居酒屋、宅飲み、深夜の散歩
2003年07月20日(日)
今日は大学時代の部の後輩・黒天使氏と課長(いずれも仮名)と3人で飲むこととなった。在学中の後輩とならばまだしも、卒業してそれぞれの道を歩み出した人間同士とは、余暇が合わなかったり地理的な制約があったりとで、大学を出てからはあまり酒を飲むことはなくなった。それでもたまにはこういう機会は作って飲む。本当はもうちょっと呼びたかったのだが、時間が合わなかった。
まずは居酒屋で一杯。課長が某所で仲良くなった極道者の話がまず肴となったが、それからはすぐに仕事がどうした、今こういうことをしている、大学時代の誰それはどうした、という話が主になってきた。同じ空間で長時間顔を合わせ、武道の稽古や運営の仕事で共同作業をすることも多かった大学時代と違い、話のネタで共通するものは次第少なくはなっている。大学の食堂や部室で毎日長時間過ごし、自分の部屋に帰る暇もないほど意図の部屋を渡り歩いていた頃は、趣味の話なんかもある程度平準化されていたものだ。しかし今は、趣味の話なんかはほとんど完全に合わなくなっていることだろう。けれども、あのときはどうだった、今誰それはどうしている、という話だけがベースでも、十分に盛り上がるものもである。余談だが、ついに大学時代の連中で結婚したのも2名出たらしい。
1800時に飲み始め、もう2100時になった。そろそろ出るかと居酒屋を後にし駅に向かおうとしたが、このまま黒天使氏宅に行くかという話になった。明日も祝日だ。
就職してから住み始めたという今の黒天使氏宅は、今回はじめて御邪魔した。しかしそれでも、大学時代に敷居をまたいだ部屋とそうかわりない。新式の液晶一体型パソコンや背広が増えていたが、それ以外は散らかり様から政治学書・文芸小説などの書籍、六尺棒や木刀などのエモノに至るまで、なんか既視感のある部屋であった。私の部屋も相変わらずだが。
早速買ってきた発泡酒を平らげつつ、また昔話や今の話、そしてそれらから発展した抽象論なんかで盛り上がったものであった。そのうしているうちに黒天使氏が12年モノのウィスキーなんぞも出した。昔に比べたらほとんど飲めなくなっているのだが、ゆっくりといい酒を飲むのはよい。久々に心地よく酔った。
そして午前1時すぎ、なぜか我々は酔い覚ましにと近隣へと散歩に出た。閑静な住宅地だ。誰もいやしない。もちろん我々は蛮声を張り上げて闊歩するようなことはしなかったが。
大分歩いて、我々は神社にたどり着き、なぜか境内へと石段を上った。割と伝統がありそうな神社だが、境内にはブランコなどの遊具もあって公園も兼ねていた。まあこんな深夜ではわずかの外灯でやっと足下が見える程度の場所だが。夜来る場所ではない。
大分歩いたからちょっと休むか。公園の遊具に腰掛けようとした黒天使氏は、ブランコの上に携帯電話が置かれているのを発見した。電源を入れてたら入った。どこのアホが携帯を落としたのか。このまま置いて帰るか、交番にでも届けるか。そんなことを考えている横で、課長は「クソ、ロックかかっている」と悔しがる。何がどう悔しいのやら。そこに黒天使氏が携帯を取り上げ、「この手の機種はこうするものだ」とロックを解除してしまった。どうやったものやら。ロックを解除された携帯電話を課長はいじくりだし、電話帳をチェックする。そして「自宅」と書かれた番号をみつけて、いきなり電話をかけだすではないか。
「今1時半だぞ、よせ」と私は止めたが課長はそのままコールを鳴らす。そして、話し出す。携帯電話を拾って、「自宅」というところにかけたんですけど。**神社です。コンビニか交番にでも預けますよ。え、マジっすか?え、じゃあ待っています。などと課長。女の人が出て、これから電話を取りに来るとのこと。マジですかい。課長は「これが出会いだ」「なんか犯罪に巻き込まれないだろうな」などとよくわからんことを言っていたが、まったく面倒なことを。こんな時間に「電話を受け取りに」と出てくるような奴だ。チンピラのイロか族か何かかもしれないし。
「5分で行く」と言っていたから、10分待って来なかったら電話を置いて帰ろう。そう言って我々は神社の境内で突っ立って待っていた。いくらなんでもこんな時間、われわからん奴から電話が来て、女が1人で出てくるはずはない。女が旦那か男と同伴で来るだろう、と話していたら、1人の地味な女性がやってきた。彼女が電話の主らしい。主人が子供と遊んでいて落とした、とのこと。この連休、子供連れで境内まで来て落としたわけですな。我々は快く携帯を渡し、丁寧に挨拶をして別れた。彼女は深々とお辞儀をして戻っていった。
いくら閑静な住宅地で、近所と言えども、ちょっとこれはあんまりでないかい。午前1時過ぎに、よくわからん奴から電話が来て、女1人で出掛けるなんて。行かせる旦那も旦那だよ。「携帯電話を取りに行く」と言って出たきり行方不明、ということだって十分ある話だ。それにしても、我々には似つかわしくない善行をしたものだ。課長は1人、「なんだババアか。期待させやがって」と呻いていたが。
黒天使氏宅に戻った我々は、コンビニに寄って買ったカップ麺など喰らいつつまた四方山話などはじめ、午前3時過ぎには雑魚寝で就寝した。人数分の布団やそれを敷くスペースなどあるはずがなく、私はタオルケットにくるまり、課長は毛布にくるまって、ゴザの上で寝た。こんなアホな就寝も久しぶりである。そして翌朝7時過ぎに解散したのであった。