last up date 2006.05.11


第二院(だいにいん)
 議会の二院制は英国に起源を発し、第一院である庶民院とそれに協力する第二院の貴族院から成り立っていた。貴族院は、多数の国民から選出される庶民院に対する歯止めの機能を期待されており、この身分制的な二院制は大日本帝国などの国々で採り入れられた。しかしこのような階級的な不信感に基づく二院制は、現代ではほとんど意味を持たない。封建的階級制度の崩壊と大衆社会の到来に至って、第二院の存在理由が問われている。


 現代に於いて第二院の機能は次のものが期待されている。まず、政党の寡頭化による強権化への抑制機能。次に、第一院とは異なる選挙方法によって第二院の議員を選出し、多様な国民の声をより広く採り入れる機能。そして、法案・予算の技術的な欠陥を指摘・修正するチェック機能などである。
 しかしこれらは単一国家に於いて二院制が存在する有力な理由とは言えず、第二院が第一院の決定を覆す権限を有している場合、立法過程の遅滞をもたらすデメリットは大きい。その為単一国家の中には、二院制を廃して一院制に統合しているケースもある。


 一方で連邦国家の場合は、二院制は別の意味を持つ。つまり二院制は連邦構成主体を代表する機能を持つのである。州の代表者からなるアメリカの上院は下院に優越する権限を持ち、州の利益を擁護する機能を果たしている。一方で、ロシア連邦に於ける第二院に当たる連邦議会は連邦構成主体の代表者からなるが、第一院の国家議会の権限の方が強い。このように連邦国家に於いてはその権限の強さには差違があるが、連邦を構成する主体をまとめあげる為に第二院は必要不可欠な機能を果たしている。


 このように第二院の存在理由は、連邦国家に於いては明確であるが、単一国家に於いては疑問の余地がある。単一国家の第二院は、その機能の第一院に対する独自性を明確に打ち出す必要がある。


参考文献
内田満・内山秀夫・河中二講・武者小路公秀編 「現代政治学の基礎知識」 有斐閣 1975年


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