さすがにメガネ作成せな
2003年06月02日(月)


 先日、「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」のDVDをレンタルして観たときのこと。作品の画像は随分とキレイで、3万そこらと言えどもフルフラットTVでそれを観たら映える。だが、なにか光がちらつく。あり得ないノイズがかかっている気がしてならなかった。メガネが汚れているのだと思ってはずして、光に透かしたみたところ、これまた随分とレンズが傷だらけではないか。




 画像をあまり重くしたくなかったのでJPEGの圧縮率が高く、わかりにくいかもしれない。レンズに縦に横に斜めに大小の傷が無数に走っている。しかも斑点状のものがレンズ一面にこびり付いているように見えた。汚れかと思って、メガネ用界面活性剤をかけて念入りに拭いてみても、まったく取れない。つまり、これは汚れではなく、傷なのである。あるいは、レンズのコーティングが剥離した痕なのか。いずれにせよ、こんなレンズでは光がまともに目に届かないのは当然。今まで何で気づかなかったのか。
 このメガネは、1998年の夏に作ったものである。海に行って、波で当時かけていたメガネが流された。そのかわりにと作ったのが、この金縁メガネである。もう5年近くもこのメガネをかけているわけか。大学時代の武道の稽古でも、このメガネをかけて参加した。風呂に入るときも、私はメガネをかける。でなければ、足下も何もまったく見えない。砂嵐吹きすさぶユタ州の砂漠にも行った。そのときは、砂がついたメガネをちり紙で拭いたはずだ。酔っぱらって正体をなくしたことも、この5年間で1度や2度ではない。落としたことだって何度かはあるだろう。まあ、傷だらけになっても不思議ではない。
 何にせよ、こんなにも傷だらけのメガネをかけているのは、目の健康によいはずがない。乱視が進行する原因になる。また、せっかく目にする景色や映像がレンズの傷ごときで情報が欠落して伝わってくるなどというのは、もったいない。ただでさえ飛蚊症で余計なものが見えているというのに、レンズの傷の乱反射なんかあったら、たまったものではない。とにかく、これはメガネを作り直すしかあるまい。どのみち、今年免許の更新である。いずれはメガネを作り直さねばならなかった。前倒ししても問題あるまい。



 近頃(と言ってもいつからかは知らないが)は、メガネもまた安くなった。レンズ・フレーム・加工費込みで5000円なんて当たり前。30分で完成などということも可能になった。私が最後にメガネを作ったがいつだったかは覚えていないが(上記メガネの他に、度入りサングラスを作っている)、そのときはまだ、メガネというのは高価な品だった。レンズ・フレームのセットでも2〜3万円は当たり前。私のように近視・乱視ともに強度な場合は薄型加工に高額な費用が掛かり、メガネひとつに7〜8万円はかかっていたものだった。しかも完成まで2週間は待たされた。
 そんな高額商品だから、フレームはブランドものが当たり前だった。セットで2万円程度の激安商品ならともかく、5万も7万も払うのならば聞いたことのあるブランド・フレームにしたくなるもの。さらに言えば、私のような強い度になると安物のフレームだと適合しなかったりもする。だから、私のメガネもブランドものである。そんなこと気にしたこともなかった。というよりも、自分がかけているメガネに「GUCCI」なる文字が刻まれていることに気づくのに数年掛かった。


 この文字に気づいたのは、去年の5月頃。会社の研修所で、同期の1人がいきなり「お前のメガネ、グッチか!」と叫んだことによる。その瞬間、回りにいたあらゆる研修生、しかも口も利いたこともない奴まで集まってきてメガネの文字を見たものであった。くだらん。このドン百姓めが。私のメガネが何だろうとどうでもよかろう。適切に見えて、顔にも負担がかからず、強度・弾性があり、気に入ったデザインであればそれでよい。しかし人々は「お前、実は金持ちか」「やるじゃねえか」などと口にし出し、見たこともない私の私服のセンスについてまでとやかく言い出す始末。これがまさにブランドの効果というものなんだろうか。あいにく私はこんな意味不明な感心をされることにはまったく興味がない、というか、迷惑だったのだが。
 カバンやネクタイの「GUCCI」がどういう意味合いとランクを持ち、どういった商品がどういった価格帯なのかは私は知らない。ただ、メガネのフレームに関しては特別高価だったわけでもないし、もちろん安くはなかったが、高価なのはそれだけの品質が必要だったからだ。しかし人々は、この文字ひとつで随分と人を見る目がかわるものである。逆に言えば、人は他人のことなんかはこうした記号とイメージでしか見ていないとも言える。


 私の知っているある人が嫁探しを始めたとき、彼は400万のホンダ・レジェンドを売却して、300万のBMWを買った。プライスはレジェンドの方が高いし、乗り心地なんかもBMWの中級車がホンダの最上級車よりも特別優れているとも思えない。しかし人は「ホンダ」と聞くと「走り屋のアンちゃんの車」としか見なさなかったりもする。しかし「BMW」と聞くと安かろうとスポーツカーだろうとオーソドックスなセダンだろうと、とにかく「coolな高級車」と思うらしい。車などは必要十分な性能を持ってさえいれば、あとは自分の好きなものに乗ればよい。人からの評価のために車を変えるのはどうかという気がしないでもない。しかし、この戦略は大成功したそうだ。
 世間では、持っている車だけでなく、住宅の所在地や滞在するホテル、はては車のナンバーや携帯電話の番号までイメージを伴う。そしてそれを気にする人はおそろしく気にする。例え地図の端にかかっているだけでもある区だと高級住宅地だと思われたりする。安ホテルの最高級の部屋よりも、高級ホテルの一番安い部屋に泊まる方がハクになる。さらには、多摩ナンバーはダサいとか、携帯電話は最初に使われた「030」、今で言う「090-3」こそが古くから持っていたと示すステータスだと思う人までいたりする。事実、携帯の「090-3」番号は売買されている。
 くだらないと言えばくだらない。しかしくだらないと言ってみたところで、安易にイメージを持ちたがる人を相手に商談や交際をする場合は、これを利用しない手はない。だけれども私は、そんなことは気にしないし、気にする必要も今のところはない。だから、次のメガネは5000円メガネ屋で今のフレームと似た感じのものを作りますよ。


 さて、実際にメガネ屋へと行ってきたのだが、やはり私ほどの強度近視・強度乱視となると、5000円というわけにはいかない。予想していたことと言うか、当たり前だが。まず、強度近視対策に「超薄型加工」をするので+18000円。強度乱視は特注になるので+3000円。となると安い5000円フレームではダメらしいので9000円フレームに。計31500円也。そして完成まで1週間待ち。まあ、6万も7万もかけて、半月も待っていた時代に比べれば格段の進歩ではありますな。  


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