「フルメタル・パニック!安心できない七つ道具?」
賀東招二作、富士見書房、2003年


 角川スニーカや富士見ファンタジアといったライトノベルは、中学高校時代にはそれなりに読んでいた。高校を出てからはほとんど読むことはなくなったが、現在でも購入して読むほぼ唯一のライトノベルが、「フルメタルパニック!」シリーズなわけである。この作者は中央大学の先輩であらせられる。私は作者が所属していたSF研究会の知人に勧められて当シリーズを読み出した。で、今もなお、新刊が出れば購入している。1回読んだら、すぐに処分してしまってはいるが。


 この「フルメタル・パニック」シリーズの見所は何かと言えば、やはり平和ボケならぬ「戦争ボケ」の主人公がグロック19やステアーのサブマシンガンなんかを振り回しながら繰り広げる高校生活だろう。特に「サブタイトル」に数字が入る短編集は、その傾向が強い。高校時代、S&W・M649やワルサーPPのガスガンを学生服のポケットにねじ込んで登校し、放課後は悪友連中と自販機の紙コップで射的なんぞして遊び、修学旅行や学祭では軍服を着込んで後日担任に呼び出されたりもし、あだ名は「軍人」だった私としては、鉄砲と軍事っぽい用語の飛び交う高校生活というのは親近感を覚えるわけだ。ちなみに、SF研の知人からは発売前に勧められたが、第一巻の発売後は高校時代の友人からも「お前にぴったりな本がある」として勧められたものであった。


 さて当巻の見所は何かというと、「日本の日常に於いて、あるはずもない敵襲を警戒して1人で自爆する空回りぶりを見せる主人公」が、実際にテロリストの襲撃を阻止することか。当巻収録エピソードの中には、テロリストがサブマシンガンで武装して政治家を襲撃する短編が収録されている。長編では局地紛争も不正規戦闘も起きて、主人公も秘匿兵器に搭乗して人型兵器や戦車を撃破し、あるいは拳銃やサブマシンガンで敵兵士やテロリストを射殺するが、短編で実際の襲撃が描かれるのは珍しいことではなかろうか。
 あるはずもない襲撃に過敏反応して、女子生徒を引き倒して銃を抜く・・・というような空回りぶりが重ねられ、今度は「あるはずもない襲撃にまた過敏反応したと思ったら、本物だった」というオチが登場するようになった。さらには、生徒会とヤンキーグループとの抗争でも、「手段」として散弾銃片手に襲撃することがもはや当然になっている節もあるし。短編集も7巻目。随分と続いているものである。
 あとは「アフガンゲリラ出身の、10代の傭兵」である主人公のせいで疑問は薄れるが、生徒会長もまたこの手の小説で主人公になってもおかしくない荒唐無稽な人物である。彼の出自や生活について描かれたのもこれがはじめてかもしれぬ。謎を作って、それを少しずつ明らかにしていくという手に出たか。
 この「フルメタルパニック」。長く続いているからこそ出来るネタが増えてきた。そしてだこのシリーズはまだまだ続きそうである。  


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