2003.04.06

月夜の小話 番外編その1

Rooks国新型戦闘機開発秘話


威力偵察中に味方の零戦を攻撃する2機のN1K2Jを発見。
こちらが接近したところ、1機が零戦から離れて上昇する。

「うかつなやつめ!」

無警戒に飛ぶN1K2Jを照準器に捉えて発砲しようとした瞬間、
もう1機に回り込まれていることに気がつく。

「しまった、オレとしたことが!」

あわてて垂直急降下、退避を図るも数発の20mmを喰らい、ガコンという音と共に
右羽根が半分脱落。
急降下のまま加速を続け、水平に立て直すと機体もなんとか安定した。
なおも1機のN1K2Jが猛然と追撃してくる。
機体を安定させようとエルロンを入れると、思うように機速が上がらず、徐々に追いつかれる。
執拗に追いすがるN1K2Jが、遠距離射撃。
思うように回避もできず、数発命中。

「もうだめか?」

遂に止めを刺すかのように20mmが左翼で炸裂。
左羽根が半分吹き飛んだ。

いよいよ死を覚悟したとき、奇跡が起きた。
両翼がバランス良く欠落したおかげで、安定して飛べるようになったのだ。
しかも、重量と抵抗が減ったため、後ろのN1K2Jを徐々に引き離していく。
上空から味方が応援にかけつけ、なんとか基地のackへ逃げ込むことに成功。
両エルロンはないが、ラダーを操作してなんとか水平にする。
慎重に操作しながらフラップを出し、ギアを出して平地に着陸。
後は基地滑走路まで走り続け、無事に基地へ生還した。
駆け寄った整備員は目を丸くして機体を見ていた。
この機はスクラップにするしかないと言う。
残念だが、仕方あるまい。
まだ熱いエンジンカウルに手を添えて、そっと囁いた。

「ありがとうよ」

※着陸フイルム(614KB)

Rooks軍司令部は、この事件をきっかけに新型機を開発中らしい。
研究所脇の格納庫で初めてテスト機を見たテストパイロットはつぶやいた。

「緑のツバメ?」

その後、他のパイロットや整備員からも、この愛称が用いられることとなる。
なお、軍の出入り業者に扮してテスト飛行を観察していたスパイは、
本国へ次のように打電している。

「Rooks軍事研究所は、尖った翼端が特徴の新型機を開発せり。
これまでのN1K2Jより2倍速く飛び、30mm機関砲を4門搭載している。
翼の形状から、ロール機動を得意とする高速格闘戦闘機と考えられる。」

驚愕を持って敵国に伝えられた新型機であったが、その報告内容は実機とかけ離れていた。
しかも、その後のテスト飛行で極端に運動性が悪いことが判明。
重量を無視した翼面積、操縦性を無視した両エルロンの撤廃が原因である。
テスト飛行で墜落する機体が続出したため、遂には「緑のペンギン」と呼ばれる
こととなった。
尖った手を持ちながら、まともに飛ぶ事ができないからである。