last up date 2003.04.01


ドクツルタケ

(神奈川県立生命の星・地球博物館にて撮影)

 日本に生えるものとしては最も強烈な毒成分を持つ毒キノコ。学名はAmanita virosa。
 危険な毒キノコの条件はいくつかある。まずは第一に、毒成分が強力なことは言うまでもない。次に、毒々しく見えないこと。逆に言えばうまそうに見えること。第三に、自生数が多く分布が広く、採取しやすいこと。そして、毒キノコにまつわるステレオタイプに当てはまらないこと(毒キノコは赤いとか黄色いとか、傘が裂けない茎が縦に裂けないとか)。ドクツルタケは、この4つの条件すべてに当てはまる。
 ドクツルタケの毒成分は強烈で、長くても半日の潜伏の後に激しい下痢・嘔吐を繰り返して脱水症状となり、中枢神経が冒されて痙攣をおこし、やがて昏睡して意識不明になる。3日以内の死亡率は70%と言われ、助かっても肝臓や腎臓に障害が残る可能性もある。そしてドクツルタケは真っ白な光沢のあるキノコであり、傘もきれいな円形に開く。平凡である。まったく毒々しさがない。さらにドクツルタケは、日本のいたるところに生えている。ちょっとした雑木林に入っただけでも見ることが出来る。誤って、あるいは知らずに採取される可能性は高い。そして、赤くも黄色くもないし、平凡なキノコなので傘も茎もきれいに裂ける。
 そのため、日本で毒キノコ中毒死する事例の過半数は、ドクツルタケによるものとされている。キノコ採りに行ったり、あるいは素人から山で採ったというキノコをもらったりしたときには、このキノコがあるかどうか注意しなければならない。


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