同志オクノフ帰国
2006年03月24日(金)


 本日は、モスクワより来訪せし同志奥野の帰国の日であります。それに先だって先日は、帰国直前のレセプションに「真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章」の鑑賞会が執り行われました。私はそれに参列し、その後、杯を酌み交わす栄誉に浴することが出来ました。


 式典には在日親ソ政権の首班たる同志速水螺旋人も参列されました。また、同志桂は、祖国の宇宙開発を称える為にカスミーチャスカヤ・スタンチヤ・ミールの模型を持参するとはソ連市民の鑑であります。此度の式典をアルガニザーチヤした同志カノッサの功績は、ソ連邦英雄の称号にふさわしいものと言えましょう。


 かくして式典は恙無く終了いたしましたが、私の帰路においては、ギットレラヴェッツどもの空爆によって鉄路が寸断され、私は徒歩にて帰還することになりました。まさに「誓いの休暇」。しかし同志奥野のアエラフロートの旅は、平穏なものであることを願います。Счастливого пути!


 奥野さんは私のロシア語の先輩なのですが、在露経験5年のветеран войныであられます。私のような浅学非才なлишний человекに毎回ロシアの産品をもたらしてくださり、モスクワには足向けできません。いつかは恩を返さねばなりません。これはもう、ясакとして黒テンの毛皮でも献上せねば。


 それにしても、在露邦人で「北斗の拳」の新作映画を観た方は、そう何人もいないことでありましょう。しかしこの映画、初っ端から「北斗三兄弟」を連呼してジャギの存在が否定され、ついでにジャッカルの存在も暗に否定されているのは不憫でなりません。さらには核戦争の理由を民族紛争に無理矢理結び付け、B -2が舞い、M-1が走り、兵士がAR15A2を抱えるなど、戦争の描写に苦心している模様。もはや「(急激な)世界滅亡」とか「全面核戦争」は死語に近い時代ですから。なんにせよ、なかなかの怪作でありました。速水先生絶賛の、旧作の劇場版には敵いませんが・・・。


 ついでにナチの空爆で線路が・・・というのは、単に最寄駅までの電車がなかっただけの話。途中の駅で列車を降りて、徒歩で1時間半かかりました。まあ、さらに遠くの駅で降ろされるもう1本遅い電車が絶対国防圏であり、この電車を降りてから自宅まで3時間ちょいの道のりを歩くことをも覚悟していたので、予想よりは早く帰れましたが。


・カスミーチャスカヤ・スタンチヤ:космическая станция。つまり宇宙ステーション。言い方は複数あるのだが、「宇宙ステーション」そのままの露訳なのでわかりやすい。

・アルガニザーチヤ:организация。組織化、編成などの固い意味を持つが、「パーティーを催す」程度の意味にも用いる。余談だが、革命団体が組織員を勧誘するの意のオルグの語源でもある。

・ギットレラヴェッツ:гитлеровец。直訳すれば「ヒットラー主義者」になるか。ナチスドイツの将兵全般をも指す。

・ветеран войны:ヴェテラン・ヴァイヌィ。戦争経験者、歴戦の勇士。

・ясак:ヤサーク。毛皮、家畜などの現物税。

・浅学非才なлишний человек:лишний человек(余計者、無用者)とは、学問を修めたが社会にそれを生かす受け皿がなく、社会参画できずに無気力な日々を送るインテリである。しかし「浅学非才な」лишний человекは、ただのクズのような気がする。


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