内陸資源賦存地区−−四川省の場合

3−1.要約・中国テイクオフの「第4のエンジン」としての四川省

 四川省の別名は「天府の国」である。これは元来「土地が肥沃であり、物産の豊富

なところ」の意だが、転じて一般に四川省だけを指すようになった。これは四川省が

三国時代の蜀のころから、中国でも有数の天然資源に恵まれた地域として著名であっ

たからである。四川省は南北900 キロ余り、東西は1200キロ余り、面積は57万平方キ

ロで、中国の国土の5.9 %を占め、中国第5位の大きさである。

 人口は1億1084万人(94年末現在)で、中国人口の9.5 %を占めている。このう

ち少数民族人口は489 万人である(『四川統計年鑑1995』34頁)。要するに、中国

人口の約1割を擁しており、四川省の市場経済化の成否は、内陸地区の市場経済化の

モデルとしてきわめて大きな意義をもっている。

 今回の四川省現地調査で改めて確認されたのは、改革開放の政策がようやく内陸地

区にも根づき始めたことである。重慶や成都に経済技術開発区あるいはハイテク開発

区が設けられ、外国企業の進出が始まりつつある。

 これは1)すでに発展した沿海地区の相対的高賃金を避けて内陸地区の安価な賃金を

利用する動きが生まれたこと、

 2)中国の開放政策が中国国内市場の開放にまで発展してきたために、市場戦略の観

点から内陸地区に視点を移したこと、

 3)さらに原料資源の確保の観点からの内陸シフト

など、さまざまな要因によるものと考えられる。いずれにせよ、中国の改革開放政策

が内陸地区にまで波及してきた実例をわれわれは四川省で観察できたことになる。

 ここで四川省の市場経済化、四川省経済のテイクオフのもつ戦略的意義を考察して

みたい。中国はこれまで、広東省を中心とする華南経済圏、上海市を中心とする上海

経済圏(揚子江下流域経済圏)、大連・天津などを中心とする環渤海経済圏の三つの

エンジンをもって中国経済のテイクオフを準備していた。しかし、これらはいずれも

沿海地区に属しており、中国全体を巨大なジャンボ機にたとえた場合、内陸地区とい

う尻が重すぎて離陸が困難であった。しかし、いま内陸地区の経済の中心である四川

省の「第四のエンジン」が始動することによって、中国経済の離陸を確実に保証でき

る推進力が生まれたと評価できるであろう。

 この意味で、四川省経済の離陸は、中国経済全体の離陸にとってきわめて重要な意

義をもつものである。

 では、動き始めた四川省経済の市場経済化を加速するためには何が必要なのか。答

えはインフラ整備の一語に尽きるのではないか。これまでの四川省・中国当局の努力

によって、重慶−成都のハイウェーに代表されるようなプロジェクトは進行してきた

。これによって四川省の二つの経済センターが5時間で結ばれることになったのは、

画期的である。両者が市場経済圏として一体化する方向が見えてきたからである。

 重慶−成都という二つの中心およびその沿線には、工業都市が形成されていくはず

である。このような形で四川省経済が発展するならば、それは省外の周辺地区の市場

経済化をも大いに刺激するはずである。

 日本からのアクセスを考えるばあいに、上海−重慶(江北空港)、上海−成都(双

流空港)間を結ぶ航空路の増便も不可欠であろう。航空路線の整備によって、日本と

重慶、成都との時間距離は大いに縮小することが予想できる。将来は日本からの直行

便によって、その時間距離はますます縮小するであろう。

 三峡ダムの完成によって、揚子江を利用した水運もより可能性が開けるであろう。

四川省はかつて国防三線建設の基地であった。当時、設けられた国防工業の民間転用

が進み、内陸地区に世界の開放経済の波が波及することは、中国の開放政策をより確

かなものとし、中国を世界経済のよきパートナーとして育成していくうえでのカナメ

の一石ともなるであろう。

 

