last up date 2005.05.03


政治変動(せいじへんどう)
 政治変動とは、権力の担い手が交代しその結果社会構造が変化することである。特に劇的な政治変動としては、クーデターと革命が代表的なものとして挙げられる。途上国では特にクーデターが起きやすく、一方先進国では急激な政治変動そのものが起きにくい。それは何故か。政治変動が起きやすい途上国の問題と、起きにくい先進国の問題と共に、検証する。


 まず現代に於ける政治変動は、途上国ほど起きやすい。何故ならば、途上国に於いては軍人が最も管理能力を発達させ暴力をも掌握している為、政権の奪取が容易だからである。そして途上国の大衆は概して教育が低く、価値観の多様性も情報の取捨選択能力も乏しい為、支配するのが容易だからである。かくして途上国に於いてはクーデターがしばしば起き、そして軍事政権が成立する。しかし何故革命ではなくクーデターなのか。それは途上国が低開発状態にある為である。すなわち、大衆が求める生活水準の向上を実現する能力を持つのは、革命家ではなく軍人だからだ。軍事政権は開発独裁の体裁を取り、外国から支援を取り付け、開発主義に邁進することによって国民からの支持を得られる。
 ただし軍事政権の問題点としては、合法的な政権交代の制度を持たず暴力によって政権の維持を図る傾向にある為、再びクーデターによって打倒されやすい点がある。


 一方で先進国では、革命やクーデターを起こすのは容易ではない。その要因としては、社会の複雑さと教育水準の高さが挙げられる。工業化が進んだ先進国に於いては労働力が集約されて都市化が進み、一方で労働力を吸収された農村人口は過疎化が進行する。この都市化は価値観の多様化をもたらす。つまり、大多数の大衆が均しく搾取に不満を持つ途上国とは異なり、先進国では革命勢力が大衆を糾合する正統性を掲げることが難しい。また、教育水準の高度化と多様な情報の取捨選択は、革命勢力の扇動をドグマとして盲信するのを防いでいる。そして多くの官僚・企業家が高度な管理能力を発達させて社会を維持している為、もし革命やクーデターで権力者が交代しても、官庁や圧力団体を支配して政権運営することが難しい。このため、先進国では革命・クーデターは発生し難く、もし発生したとしても成功率は低いのである。
 ただし先進国の政治変動の乏しさにも問題点はある。それは高度な行政機構が非人間的な合理化を指向する点と、こうした大規模組織の頂点に立つ指導者があまりにも強大な権限を握ってしまう点である。これが何をもたらすかと言えば、大衆は疎外された人間性の回復を求めて体制変革を求めるが、革命のような急激な政治変動は不可能である以上、大衆は自らの心理に訴えかける強力な指導者に現状変革を期待するようになる。こうした大衆の心理は、条件次第ではファシズムの温床となってしまう危険性がある。


 これらが途上国と先進国に於けるそれぞれの政治変動と、それに纏わる問題点である


参考文献
阿部斉 「概説現代政治の理論」 東京大学出版会 1991年
「新訂版現代政治学事典」 ブレーン出版 1998年


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