last up date 2005.06.25


相互依存論(そうごいぞんろん)
 国家同士は自己の生存の為に常に対立し合うとするリアリズム理論への批判として、国家同士は国境を越えたヒト・モノ・カネ・情報の流れに依存して経済活動を行い、その為安易に戦端を開けないとする相互依存論が登場した。


 相互依存論の萌芽は、第二次大戦前後に於いてミトラニーによって提唱された機能主義論に見出せる。機能主義論とは、複数の国家に跨る諸国民がその利害関係によって機能別に組織化されれば、互いに分離出来なくなって平和に向かうとする理論である。つまり経済的社会的な国家間の交流が増大すればするほど、国家同士は脅迫し合うのではなく共に経済活動を行うことを指向し、平和に向かうということだ。
 このミトラニーの機能主義論は不戦共同体の設立を促した。不戦共同体とは、戦争に必要な物資や産業を複数国家が共同管理して、戦争を物理的に不可能にするものである。具体的には、長年に渡って対立し第二次大戦では徹底的に荒廃したフランスとドイツが中心となり、軍需物資である石炭と鉄鋼を共同管理する欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が1951年に設立された。


 そして機能主義論は、1機能分野に於ける統合が進めば他の機能の統合をも促し、より高次の政治的軍事的統合に結びつくとする新機能主義論へと発展を見せる。この新機能主義論を証明するかのように、石炭と鉄鋼から始まった欧州経済の部分的統合は、よく多くの分野を巻き込んで政治的統合をも目指すようになった。
 これらの機能主義論は、戦後の経済復興と貿易・資本移動の拡大という文脈に於いて、相互依存論へと脱皮する。つまり少数の国の機能主義論的な統合を超越した、世界そのもののヒト・モノ・カネ・情報の国境を越えた流れが拡大し、諸国家はその流れから莫大な経済的利得を得るようになっており、もはや軍事力を行使しても、得るものよりも失うものの方が大きくなった、ということである。国際関係そのものが、武力で脅迫し合うものから、相互に依存しながら経済的利得を追求する様態に変化したとも言える。


 そして相互依存論は、複合的相互依存とレジームの2つの概念を軸に、リアリズム理論に代替するに値する枠組みを得る。複合的相互依存とは、国家と国家の軍事力を中心に世界を見るリアリズム理論へのアンチテーゼであり、次の3点からなる。(1)国際関係のアクターを主権国家に限定せず、多国籍企業やNGOなどのトランスナショナルな非国家的アクターに広げる。(2)国家の政策手段を軍事力だけに限定せず、国家の持つ問題領域ごとに対応した資源に着目する。(3)そうした資源を用いる政策課題は、政治的軍事的状況が優先されるのではなく、各問題領域が複合的に絡み合って決定される。この3点が、相互依存論の、リアリズム理論との違いを際だたせている。そしてここで言うレジームとは、従来の軍事力に依る威嚇と支配から成り立つ国際関係ではなく、ヒト・モノ・カネ・情報の流れに諸国家が相互依存する国際関係を維持する為に、国家間が取り決める仕組みのことである。


 しかし未だ全世界を統一的に律するレジームは存在せず、有力な国家・国家群がレジームを創設しては変容することを繰り返している。ここに於いては軍事力も、レジームを創設する背景として、あるいはレジームを設立する目的そのものとして意味を持ち続けている。だが相互依存論は、リアリズム理論から脱して国家と非国家主体と、そして巨大なヒト・モノ・カネ・情報の流れからなる世界を見る視座を与えた点に於いて、評価できる。


参考文献
進藤栄一 「現代国際関係学―歴史・思想・理論」 有斐閣 2001年


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