last up date 2006.05.11


政党とデモクラシーの関係(せいとうとでもくらしーのかんけい)
 政党とは、選挙を通して政治権力の獲得と維持を目的とした集団であり、社会の利害を政治に反映させる役割を果たしている。社会の利害を政治過程に取り込む政党機能は、次の4つに分けられる。


 第1に、共通する利益を集約すること。個々人が孤立して生活する大衆社会に於いては、デモクラシーの中で集団となって利害をまとめることが出来るのは圧力団体に限られており、そうした労働組合や業界団体の利益を代弁する機能を政党は帯びている。
 第2に、集約した集団の中から政治的指導者を選出すること。つまり大統領や首相、閣僚といったポストを、政党内の選挙や力関係によって割り振る役割を持つ。デモクラシーを通して獲得した政治権力を、効率よく配分する機能と言い換えることも出来る。
 第3に、政治に関する情報を市民に伝えて、世論に影響を与えること。つまり問題意識を市民に伝達して、問題意識を社会に浸透させる役割を持つ。大衆社会に於いては宣伝が有権者の投票行動を左右するので、争点を単純化して支持を集める機能が不可欠である。
 そして第4に、政策決定スタッフを組織化すること。内閣や大統領府を組織し、圧力団体からインプットされた利益を政策としてアウトプットさせる機能を持つ。デモクラシーによって得られた権力を、支持者の価値に応える形態で執行する機能と言い換えてもよい。


 これらの機能によって、政党はデモクラシーに於いて効率的な政治過程を実現している。しかしこうした機能の有効性を決定するのは政党の数と競争の可能性を規定する制度である。サルトーリによれば政党制は7つに分けられる。1つ目は、ただ一党の存在しか認められない一党制。2つ目は、他の党の存在は認められるが、支配政党との競争は許されないヘゲモニー政党制。両者は競争なき一党独裁であり、特定層の利益の反映に政治過程が固定化されてしまう。つまり社会の多様な要求をインプットすることが出来ず、社会の問題を解決できず腐敗する。その為、デモクラシーによる競争が政党機能の健全化の為には重要である。


 3つ目は、合法的な競争の結果、一党が支配的位置を占める一党優位政党制。4つ目は、政権奪取の可能性を持つ二大政党が競争する二党制。5つ目は、イデオロギー距離の小さな3〜5の政党が競争する限定的多党制。この3つは、競争的な要求のインプットが行われて、安定した政権運営の下で強力なアウトプットが為される。しかし問題としては、政権交代が為されても(一党優位政党制の場合は、優位党内で別の派が優勢になっても)、ドラスティックな政策の転換は起きず、有力な圧力団体が政治への影響力を固定化させてしまう点にある。


 6つ目は、政党数が6〜8と多く、そのイデオロギー距離も遠い分極的多党制。政党は幅広い連立でしか政権を担えず、強力な政策の遂行が出来ない。つまり、強力な圧力団体が固定化されて利害構造が固定化されるのを防ぐ反面、意見を糾合する為にナショナリズムに走りやすい性質を持つと言える。そして7つ目は原子化政党制。有力な政党が存在せず、小政党が乱立する状況である。この状況に於いては政党は社会の利益を集約する役割を果たせず、政権は極度に不安定となり有効な政策を打ち出せない。


 社会の多様な利害を政策に取り込む為にはデモクラシーによる多党間の競争が不可欠である。しかし無党派層の極端な増大は政党を乱立させ、政権を不安定化し、社会問題を政治に反映させることを阻害するばかりか、尖鋭的なナショナリズムを台頭させることにも繋がる。それを防ぐ意味に於いて、政党の集約機能と圧力団体はデモクラシーにとって重要な位置を占めると論ずることが出来る。


参考文献
「新訂版現代政治学事典」 ブレーン出版 1998年
「政治学事典」 弘文堂 2004年
阿部斉 「概説現代政治の理論」 東京大学出版会 1991年


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