last up date 2006.05.12


родина(女性名詞・ロージナ)
(1)祖国、故国。あるいは郷里、生まれ故郷。



(2)何故か日本国内においてのみ流布する、T-34中戦車の「愛称」。インターネットのロシア語検索でもロシア語の軍事関連書でも、この「愛称」について言及された文書には、筆者も知人のロシア語関係者らも出会したことはない。しかし日本の軍事趣味書には根拠が明記されぬままに、この「愛称」が当然のように書かれている。
 なぜこのような言説が流布するようになったかは定かではないが、1975年にバンダイが発売したプラモデルが「T-34/76ロジーナ」と名付けられたせいかもしれない(「ロジーナ」がродинаのことかどうかは不明だが)。型式番号だけでは子供受けしないので、バンダイが「愛称」をつけたのだろうか。これが日本において「T-34=ロージナ」という図式が生まれる起源なのかもしれない。あるいは、WWII中のT-34の写真にしばしば描かれている「За Родину(ザ・ロージヌゥ。祖国のために)」といった類の兵隊が好んだフレーズを、T-34の愛称と勘違いしたのかもしれない。
 何にせよ、「ロージナ」がソ連で広く親しまれた愛称だったことを示す証拠は、まったく見あたらない。T-34乗員の回想録からロシア語軍隊スラング辞典に至るまで、この「愛称」に触れた記述は皆無である。もちろん兵士がT-34をそう呼ばなかったと証明することは不可能だが、「愛称」がアクセスできる限りのロシア語書籍からまったく見つけられないことを鑑みると、この「愛称」が広く普及していたと考えるには無理がある。したがって、「T-34=ロージナ」という説は、日本において何らかの誤解から始まり、広く信じられるに至ったと考えるのが妥当なようである。


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