ロシアンレストラン
2004年06月09日(水)
同期に連れられて、ロシアンレストランへ行って来た。歓楽街の、よくある雑居ビルの何階かにそのレストランはあった。まあ、そこまではよくあるメシ屋だ。だが、一歩店内に足を踏み入れたら、三色のロシア国旗と、プーチンの肖像画に出迎えられた。5.1chサラウンドスピーカーが大音量で、ロシア製暴力映画のDVDを流していた。もちろん字幕などない。客もほとんどがロシア人であった。いや、何人かどこの国民かは知らないが、耳に入るコトバのほとんどはロシア語であった。さらにはウェイターもロシア人。シェフもロシア人。経営者は日本人だが、ここはほとんど在日ロシア人のサロンであった。
もちろん日本にある以上、メニューは日本語、それほどうまくはないがロシア人従業員も日本語を使える。日本人給仕もいた。だが、ロシア語を学んでいる私としてはロシア語で応対したかったのだが、ほとんど聞き取れなかった。まず第一に、音を聞き取れない、第二に聞き取れても口語なので意味がよくわからない、第三に知らない単語や用法が多い、第四に知っているであろう単語や文法も、咄嗟に解釈するのには難がある。まったくわからないわけではなかったのだが、ロシア語教師ではない、「ただのロシア人」のコトバはかくもやりにくいものか。もっと勉強せねばなるまいて。
結局ここではボルシチ、ペリメニ、シャシリクといった有名なロシア料理をはじめて実際に喰らい、グルジアワインを飲んだ。グルジアワインはかなり甘い。本来甘い酒は好みではないのだが、これは実にうまかった。調和のとれた甘さというか。料理も味が強すぎず、かといって薄すぎず、なかなかの出来。近場にあったのならば、また行きたいところだ。
いいのは料理だけではない。ロシア人従業員は、そこらのパブやキャバレーにいるようなよくわからん連中ではなく、苦学しているインテリである。ロシアの名門大学で学位を得て、軍で将校の階級を持ち、日本で働きながら最新技術を学ぼうとしているマジメな奴だ。ロシア語仲間の中には、風俗店の出稼ぎロシア人とよろしくやって、それを勉強と称している奴もいる。だが、コトバには位がある。上流階級のコトバ、インテリのコトバ、アッパーミドルのコトバ、ブルーカラーのコトバ、ちんぴらヤクザのコトバ・・・汚いコトバでも意思疎通できるようになればそれでいいという人もいるかもしれないが、やはりスラムのコトバをしゃべる奴は信用されないし、好感も(下層階級以外には)持たれない。だからこそ同期(彼はかなりロシア語をできる)も言っていた。
「100時間商売女と話すよりは、30分モスクワ大の学生と話した方がよほど勉強になる」
と。まさにその通りだ。私もここでウェイターと世間話をできるレベルにまでは、コトバを叩きたいものだ。話すのが上達の道と言えども、今の私の語学力では話しはじめることさえままならないので。