寿司とグルジアワイン
2004年07月11日(日)
今日は大学時代の後輩・美津濃氏(仮名)宅に乗り込んだ。先日誕生日だった奴めに祝いの品などを贈呈するためである。そして私は明日早い便で帰省する。川崎からも直行バスは出ているが、美津濃氏宅からの方がよほど羽田空港に近い。そのため、朝まで泊めてもらうことにした。
大学時代から誕生プレゼントと言えば、あまり喜ばれないガラクタか、人生に於いて人から贈られることが滅多にない珍品と相場が決まっている。ただしちょっと嫌がられるだけならばまだしも、本気で困るものや、腐敗物・屍・薬物と言った人倫に外れるものを贈らないのが暗黙のルールだ。ただ困らせるだけならば、誰にでもできる。
しかし、学部時代のように大人数集まるわけでもなく、品物を用意する時間が有り余っているわけでもない。さらにはすでに、同じ大学で日常的に接触しているわけではないので、共通のネタというものも少なくなってきている。私のセンスをどう発揮したものか。
結局の所、これにした。知る人ぞ知る民族派的自主制作映画、「国防挺身隊」!さらには「明治天皇宇宙の旅」「ライダー神風」など、知りもしなかった作品も入っている。このVHSテープは、場末のビデオ店で数千円払って購入した代物である。
これはもちろん、美津濃氏宅のVHSデッキで上映した。早送りもせずに、最後まで。旧陸軍の小汚い軍服を着て、歩兵銃を担ぎ、銃剣をぶら下げて街を闊歩する三人組。街宣車としか思えない塗装のオンボロ軍用ジープを駆り、拡声器で叫びながら街を跳梁する三人組。奇天烈な言動を繰り返し、市井の人々にリンチを加える三人組。三人に牙を剥く「外国人」に「国賊」達。時折流される戦時下の報道写真に、学生運動の写真・・・。これはすごい映画だ。美津濃氏曰く、「もう二度と観ることはないだろう」とのこと。喜んでもらって幸いである。
もう1つの品は、やや甘みのあるグルジアワインの白。そうそう売っているものではないが、特別おかしい代物ではない。酒の弱い私はワインなんかは外では飲まないが、朝まで世話になるのならば、2人で1本開けるぐらいでちょうど良かろう。
「国防挺身隊」を一通り鑑賞し、その他「ZZ」で私が事実上の最終回と称して憚らない「重力下のプルツー」をはじめ、美津濃氏推薦のグレミーセレクションを上映した。さて、そろそろ夕メシである。白ワインに合う食い物は何であろうか。
先日、美津濃氏宅には別口の客が訪れ、「豪華そうだから」という理由で、寿司と焼肉という組み合わせが食されたという。高そうなものを組み合わせれば、相乗効果を起こすという発想である。大衆焼肉店の食い放題でも寿司は確かに出される。が、それは私の趣味ではない。油脂がキツく、香辛料の利いたタレで匂いと味が強烈な焼肉を食っていると、寿司は「口が油っぽいから、すこしあっさりしたものでも食うか」という中和剤程度の役割にしかならない。それが悪いとは言わないが、今回は違った趣向にしたい。
近所のスーパーではそもそも選択肢は限定されるが、私はまたしても敢えて寿司にした。そして油脂がほんどない少ない海草サラダもつけた。そして、メシを食い終えた後のつまみとして、少し味の濃い生ハムを用意。ワインを持ってきた以上、それを中心に献立を組んでみた。まあ所詮安ワインに、スーパーの安寿司、出来合いの安惣菜に国内工場出荷の安ハムだ。しかし、なんかコンセプトは持ちたいものだ。
メシを食い終え、グルジアワインを傾けていると、急に美津濃氏が立ちあがって、この日本刀を差し出した。近頃彼が通っている道場で使っている、居合い刀らしい。見た感じ、私が大学1年次に購入した品とほとんど同じモノだ。もっとも私のは、買った日の夜に酒を飲み、午前4時に店を出ると、当然のことのように箱から過多なを取り出して、同じくハルバードを出した同期とともに、怒号を上げつつ武器を振り回して街を闊歩してものであった。よく逮捕されなかったものだ。
こうして私の居合い刀は買って日も明けないうちに、ひん曲がり、刃は絶望的にこぼれまくり、鞘は木っ端微塵に砕け散った。が、まともな形のまま持ち帰っていたら、もっと別の稽古に使えていたかもしれんな。件の刀は撮影用の小道具として、スイカ割りの棒代わりとして大学時代役立ったが、卒業時に廃棄してしまった。しかしもう一度買い直して、今度はちゃんとした用途に使ってみたくなった。まあ実際に稽古をするつもりはなく、まして日本刀を携えたバカ旅行の類をする機会もほぼなくなり、しょっぴかれた場合にはシャレにもならない。やはり私はうかつに刀に手を出さない方がいいのかもしれん。
さて、翌日たる月曜は、私は休みでも美津濃氏にとっては平日である。大学院に登校する美津濃氏が起きる前に私は目覚めて荷物を整え、そして「姉、ちゃんとしようよ2」をプレイ。ゲームを自分で買うつもりも、自宅でプレイするつもりも、すでにない。だから、たまにこうして人の家で、時間に追わる緊張感とともにプレイするのがいいのだ。
目標のぽえむをクリアできたから、よしとしよう。
そして美津濃氏が目覚めて、パンを引っ張り出して喰らい、髭を剃って慌ただしく出発準備をしている中、私は「姉2」の画像から即興でGIFアニメーションを作成。これを美津濃氏のPCのデスクトップに設定しておいた。なかなか卑猥なデスクトップになった。まあ、研究室で開くノートPCではないだけ、私にもまだ良心が残っていたということか。
何事もなかったかのようにPCの電源を落とし、私は大学院に向かう美津濃氏とともに部屋を出た。「合い鍵渡すから、もっと遅く出てもいい」とは言われたが、さすがにそこまでしてもらうのは気が引けた。それに飛行機の時間は早い。今出ても羽田ではそんなには待たない。というわけで、電車で途中まで一緒に行って、途中の乗り換え駅で別れた。今度会うのはコミケか、それとも彼が企画しようとしているメイド喫茶めぐりか。さてはて。
誕生日を祝う主旨でありながらも私の方が宿の世話になり、そして空港に向かったのである。