思い立って、神尾駅へ
2009年02月05日(木)


 大井川鐵道神尾駅のことを知ったのは、4日の深夜頃。そしていつも通り寝て起きて、朝の勉強なんぞしているとき。ふと思い立って、神尾駅に行ってみようという気になった。時刻表に当たって、本日の予定と照らし合わせて、日常業務に支障がないと判断。行こうと思ってから、書類カバンにデジカメと本1冊だけ詰め込んで出発するまで、所要時間は5分程度であった。

 乗った列車は以下の通り。
07xx某駅発〜0840小田原着
0852小田原発〜0920熱海着
0937熱海発〜1038興津着
1042興津発〜1140金谷着
1221金谷発〜1241神尾着
1344神尾発〜1402金谷着
1410金谷発〜1420島田着
1420島田発〜1610熱海着
1614熱海発〜1635小田原着
小田原駅で食事。
1650小田原発〜1xxx某所へ。

 神尾駅へは片道約6時間。確かに日帰りできる圏内ではあるが、単純計算で往復12時間。神尾駅は1時間に1本程度しか列車が来ないのでもっとかかる。さらに言えば、小田原から某所へと直接出向くという暴挙に出たので、帰宅したのはさらに遅い。もう若くもないが、時間の都合が聞くからこそ出来る所業。いやはや。
 翌日は身体の節々が痛んだものだった。




 小田原駅までは日常使っているような通勤電車であったが、小田原駅からは車両の雰囲気もかわり、旅気分が盛り上がる。




 日帰りとはいえどもせっかくの旅なのに、車中ではずっと勉強をしておりました。小田原までは座ることも出来なかったので、頭の中で暗唱するに留めておりましたが、小田原からはペンが使えるように。




 熱海でまた、普通の縦座席の列車に乗り換え。
 ただ、景色は郊外のものに変わっており、日常圏外に出たことを実感させる。
 ちなみにスイカ/パスモが使えるのは熱海までなので、要注意。スイカ/パスモ圏外に行くということを完全に失念していた為、定期券で入場してしまっていたが、目的地が田舎駅だと想定し、迷惑にならぬよう事前にここで清算しておく。




 興津駅にて乗り換え。
 昔「コミックコンプ」で連載していた漫画「ヤンキー」の舞台がここ興津だったことなど思い出す。




 JRはままこで。金谷駅で改札を出る。




 予備知識がまったくない状態で時刻表だけ印刷して飛び出たが、自動改札機がある程度の駅ではある。が、もちろんスイカ/パスモなど使えず。緑の窓口もあるほどの駅なので、駅事務所に清算する機械があるとは思うが、事前の清算が無難ではあろうて。


 時刻表を印刷したときは、金谷発の大井川鐵道にちょうど乗り換え出来る時間で計算したのだが、どこかで間違ったらしく、電車は出たばかり。金谷駅近辺をうろついて時間を潰す。しかし駅前にコンビニや本屋があるわけでもなく、昼だったのだがメシ屋も見あたらない。結局、自販機でコーヒーなど買うに留めて、近所を散歩することに。




 駅前には小さなロータリーがある。
 田舎は当然自動車社会なので、ロータリーを利用する車はわりといた。
 念のため断っておくが、私も北海道東部出身の田舎者として周囲の雰囲気を見ているので、少なくともここにおける「田舎」という単語に都会者としての見下したニュアンスはないので悪しからず。




 待合室と駅事務所、みどりの窓口、売店などコンパクトに収納した駅舎。
 シンプルだが新しく清潔感がある。うちの田舎の鐵道事情とは、随分違いますわ。




 大井川鐵道の金谷駅はその奥に。




 JR金谷駅の接した牧ノ原トンネル。入り口が3カ所見えるが、1本は廃止されたのか。駐車場になっているスペースにもかつては線路が走っていたのであろう。




 トンネルの上。ドラム缶は狼煙用……ではなく、近隣住民がゴミを燃やすのに使っているのであろう。




 短く刈り込んだ低木の列は、茶畑か。
 うちの田舎では田んぼも畑もあるが、茶だけはない。
 なんか、新鮮であった。



 丘の上から街を見下ろす。
 雲の移動とともに眼下が影に覆われていく様は、都市生活ではなかなか味わえない。
 こうしてみると、住宅地がかなり広がっており、商工業施設も見て取れる。
 金谷駅は比較的コンパクトに見えたが、街のはずれにあるせいか。

 少し歩いているうちに列車の時間が近づく。

 


 大井川鐵道金谷駅へ。切符は自動券売機で買ったが、改札口では鋏を入れた。切符に鋏。上京したときはもちろん自動改札が完全に普及していたが、田舎で暮らしていたときはそもそも列車に乗ることも少なく、幼少期の年に1度の鉄道旅行のときぐらいしか、切符に鋏を入れる光景は見たことがない。しかしなんとも懐かしい光景であった。



