last up date 2002.12.05


陶片追放(とうへんついほう)
(1)古代アテネに於いて行われた、追放制度。陶器のかけらに危険人物の名を記し、有効投票数が6000票以上の場合には最多得票者を10年間国外追放するというもの。本来の目的は、市民の不満を煽り立てて利用し非合法的に政権を握る独裁者、いわゆる「僭主」の出現防止のため。しかしこの制度は本来の目的を失い、悪用されるようになる。実績を挙げた者が嫉妬により投票され、政争で相手を陥れるために誹謗が煽り立てて宣伝され、多くの優秀な人間や市民のために尽力した人間が追放されるに至った。英語では「ostracism」。動詞は「ostracize」。



(2)人間社会はどうしても優秀な人間、努力する人間、責務を果たす人間が、多数者よりも重責を抱えて困難に当たり、多数者を支える構造になってしまう。そこに於いては、献身的な自己犠牲と努力によって多数者を支えている少数者は、必ずしも適正に評価されない。そうした少数者が権限を独占して社会や組織の在り方を壟断している、多数者の仕事を奪っている、不当に評価を得て出世している、という批判は常に為される。しかしそれは往々にしてオルタナティブなき無責任な不満の表明にすぎない。また、少数者の努力の上にあぐらをかいてフリーライドしている者を少数者が批判したものならば、大変な逆恨みを買うことにもなりかねない。
 しかしフリーライドする者も能力に欠ける者も発言することは出来、投票が為される場合は投票権も持っている。しかもこうした人間は多数派である。優秀な人間が、嫉妬や反感、逆恨みを持たれ、あるいは自己の不遇や利益権限の喪失の元凶と見なされたために、ヒステリックな非難をされて叩かれたり、不利益をこおむるよう仕組まれることはままある。これを称して、アテネの例になぞらえて稀にこの語が用いられる。 


戻る