3−2.四川省経済の現状

3−2−1.四川省経済の概要と日本との関係

 四川省経済の概要は以下のごとくである。

 四川省の別名は「天府の国」である。これは元来「土地が肥沃であり、物産の豊富

なところ」の意だが、転じて一般に四川省だけを指すようになった。これは四川省が

三国時代の蜀のころから、中国でも有数の天然資源に恵まれたところとして著名であ

った経緯に基づいている。南北は900キロ余り、東西は1200キロ余り、面積は

57万平方キロで、5.9%を占め、中国で第五位の大きさである。

 人口は1億1084万人(94年末現在)で、中国人口の9.5%を占めている。

このうち少数民族人口は489万人である。人口密度は平方q当たり195人である

(『四川統計年鑑1995』34頁)。

 行政区画をみると、13の「地区レベル市」(成都、重慶、自貢、攀枝花、瀘州、

徳陽、綿陽、広元、遂寧、内江、楽山、万県、南充)、7つの「地区」(〓陵、黔江

、宜賓、広安、達川、巴中、雅安)、3つの少数民族自治州(アバチベット族羌族自

治州、甘孜チベット族自治州、凉山彝(イ)族自治州)、219の県(県名は省略)

からなり、省都は成都市におかれている(重慶はいわば副省都的地位にある)。

 四川省は中国西南部、長江上流に位置する。経度をみると、四川省は東経104度

線あたりを境界として東部と西部に分けられる。東部は四川盆地、西部は高原と山地

である。西部はアバ・チベット族羌族自治州、甘孜チベット族自治州、涼山彝(イ)

族自治州の3自治州からなる。四川省内の二つの自治州(アバ自治州、甘孜自治州)

