「ハカギ・ロワイヤル」1〜2巻
同人誌
LeafとKeyが制作したギャルゲーのキャラが、小説「バトルロワイヤル」のごとく孤島で殺し合う様を描いた同人小説。大学時代の後輩に、こうした書が売り出されているということを聞き、即座に2冊購入してしまった。だが、秋葉原から帰宅してページを開いたときにはじめて、これがどこかの一個人が時間をかけて書き上げたものではなく、ネットで展開された不特定多数参加のリレー小説を編纂したものだということを知った。最初からこれがネットのリレー小説だと知っていたら買わなかったに違いない。不特定多数によるネット小説ともなると、どんな支離滅裂なものになるか。
それでも書籍を購入した以上は読んでみた。書いている人によっては冗長にすぎたり、あるいは簡潔すぎて「あらすじ」の数歩手前だったりもし、文体や語尾に統一性がなくてとっつきにくかったが、それでも私は読みふけって、数日で読み終えてしまった。まあやはり、好きなゲームのキャラクターが登場し、しかも武器を持って殺し合うという特殊状況がかくも展開されていくと、目が離せなくなる。文字を読むことそのものの多くのパートではあまりなかったが(原作小説でもそうした喜びは全く覚えなかったが)、ストーリー展開が気になる。これは二次創作であることの強みと、誰もが考えつつもなかなか実現しないこうした企画への期待ゆえのことだろう。特に、「東鳩」の藤田浩之ほど原作の人となり(それを正にcharacterと言うのだが)が再現され、しかも殺し合いという状況で笑える奴はいなかった。彼の登場で一気に私はのめり込んでいったと言える。
ただ、使われているゲームの全てをやったわけでもなく、やったゲームとてあらゆるシナリオをクリアしたわけでも詳細な設定を知っているわけでもない私にとっては、知らないゲームのキャラや知っているキャラの知らない設定が描かれていると読むのに手間取った。当然の前提があるというのは、心理描写を掘り下げね上でも小ネタを織り交ぜる場合でも大変便利であり、人物についての説明もほとんど要らない。だが、知らなければそれまでである。だから、知らないことを前提に描かれたものごとをどう解釈するか、というのには少々苦労したのは否めない。登場作品すべてを制覇してから読んだ方が楽しめるのは確かである。
そして、不特定多数による受け持ち順さえ決められていないリレー小説であるが故に、先の展開がまったく予想できない。前に設定された武器や仕掛けが、後の記述で簡単に台無しにされたり、なんてことない描写に次の人が重視して前面に押し出されたり・・・。そして100人参加の大ゲームであり、常に登場人物たちはあちこちにてごく少人数で動き回っている。シーンはコマギレになって次々と別の人々の営みに切り替わるが、そうでなければリレー小説としては行き詰まったかもしれない。別々の人間が同一シーンに対する続きを描いてしまう重複を繰り返して。そして別々の人間がそれぞれのキャラクターを追い続けていたからこそ、どのキャラに対しても勢いや気合いのある記述を続けられたとも言える。1人の作家が100人の登場人物を同時に考えていたら、こうはいかなかっただろう。もっとも、書き手が多数でもキャラの人気によって登場頻度に幅があるように思えたし、すぐ殺される奴がいる反面なかなか死なない奴がいたりもしたけれども。
この「ハカギ・ロワイヤル」は2巻ではまだ完結していない。この先どうなるのかはまったくわからない。ストーリーも出版についても。しかし私は3巻が出たらやはり買うことだろう。多分2度は読まないとは思う。しかし次が気になることは確かである。