last up date 2003.02.20


失火ノ責任ニ関スル法律(しっかのせきにんにたいするほうりつ)
 民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限リニ在ラス

明治32年3月2日 法律40号



 自宅が火災を起こして隣近所の家に燃え移ってしまった場合に、その家屋や財産を賠償しなくてもよい、とする法律。通称「失火法」あるいは「失火責任法」。民法709条では、故意または過失によって受けた損害は加害者に損害賠償を請求できるのだが、失火に限ってその責を免除するのがこの法律である。木造住宅が密集している日本では延焼が広がりやすく、個人の賠償能力をはるかに超えてしまいやすいことから、この法律が作られたとされる。逆を言えば、隣人が火災を起こして自分の家が焼けたり、消火活動で水浸しになったりしても、火災を起こした隣人に賠償してもらえないということである。それを考えると火災保険は重要と言える。
 ただ、火災の原因が意図的に火を放った故意の場合は言うに及ばず、「重過失」が認められる場合にはその限りではない。例えば、天ぷら油をガスにかけたまま便所に行った、石油ストーブを付けっぱなしで外出した、火気の近くで揮発性物質を使った、寝たばこなどに「重過失」が認められた判例がある。そうした「重過失」による火災では、隣近所の延焼に対しても賠償責任を負うこととなる。


 また、勘違いが多いのは集合住宅や借家の賠償責任。この「失火ノ責任ニ関スル法律」では、「軽過失」のため火災が起きた場合、隣室の財産や近隣の家屋やその中の財産について賠償する責任はない。しかし、家屋賃貸借契約による家主に対する責任は生じる。
 民法400条によって借家人には借りた部屋や家屋を十分に注意して管理する責任があり、契約終了後はこれを家主に原状回復して返還する責任がある。アパートやマンション、借家を燃やしてしまったら、この管理責任を果たさなかったことになり、民法415条による債務不履行に基づく損害賠償を家主は借家人に請求することができる。
 つまり、隣室や隣人の財産や隣近所の家屋を賠償する責任はないが、借りた家や借りたアパート・マンションに対しては賠償責任を負うこととなる。集合住宅の場合、自分の借りた部屋の分だけ請求される場合もあるが、失火者に延焼部分すべての責任を認めている判例もある。要注意である。
 火を出さないのは当然のことながら、いかなる住居であれ保険に入った方が安心ではある。


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