last up date 2003.04.02


ワライタケ症状(わらいたけしょうじょう)
 ワライタケ、シビレタケ、オオワライタケなどの毒キノコを誤食すると起こる中毒症状のこと。神経を興奮させるシロシビン、シロシンなどの成分による。これらの成分は合成麻薬のLSDに近く、異常興奮や酩酊、幻覚を引き起こす。摂取すれば必ず大笑いするなどというのはオカルト的発想に過ぎないが、摂取した人が突如として泣いたり笑ったり怒り出したり踊ったり暴れたりと狂態を尽くす蓋然性は高い。古くは宗教儀式にも用いられた。


 あたかも酒を飲んで酩酊したような状態に陥ることから、好んで摂取しようという者は後を絶たない。近年は「脱法麻薬」(脱法とは取り締まる法はないが、違法性が強いという意。現在はすでに非合法)として、このような幻覚成分を含有したキノコが密売されている。
 しかし、ワライタケ症状は決して深酒とは異なる。酒つまりエタノールは基本的に麻酔である。暴れたり叫んだり笑ったりするから酒は興奮剤の類との思いこみもあるが、それは脳が部分的に麻痺して起こる現象である。小便が近くなるのは抗利尿機能が麻痺するためであり、利尿作用が刺激されたからではない。一方でシロシビン、シロシンといった興奮作用の持つ成分を摂取したものならば、中枢神経や循環器がダイレクトに刺激されるため体組織の興奮は急激であり強烈である。そのため神経や循環器にダメージを受けやすく、直接的間接的な結果として痙攣・昏睡・呼吸不全・心不全を引き起こしやすい。酒よりも格段に危険な物質なのである。


 ワライタケ症状は、量や体調によっては二日酔い程度のダメージしか残らない場合もあるが、キノコは工業製品ではない。毒成分の量は一定ではなく、同じ目方のキノコを摂取しても、必ずいつでも同じ結果になるとは限らない。そのため、「合法ドラッグ」と称して毒キノコを摂取することは大変なリスクがあると言える。前回はバカ騒ぎしただけで何事もなく朝を迎えたからといって、次に摂取したときも無事でいられるとは限らないのである。
 ワライタケ症状が、おもしろおかしいものやユーモラスなものと考えている人は、シロシビン、シロシンがいかに危険な物質か認識しておいた方がいいだろう。 


戻る