に住むチベット族人口は、チベット自治区に住むチベット族人口を上回っている。

 イ族はいまなお奴隷制度を保持している。

 東部の土家(トゥチャ)族は漢族への同化傾向が著しく、「漢民族と区別がつかな

いほど」といわれる。

 西部地区は少数民族地区であり、鉄鋼都市・攀枝花市や宇宙ロケット打ち上げ基地

のある西昌市のような例外を除けば、貧しい少数民族の居住空間である。自治州には

財政補助が行われているが、所得格差はかなり大きい。

 これに対して東部の四川盆地は温暖湿潤で年間降水量は約1000ミリであり、農

業に適している。

 近代史を顧みると日中戦争期に国民政府の臨時首都が重慶におかれ、工業の基礎が

形成された。60年代にはいわゆる「国防三線建設」の中核として軍需産業主体の後

方基地が建設された。〓小平時代に入り、改革開放路線が始まると、民需への転換(

軍転民)が行われ、一部ではみごとに成功しつつある。たとえば北方工業公司傘下の

嘉陵公司は銃弾製造からオートバイ工場に転換した。すなわち本田技研やヤマハ発動

機との技術提携(のちに合弁企業)により、オートバイ生産に転じて成功し、中国の

オートバイ生産量の約5割のシェアをもつに至った事実は、その典型的な一例である

 四川省の経済を他の内陸地区9省と比べると、つぎのような特徴を指摘できる。四

川省のGDPは大きいが、1億人を超える人口のために、一人当たりでは小さなもの

となる。91〜95年のGDP成長率は年率11%、都市所得は90年の1354元

から94年の2981元へ年率21.8%であった。農村は90年558元から94

年946元へ年率14.1%で伸びた。一人当たりがGDPより高いのは分配率の変

化による。

 沿海との格差は〓小平時代の改革開放期に拡大した。「技術レベルが低く、優遇措

置もなかった。西部は初級製品生産に特化しており、付加価値が小さい。このため、

東西格差(沿海地区と内陸地区との格差)の解決は困難である」。これがわれわれの

インタビューした四川省政府関係者が異口同音に語ったところである。

 四川省の人口予測をみると、西暦2000年の人口抑制目標は1.2億人である。

94年のサンプル調査によると、出生率は1.693 %、死亡率は0.699 %、人口増加率

0.994 %であるから、94年末の人口1.1 億人をベースとして19952000年の6年間

に年間約110 万人ずつ増えると仮定して、達成可能な目標と考えられる。

 農業生産をみると、食糧、油料、養蚕は全国一位であり、全国の約1割を占める。

気象条件は農業に適している。年間降雨量は1200ミリ、河川流量は3000億立

方米であり、水資源は豊かである。

 四川省にとって、農村の過剰労働力をいかに活用するかは、大きな問題となってい

る。これらの農村労働力が大都市へ流入することは禁止し、小都市へ移すことを奨励

している。このため、一部の小都市ではでは、「小都市開発」の事業が行われ、成果

を挙げている、との説明であった。

 日本との友好都市の締結関係は表1の通りである。県レベルでは、山梨県および広

島県が四川省と友好関係を結んでおり、それを基礎として市レベルでは山梨県の1市

1郡、広島県の4市が友好関係にある。さらに千葉県市川市と楽山市も友好都市であ

る。

 

表1 日本と四川省との友好都市一覧

 

+−−−−−−−−−−−−−−−−+ 

|山梨県    =四川省      |

|山梨県甲府市 =四川省成都市   |

|山梨県中巨摩郡=四川省都江堰市 

|広島県    =四川省      |

|広島県広島市 =四川省重慶市   |

|広島県三次市 =四川省雅安市   |

|広島県庄原市 =四川省綿陽市   |

|広島県東広島市=四川省徳陽市   |

|千葉県市川市 =四川省楽山市   |

+−−−−−−−−−−−−−−−−+

 

 日系企業の進出状況は、表2のごとくである。日本の進出企業は21社、日系資本

の現地法人は15社である(東洋経済新報社編『中国進出企業一覧1995』)

 

表2 日本進出企業一覧

+−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

| |日本企業名    | 現地法人名                  |

+−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

|1|いすず自動車   |慶鈴汽車(重慶汽車工業公司)           |

| |京連興業     |                         |

|2|伊藤忠商事    |四川万藤油脂                  |

|3|呉電子計算センター|中日合弁四凱コンピューターソフトウェア     |

|4|神戸製鋼所    |成都神鋼建設機械                |

| |伊藤忠商事    |                        |

| |神鋼商事     |                        |

|5|スズキ      |長安鈴木汽車                  |

| |日商岩井     |                        |

|6|スズキ      |望江鈴木摩托車                 |

| |日商岩井     |                        |

|7|住友金属工業   |重慶四友連鋳技術工程              |

| |三菱重工業    |                        |

|8|東海アルミ箔   |天府可楽渝竜食品飲料公司            |

| |正竜貿易     |                        |

|9|日本パーカライジング   |重慶パーカライジング

  || |蝶理       |

  ||10|本田技研工業   |嘉陵本田モーター

  || |         |

  ||11|マツダ      |四川中日出租汽車

  || |伊藤忠商事    |

  ||12|丸紅       |慶紅食品         

  || |丸紅香港     |

  || |日東食品製造   |

  ||13|ミクニ      |三国紅光工業

  ||14|ヤマハ発動機   |重慶建設雅馬哈

  ||15|ヤマハ発動機    |四川華川ヤマハモーター部品製造

  || |アイアイシー   |

  |+−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

−−+ 資料:『中国進出企業一覧』東洋経済新報社

 

