last up date 2002.12.03


媚薬(びやく)
(1)性欲を増進させる、あるいは性的行動を起こさせる薬。少なくとも2002年7月現在の時点では、自然科学に於いては実在しない。この言葉は、魔術的思考の産物とさえ言える。このような代物があると本気で思っている者は、知性を疑われる。
 麻薬や覚醒剤、香水、キノコ、あるいは酒にある薬品を混ぜたものなどが、しばしば「媚薬」として認識され、そのように扱われるが、これらのものは媚薬では断じてない。このようなものを服用した結果、性的欲求が増進されたり、異常性欲がわき起こったり、普段行わないような性行動をとったりする事例はあるらしいが、そうした効能は不安定であり、たまたま起こった結果に過ぎない。


 薬品というものは、一定の条件に於いて必ず同一の結果を出さなければ、効果として認められない。意識が混濁したり、神経が高ぶったりした結果として性的行動に走るなどというものは、薬品の効果ではなく、個々人のもともとの精神状態・身体状態に依存して起こる結果に過ぎない。
 神経を鋭敏にする薬で「媚薬」の効果があると言われているもの(例えば、覚醒剤の一種・メタンフェタミンと安息香酸ナトリウムカフェインの混合物)を同一人物に同量投与したとして、その都度必ず性欲が増進するとも、性的行動を起こすとも限らない。最初から性的目的のために薬を使う、という意志・意欲があって投与しているのであれば高い確率で性的行動に走るだろうけれども、その意志・意欲がある段階で特別な精神状態と言える。また、同じ薬を100人に投与したところで、全員あるいはそれに近い人数が性欲を増進させ、性的行動に走るわけではない。覚醒剤を打った人間が必ずその場で劣情をたぎらせ、性的行為を行っているというのは、まずありえない。神経が鋭敏になったり、興奮したりしただけで、人間の誰もが性的意欲を強く持ち、そして性的行動を行うなどという発想は、いかにナンセンスか。
 たまたまある結果が起きたときに、次も同じ結果が起きるだろう、起きて当然と都合良く思い込むことこそが魔術的思考である。だからこそ、媚薬という発想そのものが魔術的発想なのである。


 さらに言えば、粗製ドラッグやキノコ、酒に何かを混ぜたようなものなど、不純物が多く、成分もその量も一定ではない代物など論外。そうした代物は、性的欲求どころか、先週やったら快楽を得たが、今日やったら心機能が低下し、嘔吐し続けて死に至った、などということも十分あり得る。下心に支えられた魔術的思考のもとにあやしげなものを服用し、あるいは服用させて、死に至る至らしめるなどというのは、あまりにも人間として粗末な終焉である。



(2)恋愛感情を起こさせるほれ薬。もちろん実在しない。(1)よりはいくらかロマンティックではあるが、どれぐらいの差異があるのかはやや疑問である。


戻る