last up date 2004.02.04

 渡露・在露経験のある知人・友人・親戚・教員から聞いた、ロシア話の集積場。
 もちろん、ロシアに渡り、ロシアに長く住んだからと言って、それでロシアないしロシア人を一刀両断できるわけはない。何年何十年住んでも、「ロシアでは」「ロシアとは」「ロシア人は」などと大主語で語れないのがロシアである。もっとも、それは中国もアメリカも日本も同じだが。さらに言えば、発言者の悪意・偏見・誤解・誇張・恣意的な歪曲は必ず含まれているであろうことと、私が発言者の伝えんとしていることを解釈しきれていないかもしれないことに留意されたし。
 最終更新日現在、私自身は未だ渡露経験はありません。


 ソ連時代のプーシキン広場では、反体制的な小説や詩を書く物書きが外国人に自分の作品を託そうとすることが、しばしばあった。なんとか外国に持ち出してもらって、ドイツあたりにある出版社に送ってくれ、と。しかしもちろんそうした動きは警察も見張っていて、接触があるとすぐに呼び止められた。
 ある日本人研究者はそうした原稿を無理矢理渡され、すぐに警察に捕まった。しかし、あからさまだが便所に行くと言って個室に入り、原稿を便器に投げ捨てて難を逃れたという。現物がなければさすがに外国人を罰せられない。
 後日、その反体制作家に呼び止められた日本人研究者は、「警察に捕まったな、それで原稿はどうした」と聞かれた。研究者は便所に捨てたと答えたところ、「よくやった」と褒められた。そして、また原稿を託されたとのこと・・・。結局その原稿は無事ソ連国外に持ち出せて、ドイツの出版社に送ったが、「不採用」というオチだった。


 日本に暮らす日本人で、ロシア語通訳だけの専業で食っていけているひとは、10人ぐらいしかいない。


 ロシアのコンサートでは、多少の咳払いやクシャミをしても平気。それどころか、Не так!(そうじゃない!)とステージに向かって叫ぶ奴までいる始末。観客の態度としての善し悪しはともかく、一般の観客は鋭い批評眼を持っており、ミスやレベルの低さには容赦がない。レの音を外した!そうじゃない!などとヤジが飛ぶ、演奏家の目の前の席だろうとダメだと思ったら一斉に席を立つなんてザラ。そして、ロビーで、「よくあんな奴を音楽院は卒業させたものだ」「あの音を外した」などとウォッカをやりながら語り合ったりもするとか。厳しい観客である。
 一方で、日本ではセキをした、クシャミをしたとなったら、客同士で「なんだこのドン百姓は、出てけ!」という視線で見られ、演奏は急用でも出来ない限り最後まで聞く。そして盛大な拍手を送る。わからなくても送る。日本とロシアと、どっちがいいかなどということは芸術オンチの私には語れない。しかし来日公演をしたロシアのピアニストは、盛大なミスをしたのにもかかわらず盛大な拍手を受けたことに却ってプライドを傷つけられたという。


日本政府は石油もガスも欲しいが、語学にカネ出さない。むしろ力緩める。ロシア語どころか英語さえ個人任せ。
アメリカでロシア語やる学生の学費無料。少ないし必要だから。優秀な奴が出る。
日本では少ない。平気で日ソ交渉でパギフローとか中性形で言ったりする。


 日本政府も日本企業も、石油やガスをロシアの石油を重視しているのは言うまでもない。長期的な国益という観点で見て、ロシアのエネルギー資源の意味は巨大である。さらに、人口が多く、老朽化しているとは言えインフラが整備され、国民の教育レベルも高いロシアは、モノを売り込む市場としても、現地工場を作る場所としても、労働力としても、多大なるポテンシャルを持っている。さらには言うまでもなく、安保理常任理事国にして、世界最大規模の兵力と、強力な核戦力を持つロシアは、外交・国防上、日本にとって重要な隣国であるのは明らか。しかし、日本の政府も、企業も、ロシア語にカネを出さない。政策としては、むしろ語学教育に力を緩めている。ロシア語どころか労働市場に於いて必須条件と言える英語さえ、個人任せ。
 一方で、アメリカでロシア語を専門に習得しようという学生の学費は無料である。ロシア語を出来る人間は少ない上に、必要だからだ。学費の無料、奨学金などで優遇されていれば、出来る奴がロシア語の道に飛び込み、優秀な専門家を輩出することになる。こういった教育面で、日本の底は浅い。平気で外交交渉でパギフローとか中性形で言ったりする通訳が出たりする。



 ロシアで今валюта(ヴァリュータ:外貨)とは、米ドルのことを指す。ついでに緑色を意味するзелёные(ゼリョーニェ)、капуста(カプースタ:キャベツ)といった青物野菜などもまた、ドル札を意味するスラングとして使われる。それだけロシアでは米ドルが浸透している。一方で、ユーロやまして円なんかはあまり重視されていない。


 ロシア人は、日露戦争で日本が勝ったとは思っていない。今でも日露戦争のことを言うと笑われる。お前らは、勝ったと思っているのか、と。


 ホテルのバーなんかで1人で飲んでいたら、ロシア人の若い女が近づいてくることがあるそうな。いい女だと思って、調子に乗って飲んでいて、気が付いたら事実上の丸裸にされて道ばたに捨てられていた大学の先生がいたそうだ。酒に睡眠薬か何かが入れられていて、眠ったところを身ぐるみ剥がれたわけだ。ロシアだけでなく、日本人をカモにそういうことをしてくる女は珍しくない。


 ロシア語は、基本的に語尾を下げて文章の終わりを表す。疑問文でも、特に聞きたい単語の語尾を上げるが、その重点となる単語が文末にないのならば語尾は原則として下がる。とにかく、日本人がロシア語を操るに当たっては、文末語尾を大げさなまでに下げる必要がある。
 ある日ソ外交交渉の日本人通訳が、これを知らなかったのか軽視していたのか、音程がニュートラルなまま最後まで文末まで話すというスタイルを持っていた。こういうしゃべり方は、ロシア語ネイティブからしてみれば、何か含みがあるように、文章の途中で唐突に話を打ちきられたような印象を受ける。ソ連側は怒って「最後まで話せ」と主張したところ、それがしゃべり方の問題ではなく交渉の内容に関する要求と勘違いした通訳が、そのまま日本語訳して、日本側とソ連側との交渉がうまくいかなくなったこともあったとか。


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