3−2−2.四川省市場経済化の現状分析と問題点

イ) 四川省の経済改革の歴史

 経済改革は78年スタートした。当時の第一書記趙紫陽の指導のもとで、(安徽省

とともに)農家への戸別生産請負制を全国に先駆けて実験し、80〜81年には全面展

開した。すなわち人民公社を解体し、郷村制度(町村の旧制度)を回復した。農村を

いかに市場経済に組み込むかについては、「公司の形」でサポートすることが行われ

た。すなわち、生産は個人単位で行い、流通は公司が担当する形である。これは基本

的に日本の農協に似たものと理解してよい。

 ついで国有企業の改革が始まり、78〜83年の時期には「企業に利潤留保を認め

る(放権譲利)」ことにより、利益の内部留保を促した。その後「利潤が増えたばあ

いに、企業への留保を逓増するやり方(利潤分成、逓増包幹)が84秋から行われた

ことを契機として、都市の全面改革へ移行していった。

 当時、模索されたやり方としては「請負制・リース制・株式制」などがあった。8

8年には国有企業の大部分は「請負制」であった。これは農村における生産請負制と

同じ考え方に基づくものである。リース制、株式制は一部でのみ実験された。すなわ

ち88年に70社で株式化のテストが行われた。

 89〜92年は調整期であり、改革は足踏みしたが、92年の〓小平南巡講話以後

、改革が急激に進んだ。

 94年末現在、株式化企業(股〓有限公司)の数は330社、株式を公開発行した

もの53社、上海、深〓で上場したもの21社、香港に上場したものは3社である。

有限公司は2000余社である(これには国有企業と合弁企業は含まない)。株式合

作制は1万社、これは従業員持ち株で、公司法に合わない形である。都市集団所有制

、郷集団所有制を改組したものである。

ロ) 国有企業の改革と社会保障制度の改革

 四川省の大中型企業は1050社、うち5割は株式化改組した。このうち、93年

から22社を「現代化企業」のモデルとした。法人所有権と管理権、社会保障制度の

テストを行っている。企業のグループ化も進めている。現代企業制度の樹立が最も重

要である。企業買収などにより、所有制改革も進んだ。県所属企業の改革も進んだ。

 87〜88年に、国有企業の資産の所有権の転売に着手し、企業買収や合併を行っ

た。これは社会保障制度未整備のために、破産措置を講ずることができないので、代

わりに合併により、失業者の出るのを防ぐためであった。買収したのは、四川省に対

するだけでなく、省外への売却にも応じた。

 たとえば、四川ガラス工場は6割の株式を香港企業に売った。94年に国際商談会

を開き、35社を海外に販売した。

ハ)四川省の優良企業ベスト20位

  以上は成績不振企業の例だが、優良企業ベスト20位は表3のごとくである。

左側の順位は四川省内の順位であり、売上高金額の単位は億元、右側に全国レベルで

のランキングが付してある。国防三線建設の遺産として重工業の分野に有力企業の少

なくないことが分かるであろう。

 

表3 四川省の売上高ベスト20企業(1993 年実績)

+−+−−−−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−−−−−−−−+

|順|    企業・集団名     |億元  |全国  | 備考          |

|位|            |   |順位 |             |

+−+−−−−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−−−−−−−−+

|1|攀鋼集団         |83.61 | 16位|母体は攀枝花鉄鋼公司   |

|2|重慶鉄鋼工業集団公司   |56.93 | 33位|             |

|3|成都鋼管公司       |33.28 | 56位|シームレスハイプ     |

|4|長虹機器工場       |28.94 | 68位|ブラウン管        |

|5|四川石油管理局      |28.67 | 72位|             |

|6|重慶汽車製造工場     |28.27 | 75位|五十鈴と合弁・トラック  |

|7|重慶建設工業集団公司   |25.78 | 84位|ヤマハと合弁・オートバイ |

|8|中国嘉陵工業股〓有限公司|25.72 | 85位|本田技研と合弁・オートバイ|

|9|長城特殊鋼公司      |22.23 106 位|             |

10|重慶特殊鋼集団公司    |20.64 120 位|             |

11|長安機器工場       |19.25 129 位|スズキが技術提供・アルト |

12|中国東方電気集団公司   |18.87 133 位|             |

13|宜賓五糧液酒工場     |11.94 236 位|四川省の代表的銘酒    |

14|成都鉄鋼工場       |11.28 248 位|             |

15|中国第二重型機械集団   |10.75 261 位|             |

16|双流連益集団公司     | 9.63 292 位|             |

17|江陵機器工場       | 8.74 319 位|             |

18|成都航空機工業公司    | 8.48 324 位|             |

19|西南アルミ加工工場    | 8.40 329 位|             |

20|錦江電機工場       | 7.33 381 位|             |

+−+−−−−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−−−−−−−−+

資料:『管理世界』1994年第5期、114 頁。

 

