last up date 2005.06.25


従属論(じゅうぞくろん)
 従属論とは、従来の先進国同士の権力論的な国際関係観から抜け出し、先進国と途上国との経済的関係から国際関係を捉え直し、また、従来の近代化論から抜け出して途上国の経済成長方法を探る理論である。


 途上国の低開発が先進国に於いて問題視されはじめたのは1960年代。この当時先進国に於いては、経済発展は単線的に為されるというロストゥのモデルが受け入れられていた。従属論はこのロストゥの近代化論への批判から始まる。
 ロストゥは如何なる社会も5つ段階を踏んで発展すると述べた。(1)生産性の低い農業中心の伝統的社会が最初にあり、(2)農工業が技術革新によって発達して「離陸」の為の準備が為され、(3)資本が蓄積され、伝統的価値や絶対王政のような成長の阻害要因が排除されて新産業が爆発的に広まる「離陸」を迎え、(4)近代的技術が普及すると共に古い産業が淘汰される成熟期に移行し、(5)産業構造が変革したことによって国民所得が高まり高度大衆消費社会へと至る、5段階論である。


 これに対してプレビッシュは初期従属論を展開して批判する。彼は世界を中枢と周辺とに分かち、中枢に従属させられている周辺には、ロストゥの近代化論は適用されないと説いた。何故ならば周辺は、国際分業によって前近代的な農業社会に固定化されて国際社会に組み込まれているからだ。ここに於いてプレビッシュは、諸国家が各々の得意分野に特化すれば各国は最も安価に輸出を行えるので利益を得られるとする、リカードの国際分業相互利益論をも否定している。つまり、国際分業こそが周辺を農業・鉱業に特化させて工業化を阻んでいるのである。
 そして周辺がその位置から脱する為の処方箋としてプレビッシュは、周辺が外資導入によって工業化を果たして中枢からの輸入に替わる製品を生産することを挙げた。これは内発的開発とも言えるが、資本移動の結果途上国の国際収支は悪化し、社会にはより深く多国籍企業が浸透し、天然資源は収奪され生産力は搾取されて、結局貧困がより広がる結果に終わった。


 この従属論を発達させたのが新従属論である。これは以下の4派に分かれる。(1)社会主義革命によって、中枢からの周辺の断絶を説くアミンの急進派論。(2)対外債務や所得格差の進展を国家が押し止めつつ、教育や所得の再配分を進めて内発的開発を促すカルドーゾの改革派論。(3)中枢国と周辺国をさらに国内で中枢と周辺に分かち、中枢国の中枢部がODAなどで周辺国の中枢部を周辺国支配の橋頭堡としていると分析し、この構造性の打破を目指すガルトゥングの構造的暴力論。(4)中枢−半周辺−周辺と世界を3つに分かち、中枢の確立と衰退が景気変動によって繰り返されると分析したウォーラシュテインの世界システム論。
 これらの新従属論は、従属関係解消後の社会の在り方として、一国内あるいは世界的な社会主義の到来を期待していた点が問題として見出せる。しかしロストゥ的な近代化論ではなく中枢と周辺とに世界を分けてその構造を精緻に分析し、リアリズム理論に変わる国際関係観を提供したことは評価される。


参考文献
進藤栄一 「現代国際関係学―歴史・思想・理論」 有斐閣 2001年


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