last up date 2006.05.11


多元主義とポリアーキー(たげんしゅぎとぽりあーきー)
 多元主義とは権力や権威の中心が1つではなく、複数ある状態が公益に繋がるとするアメリカ民主主義の基本的な思想である。代議制に於ける政権交代可能な多党制の下で、複数の圧力団体の競争が特定利害の突出を防ぎ、広く社会の要求を政治過程にインプットできるとしている。
 アメリカ民主主義は古くから、多数者の専制に大して少数者の権利を確保するマディソン主義と、人民の意思を平等に政治に反映させる人民主義を理想としていた。しかしそうした理想だけではアメリカ民主主義の特質を分析することは出来ず、圧力団体同士の競争が政治過程を形作るとするベントレーの集団理論によって、多元主義の視点が採り入れられた。そして多元主義の度合いを測る概念として、ポリアーキーが登場する。
 ポリアーキーとはダールによって考案された概念であり、現実の民主体制で最も多元主義を実現しているものを指す。体制がどれほどポリアーキーに近いかは、反対派意見への許容度を示す公的異議申し立てと、政治参加の包括性の2つの軸によって決められる。公的異議申し立ては具体的には野党などの批判勢力の成立が容易かどうか、包括性は多くの人々が選挙で投票ないし公職へ立候補することが容易かどうかを示す。
 公的異議申し立てが制限され、包括性の度合いが弱ければ、閉鎖的抑圧体制となる。これは選挙の自由も表現の自由も乏しい専制体制と言える。次に公的異議申し立てが自由で、包括性の度合いが弱ければ、競争的寡頭体制となる。これはある程度表現や結社の自由はあるが、政治参加の条件が厳しい権威主義体制に近い。そして公的異議申し立てが制限され、包括性の度合いが強ければ、包括的抑圧体制となる。これは国民の幅広い支持によって唯一のイデオロギーに基づいた政治を行う、ファシズムが挙げられる。最後に、公的異議申し立てが自由で、包括性の度合いが強ければ、多元的な民主体制としてのポリアーキーに近づくとされる。
 これは前述の通り、アメリカ民主主義を理解するための理論那であったが、民主体制一般を理解する概念として広く用いられている。


参考文献
「新訂版現代政治学事典」 ブレーン出版 1998年
「政治学事典」 弘文堂 2004年


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