表4 外資系企業500社中の四川省内企業(93年実績)

+−+−−−−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−−−−−−−−+

|順|    合弁企業名       |億元  |全国  | 備考          |

|位|            |   |順位 |             |

+−+−−−−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−−−−−−−−+

|1|重慶慶鈴汽車股〓公司  |22.93 |  5位|いすず自動車           |

|2|成都正大               | 2.24 173位|飼料、CP集団      |

|3|重慶中策輪胎       | 2.18 183位|タイヤ工場            |

|4|成都恩威製薬       | 1.87 218位|製薬               |

+−+−−−−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−−−−−−−−+

資料:『国際商報』19941028日、『中国経済新聞』19941024

 

ニ)県レベル国有企業の改革

 91〜92年には県(市)レベル企業の改革の実験が行われた。これは四川省のG

DPの5割を占める大きさである。雇用拡大に役立ち、農村と都市の格差拡大問題に

も対応できる中小型企業が多い。

 「計画経済体制」の悪影響が小さいので、改革しやすい利点をもつ。しかも行政的

には県レベルで決定できるので、扱い易い。県レベル企業の改革スローガンは、次の

6つの措置の組合せである。すなわち

 1)改−−改革

 2)転−−転換

 3)租−−リース

 4)売−−売却

 5)併−−併合

 6)破−−破産、の6カ条である。

 91〜92年に改革の先鞭をつけた宜賓市が県(市)レベル改革の先兵である。9

3年から宜賓市の経験を省全体に広げようと努力しており、すでに8割の県でこの宜

賓方式を導入するに到った。新都県など10余の県(市)で所有制改革を完了した。

あと3年で改組が完成しよう。しかし、沿海との立ち遅れは大きい。

 その理由は、

 1)経営者の素質が悪い。

 2)株式化のスピードが広東や山東と比べて遅い、などのためである。加えて

 3)企業の内部制度も国際基準と比べ遅れている。広東には旧企業がなかったので、

最初から企業管理の国際基準を導入できるという利点があったはずだ。四川省のばあ

い、大型1050企業のうち900社は国有企業であり、改革が困難だ、との説明で

あった。

 ホ)流通問題、卸売・小売市場について。

 流通分野における市場経済化の現状を見ると、23種の中央統制の商品を除いて、

すべて市場経済化している。すなわち四川省レベルで独自に統制するものは存在しな

い。

 四川省の自由市場(「城郷集貿市場」)を見ると、9116地点のうち109箇所

は卸市場(「批発市場」)も兼ねている。自由市場の取引高は482億元であり、う

ち小売額は384億元である。卸市場は70箇所あるが、なかでも「荷花池市場」(

食糧、食用油を扱う)は全国の商品を扱うことでその名を知られている。

 ヘ)資本・証券市場の現状

 四川省の資本市場の大部分の活動は、銀行間取引である。資金需要が旺盛なので、

周辺のチベット、甘粛省、雲南省、貴州省、さらには海南省などからも調達している

。四川省は一人当たりでは貧しいが、総額では人口の大きさを反映してかなりの規模

である。

 四川省の証券市場では主として国債、その他の債券、株式を扱っている。証券市場

の発展と国有企業の改革は連動している。

 四川省では現在、国債、企業債、株式の売買が行われている。公開されている股〓

有限公司(株式企業)は53社である。証券公司は5社、営業所、支店は他の省から

のものも含めて120あり、売買取扱店は全体で407に及ぶ。銀行に口座を開いて

いる投資者は30余万人であり、従業員持ち株をもつ労働者は100万人に上る。

 四川省の証券取引センターは、上海、深〓とオンラインで結ばれており、深〓や上

海の株式を買うこともできる。92〜93年には紅廟子(地名)に自発的な、事実上

の証券売買市場が生まれた。

 ト)労働力市場の形成

 「四川省の民工〔国有企業の「正規労働者」に対して「民間の自由契約の労働者」

の意〕は全国にあり」といわれるほど四川省出身者が多い。省外、海外への出稼ぎを

