名目上は)企業同士が競争して行い、米軍による最新兵器の採用も同盟国供与用に簡易兵器が買い上げられることも、どちらも企業の収益となる。しかしソ連の国営設計局では、そのような供与専用の廉価兵器を開発することは政治的な敗北となり、二度と最新兵器の開発に参加出来なくなる恐れがあった。そのために、ソ連の兵器設計局は新鋭兵器の開発に携わりながらも、同時に廉価兵器を作るしか方法はなかったと言える。そのため、わざわざ同一の機体に異なる装備を施すような風習が生まれたという側面もある。
もっともこうした輸出版兵器は、第二線部隊を中心に本国のソ連軍にも配備され、一種のハイ・ロー・ミックスとして数を揃えるのに役立った。こうした簡易版は整備・維持管理・訓練が楽だとして、部隊からはそう不評ではなかったと言われている。
参考文献
・江畑謙介 「ロシア 迷走する技術帝国」 NTT出版 1995年