last up date 2006.05.12

途上国の外交政策(とじょうこくのがいこうせいさく)
 途上国の外交政策に於いて重要なことは、先進国による国際レジームから利益を得ることであり、先進国から開発支援を招くことである。冷戦期に於いて途上国は、米ソいずれかの陣営に参加して開発援助を受け、特にアジアやラテンアメリカでは親米政権が開発独裁を展開した。そして冷戦後に於いては、途上国はグローバル化する市場レジームに参加し、一方でODAによって開発援助を取り付けることが重要になっている。特に、アメリカを中心とした市場開放と民主主義を至上価値とするレジームに合わせて、途上国は諸制度を変革することが外交政策上の課題となっている。
 ウォーラシュテインによれば、世界システムには中心があり、中心に対して周辺と半周辺が存在する。冷戦期に於いては世界は米ソを中心とした多極システムであり、冷戦後はアメリカを中心とした覇極システムとなっている。そして中心は多極と覇極が循環し、周辺と半周辺はそのサイクルに合わせて中心に従属する。このモデルで周辺とされる途上国は、半周辺へのシステム内での地位向上を目指して中心たる極に従属するのである。


 冷戦期に於ける開発独裁国家の中では、韓国、台湾、シンガポールが工業化を果たして半周辺への昇格を果たした。これは途上国にとって模範的な成功例となり、これを目指して多くの途上国がアメリカからの資本を取り付ける為に親米色を強めた。例えば、独立から一貫して中立姿勢を取っていたインドネシアの親米化にそれが現れている。しかし後発途上国の多くは、先発途上国の安価な工業製品によって市場を席巻され、債務が累積する一方で利潤を出せず、結局周辺に固定化されてしまった。
 そして冷戦後に於いても、やはり世界システムに積極的に参加して、半周辺へ向上することが途上国の外交政策で重要な位置を占める。タイとマレーシアは半周辺への飛躍過程にあると言えるが、それは両国が投資環境整備の為に資本市場の改革を押し進め、民主主義の整備をし、投資とODAを呼び込んだ為である。しかしこうした動きに追随するさらに後発の途上国は、市場開放の為に自国産業が育たず、強権体制の民主化によって抑圧されていた諸勢力の暴発を招き、却って経済と社会を不安定化させている現実がある。


 このように、途上国にとっては極たる中心国の求める価値を採り入れることが外交政策上重要であり、必要ならば国内制度を改革してその価値に応えることが必要である。しかしこうした極への従属が一方の途上国を開発し、一方の途上国を貧困に押しとどめしまう陥穽が指摘される。


参考文献
進藤栄一 「現代国際関係学―歴史・思想・理論」 有斐閣 2001年


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