含めて組織されたものが延べ1000万、自由に流動する部分は省内を含めて100

0万人と推定される、とのことであった。

 四川省の経済発展にとって最も扱いにくい問題は、農村の過剰労働力問題である。

各地で積極的に「労務輸出」を行い、就業圧力を軽減し、所得を増やす努力を行って

いる。これらの「民工」により、雇用が確保でき、送金も期待できるので、大いに歓

迎すべきだというのが四川省当局者の見解である。「広東や深〓の発展も四川省から

の民工のお蔭ではないか」と四川省の関係者は自負していた。

 

チ)技術市場。

 60〜70年代のいわゆる「国防三線建設」プロジェクトの遺産のために、科学技

術の人材が多い。科学技術系の大学や研究機関も多い。技術売買の「仲介企業」(サ

イエンス・ブローカー)は1万を数えるほどである。これらは国家科学技術委員会に

登録することによって活動が保証されるという。ただし、四川省は総じて内陸地区に

位置して改革開放が遅れたために、商品化能力は低い。「窮則思変」(窮すれば、通

ず)が四川省人の哲学である。

 

リ)資源賦存の状況

 1)土地資源。四川省の土地面積は57万平方キロ、耕地は623万ヘクタールであ

る。成都平原は水稲、小麦、油菜の主産地である。

 2)エネルギー資源。水資源についてみると、大小1400本の河川があり、全国の

流量の15%を占める。発電可能水量は全国の24%を占める。1000万キロワッ

ト級の発電所34が建設可能な量だが、現在は4%しか利用していない。その他、石

炭、石油、天然ガス、電力のエネルギー・バランスおよび総合バランスは表5〜9の

ごとくである。

 3)鉱物資源。すでに探査されている鉱物資源は92種である。たとえばバナジウム

、チタン、天然ガスは全国一である。

 4)森林資源。森林被覆率は20.4%、木材蓄積量は14.6億立方米である。

 5)観光資源。蛾眉山、都江堰、九塞溝、楽山大仏などがある。

 6)労働力資源。技術者は153万人である。

 7)市場の購買力。四川省の原材料消費量は西部9省の約5割を占める。社会商品小

売額は全国の7%を占め、4位である。

 

表5 四川省のエネルギー・バランス( 単位: 万d、標準炭換算)

+−−−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

|           |1990年|1993年|90-93 の増減|

+−−−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

|エネルギー供給総量   |6377.77088.3 710.6   |

+−−−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

| 一次エネルギー生産量|6307.16805.7 498.6   |

| 移入量        | 433.5 514.8  81.3   |

| 移出量(−)     |-288.1-280.3   7.8   |

| 年末在庫       | -75.0 -48.0  27.0   |

+−−−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

|エネルギー消費総量   |6312.37080.7 768.4   |

+−−−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

| 一次産業       | 106.3| 57.7 -48.6   |

| 二次産業       |4262.05454.21192.2   |

| 1.工業        |4218.85396.11177.3   |

  2.建築業       | 43.2| 58.1| 14.9   |

| 三次産業       |   | 303.6 303.6   |

| 1.交通運輸通信    | 185.6 171.0 -14.6   |

| 2.卸売小売飲食業   | 57.6| 63.5|  5.9   |

| 生活消費       |1634.01261.3-372.7   |

+−−−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

|需給ギャップ     | 65.4|  7.6 -57.8   |

+−−−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

 資料: 『四川統計年鑑1995146

 