 鉄道は2両編成。もちろん電化されている。




 座席はボックスシート。




 ワンマン列車である。料金表や運賃箱は前の車両の前方にある。
 始発駅の金谷では切符を買ったが、途中の駅ではバスと同じく整理券を取って乗り、降りるときに払う方式のようだ。もちろん下りるときは運転士の側の料金箱まで行く必要があるので、次で降りるときには事前に前の車両へ行くことを促すアナウンスが流れる。



 パンチを入れられた切符。

 平日昼間ではあったが、近隣の高校生やお年寄りの利用が案外多く、2両編成にて1時間1本の運行が可能なのもうなづけた。うちの田舎じゃ1両編成で2時間に1本ですよ。






 そして目的地・神尾駅到着。




 単線なので、神尾駅で待ち合わせてすれ違う。




 大量のたぬきの焼き物が出迎えてくれる。




 中には鉄道員の姿をしたたぬきも。




 ホームの端にもたぬきが鎮座しており、誰もいないと思って油断していると、人影かと思って驚く。




 この写真では映っていないが、神尾駅は金谷方面もトンネル、




 千頭方面もトンネル。




 正面は広い河川。




 裏は崖……と書くと、なかなかの秘境駅のような印象を受ける。
 確かに地形は険しく、近くに民家もない無人駅ではあるが、予想に反してPHSの電波が入った。




 ふと見上げると、それなりの密度で民家が目に入り、




 対岸に至ってはごく普通の住宅地の光景だ。




 そして川を挟んだちょうど対面にはセメント工場らしき施設があり、常に作業音が響いていた。

 神尾駅の立地は田舎かもしれないが、秘境でも何でもない。予備知識が乏しいまま来たので、ちょっと予想外ではあった。ただし、ここから人々の生活圏までどのぐらいの道程なのかは不明ではあるし、周囲には商店どころか自販機さえなく、金谷駅で買ったペットボトル以外は口に入るものはなかった。おそらく夜には、遠方に人家の光が見えるにしても、周囲は真っ暗になることであろう。

 工場の作業音はあくまで遠い音であり、近くで聞こえる音は風に舞う木の葉と鳥の声だけであった。だから、崖から小石が転がってきたら誰かいるのではと警戒し、待合室の屋根が突風で揺さぶられるとすわ地震かと驚いた。ただし小石については、過去にこのあたりは土砂崩れで埋まったことを考えると、ちょっと怖かったが。







 崖と川との間の空間に1面2線島式ホームを作るのには、ホームの面積を削るしかなかったのであろう。
 なかなか細いホームである。




 駅の周囲には、便所(左奥)と作業用具置き場(左手前)と鍵の掛かった小屋(右)しかない。
 右の小屋は駅員室だろうか。




 便所の横には水道があったが、水は出なかった。




 小屋の横にはISDN対応公衆電話が。
 使用可能であったが、木の葉や虫などがケースに入っており、使うのはちょっと勇気がいるかも。




 列車はおおむね1時間に1本。ここで上下線が待ち合わせる関係上、到着したときには帰り方面の列車も到着しているので、駅をちょっと散策する程度の用でもまる1本分待たねばならない。




 観鈴ちんノート。
 一筆書いておきました。
 なんでも2001年から続いた歴代のノートは盗難に遭ったそうで、これは新しいノートらしい。
 といってもすでに設置から1年近く経っていたが。




 そしてようやく帰りの列車が。
 なかなか年代物の車両で驚いたが、これは21001系というらしい。
 私は鉄道マニアではまったくないのだが、そのケはあるらしく興味は引かれる。




 整理券を取って乗り込む。
 整理券は番号ではなく乗車駅が印刷されていた。

 


 車両は内部も古さを感じる箇所が少なからずあったが、きれいに手入れされ、花など飾られている。大切にされている様には心が和んだ。




 そして1駅も戻ると、町工場、自動車販売店、自動車修理工場、コンビニと普通の自動車社会の田舎の光景が広がる。金谷〜神尾間の改札がある駅は、金谷と新金谷だけのようである。


 そして目的地を後にして、再び同じルートで東京方面へと戻り、そして某所へと向かったのであった。
 ちなみに島田駅で乗り換えに下りたとき、ホームを黒髪ツインテールのゴスロリが歩いていたので、ちょっと驚いた。これから東京のイベントか何かに行くのかと何気なく目で追っていたら、かの人物は男便所に入って行ったのでさらに驚いた。
 女装だったのか、そうでないのか、どういう理由でそのような身なりをしているのかはまったくわからないし、どのような理由であったところでそれをとやかく言うつもりもない。ただ、東京からやや離れた地方都市において、ゴスロリ・ツインテールという特異な服装を見たことは意外であり、それがおそらくは女装であったことには目を疑った。旅先での貴重な体験であった。


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