※この本は、昨年の冬コミにて発行した
「冬花万象」の続編となっています。












「友達になりましょう?」




その変わり者の妖怪は、

亡者を生み出し続け苦悩する罪人の少女を救うため、

救いの糸を垂らした。



その罪人は、苦しむ亡者を捨て置いて自分だけ救われることはできないと言う。



妖怪は、救いの糸を巻きつけて自分の元に引き寄せ、

死後の幽霊の姿を示し、説いた。

死によって罪を清算された幽霊は気楽なものだと。

「苦しむ亡者」はいないのだと。



罪人は、亡者のことが気懸かりだった。

苦悩の中で生き続けることが自分に課せられた罰だと信じていた。

しかし、幽霊の気楽さと妖怪の誠意を目の当たりにし、

そしてやはり、それでも自分が救われてはいけないのだと、

妖怪に感謝をしながらも、

自らの命を絶った。
(冬花万象)




そして千年ほどの時が過ぎた。







































冥界・白玉楼で気楽に暮らす西行寺幽々子。





その友人として頻繁に冥界を訪れる妖怪・八雲紫。




その傍らには、妖夢や藍といった従者もおり、穏やかな時が流れていた。













季節は冬。

冬眠を控えた紫は、この時期には憂鬱なことがある。


目覚めた頃には満開になっているであろう桜。

その中でひとつ、永遠に春の訪れない桜。

幽々子が自らを封じた西行妖。









紫は、戯れとして妖夢の持つ剣に興味を示す。

ひとつの可能性を考えながら。



























そんな折、紫の前に四季が現れ、

ひとつの言葉を投げかけた。
























かつて妖怪は、罪人に救いの糸を垂らした。

わざわざ糸を巻きつけてまで罪人を救おうとした。

しかしその罪人が亡者となり、

その事実さえも忘れてしまった今、

救いの糸は、宙ぶらりんのまま、



今では紫を縛り続けている。














しめさばダイナミック発行
東方ProjectFanbook 第12弾

春無此岸

表紙フルカラーオフセット
B5 40P 予価300円
12月31日 冬コミ3日目
西2 ち-07bにて頒布