表6 四川省の石炭バランス( 単位: 万d、標準炭換算)

+−+−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

| |         |1990年|1993年|90-93 の増減|

+−+−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

|石|供給量           |6607.97929.61321.7   |

| +−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

|炭|消費量           |6596.98777.32180.4   |

| +−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

  |需給ギャップ    | 10.0| 10.8   0.8   |

+−+−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

 資料: 『四川統計年鑑1995147

 

表7 四川省の天然ガスバランス( 単位: 億立方b)

+−+−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

| |         |1990年|1993年|90-93 の増減|

+−+−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

|天|供給量           |  57.5  64.4   6.9   |

|然+−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

|ガ|消費量           |  56.8  64.3   7.5   |

|ス+−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

  |需給ギャップ    |  0.7|  0.2  -0.5   |

+−+−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

 資料: 『四川統計年鑑1995148

 

表8 四川省の電力バランス( 単位: 億キロワット )

+−+−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

| |         |1990年|1993年|90-93 の増減|

+−+−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

|電|供給量           | 351.1 437.7  86.6   |

|力+−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

  |消費量           | 337.9 437.0  99.1   |

| +−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

  |需給ギャップ    | 13.2| 10.8  -2.4   |

+−+−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

 資料: 『四川統計年鑑1995148

 

表9 四川省の石油バランス( 単位: 万d)

+−+−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

| |         |1990年|1993年|90-93 の増減|

+−+−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

|石|供給量           | 183.5 227.5  44.0   |

| +−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

|油|消費量           | 183.5 239.2  55.7   |

| +−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

  |需給ギャップ    |  0.0 -11.7 -11.7   |

+−+−−−−−−−−−+−−−+−−−+−−−−−−+

 資料: 『四川統計年鑑1995149

 

 

 ヌ)財政状況

 四川省の全国における比重は高まりつつあるとはいえ、四川省と他の省との省間格

差は拡大している。四川省の財政は、まず公務員にメシを食わせ、公益事業を行い、

最後に建設投資を行う形である。

 92年時点、すなわち分税制を導入する前は、四川省の財政収入は110億元で全

国3位であった。1位、2位はそれぞれ広東省160億元、雲南省114億元である

。一人当たり財政収入は、全国が174元、四川省は117元で後から4位であった

。ちなみに深〓は1536元、チベットは511元である。四川省は人口が多いため

に、一人当たりは小さくなり、チベットは優遇されているわけだ。

 

10  四川省の財政収支( 単位: 万元)

+−−−−−−−−−−+−−−+−−+

|  項 目     |1994年|構成|

+−−−−−−−−−−+−−−+−−+

|総収入       |135.99100

+−−−−−−−−−−+−−−+−−+

|うち工商税収     | 85.8763.1

|  農牧業税     | 14.4810.6

|  国有企業所得税  13.43 9.9

|  国有企業財政補助| -6.21-4.6

+−−−−−−−−−−+−−−+−−+

|総支出        |237.39 100

+−+−−−−−−−−+−−−+−−+

|項|基本建設     | 15.89 6.7

|目|流動資金     |  0.26 0.1

|別|企業改造資金   | 20.11 8.5

|の|科学技術発展資金|  1.78 0.7

|分|地質調査費    | 0.02 0.0

|類|文教衛生事業費  72.0630.4

| |農業支援費    | 11.38 4.8

| |行政管理費    | 35.2014.8

| |救恤費      | 5.98 2.5

| |都市維持費    | 9.96 4.2

| |その他     | 64.7627.3

+−+−−−−−−−−+−−−+−−+

|費|経済建設     | 52.5322.1

|用|社会文教費    | 88.1337.1

|分|行政管理費    | 35.2014.8

|類|その他      | 61.5225.9

+−+−−−−−−−−+−−−+−−+

|収支バランス     |-10.14|  |

+−−−−−−−−−−+−−−+−−+

資料: 『四川統計年鑑1995165

 

