last up date 2005.06.25


地方分権(ちほうぶんけん・現代日本)
 現在の日本に於いては、中央政府に権限が集中している。その為、市民にとって最も身近な行政機関である地方自治体の権限は小さく、市民のニーズに応えるのが難しいという問題がある。それに対して、地方分権を図る議論がある。


 地方分権に際して最も大きな障害となっているのは、地方の慢性的な財政赤字である。地方独自の税収は歳入の3割程度に過ぎず、残り7割は中央政府からの交付金・補助金によってまかなわれている。補助金は国によって使途が定められており、地方自治体の手に委ねられるはずの交付金も事実上補助金化している。こうした現状では、地方自治体は中央政府からの介入を避けられない。これが「3割自治」と揶揄される所以である。
 そのため、地方分権を進める上では、地方の赤字体質・補助金依存体質の解消が大きなテーマとなる。赤字解消の為に、市町村合併の促進によって設備・人員の効率化を図って、地方財政の建て直そうとする時限立法が今年(2005年)まで実施されていた。しかし運営の効率化は赤字の解消にまでは至らない。


 抜本的な赤字の解消の為には、中央政府が掌握している財源を地方に移譲すべきとする議論もある。確かに、地方が歳入を完全に独自の税収でまかなえるようになれば、地方自治体は中央政府からの介入を最小限に減らし、より地域住民の要求に応えるようなサービスを提供することが出来るようになるかもしれない。しかしこれには大きな問題がある。それは地方自治体の財政創出能力の低さだ。中央銀行と郵便貯金資金を擁し国債の発行と償還を大胆に行える中央政府と異なり、地方債は一部有力地域を除けば投資の対象にならない。そのため財源を地方に移譲しても、地方自治体が債券を発行して大規模な事業を行うことは難しい。
 やはり財源は中央政府が掌握している方が効率的な資金調達が行えるのである。したがって、地方分権を図るに当たっては財源の委譲を行うことは有効ではない。補助金・交付金といった中央から地方への資金援助は維持し、その援助に対する介入の度合いを漸進的に減らしていくことこそが、地方分権の有効な方法である。


 ただしこの方法にも問題がある。原子力発電所や放射性物質処理・貯蔵施設、米軍基地といった、国の政策上不可欠ではあるが忌避される施設を、どこに設置するかという問題だ。今までは高額な交付金によって、地方へのこれらの施設の受け入れを甘受させていた。しかし交付金・補助金に伴う国の介入が排除されると、これら施設の建設地探しが不可能になるおそれがある。地方分権に際して、公共政策としての必要性と立地地域との兼ね合いには、課題が残る。


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