last up date 2006.05.11


行政責任(ぎょうせいせきにん)
 行政責任とは、行政府ないしその構成員たる行政官が、国民が求める価値に応ずる契約上の責任である。行政責任には自律的責任と他律的責任の2つがあり、前者は行政官個人あるいは行政府内部の自己規律であり、後者は外部からの統制である。行政国家化の進展によって自律的責任が強調されるようになったが、最終的に行政責任を保証するのは外部からの民主的統制による。


 外部からの統制方法は、制度的統制と非制度的統制に分けられる。


 制度的統制は第一に、裁判所による司法的統制である。司法によって行政の合法性と合憲性が問われる。しかし時間と費用がかかり、事後の問題に対する救済に終始する欠点がある。第二には、議会による統制がある。議会は法の制定、予算の議決などの権限によって行政府を統制する。日本のような議院内閣制の下で首相の選任権と内閣不信任権を持つ議会は、議員質問、委員会審理、国政調査権によって行政府を監督できる。しかし行政府が予算や法案の大部分を作成している為、この統制機能は必ずしも決定的なものにはならない。第三には、行政府内部の統制がある。しかし、内部者による監査はしばしば徹底を欠く問題がある。


 一方で、非制度的統制としては、市民と専門的職業機関による統制である。市民参加の試みとしては、苦情処理機関や審議会の設置、住民投票や市民集会の実施が挙げられる。また、専門化する行政事案に対応する為、専門的な研修機関と独自の公的資格の発行を行う専門機関による統制も必要とされている。一般市民の中にも行政府に対抗する知識を得て、専門性の為に従来は追求されにくかった問題を指摘するカウンタースペシャリストが育っている。そして、議会職員による行政監察、あるいはそれを発展させた行政救済を目的としたオンブズマンが多くの国で設置されている。こうした市民の声を吸収して行政に反映させる仕組みを拡充することが、司法・立法による制度的統制の限界を補完し、行政責任を明確化して追求する為に必要である。


参考文献
「新訂版現代政治学事典」 ブレーン出版 1998年
「政治学事典」 弘文堂 2004年


戻る