 

ル)省間格差と省内の各県格差

 省間格差は大きいが、「悪平等主義」的やり方(平均主義)でこの問題を解決する

ことは考えていない。これが四川省人民政府計画委員会の立場である。たとえば四川

省と広東省を比較してみると、広東省の発展の5割の要因は外因によるとみられる。

この点で内陸に位置する四川省は不利である。このため、九五計画(1996〜20

00年)のポイントは内陸の発展、資源開発から出発することに重きを置いている。

 

 四川省に219県あり、格差大きい。県級財政収入を公務員数で割ると、貧しい県

は一人当たり2000元、豊かな県は2万元で、省内に10倍の格差がある。一人当

たりGNPの市内格差、地区内格差は、表11のごとくである。

 

  11 四川省の省内所得格差−−1人当たりGNPの最大の地区と最小の地区

+−−−−+−−−−+−−−−−−+−−−−−−−+

|市・地区|区県名 |市地区内格差|四川平均2516元|

               |        倍|を100 として |

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+−−−−+

|成都市  |武侯区 |13220 6.0 525

        |金堂県 | 2205       88

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|重慶市 |大渡口区|16022 11.7 637

|    |潼南県 | 1366       54

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|自貢市 |自流井区|10267 6.4 408

|    |富順県 | 1595       63

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|攀枝花市|東区  |15120 6.8 601

|    |塩辺県 | 2216       88

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|瀘州市 |瀘県  | 1940 1.8  77

|    |古藺県 | 1050       42

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|徳陽市 |什放県 | 6520 3.2 259

|    |中江県 | 2052       82

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|綿陽市 |江油市 | 5769 4.1 229

|    |塩亭県 | 1404       56

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|広元市 |旺蒼県 | 3358 2.6 133

|    |朝天区 | 1308 |  |  52

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|遂寧市 |市中区 | 2211 1.6  88

|    |蓬渓県 | 1369       54

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|内江市 |市中区 | 5809 5.0 231

|    |東興県 | 1166       46

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|楽山市 |市中区 | 4260 3.7 169

|    |沐川県 | 1165 |  |  46

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|万県市 |竜宝区 | 2568 3.0 102

|    |巫渓県 | 861       34

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|南充市 |順慶区 | 3216 3.0 128

|    |西充県 | 1057       42

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|〓陵地区|〓陵市 | 2668 2.1 106

|    |武隆県 | 1297 |  |  52

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|黔江地区|黔江県 | 1684 1.6  67

|    |酉陽県 | 1044       41

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|宜賓地区|宜賓市 | 4230 4.8 168

|    |興文県 | 889       35

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|広安地区|華金市 | 2245 1.8  89

|    |岳池県 | 1223 |  |  49

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|達川地区|達川市 | 4314 3.7 171

|    |渠 県 | 1162       46

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|巴中地区|巴中市 | 1362 1.5  54

|    |平昌県 | 896       36

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|雅安地区|宝興県 | 4651 3.1 185

|    |漢源県 | 1503       60

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|アバ州 |〓川県 | 4976 4.2 198

|    |金川県 | 1173       47

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|甘孜州 |色達県 | 3175 3.2 126

|    |石渠県 | 978 |  |  39

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

|凉山州 |西昌市 | 3913 5.0 156

|    |布〓県 | 788 |  |  31

+−−−−+−−−−+−−−+−−+−−+

 資料: 『四川統計年鑑1995237 242

 

 分税制について。

  中央・四川省間の関係は分税制で分け方のルールができたが、省内については、財

政の「移転問題」が解決できていない。四川省の4割の県は赤字財政である。

 省レベルの財政収入は90年119億元、93年202億元(分税制基準ならば1

10億元)、94年250億元(分税制基準ならば136億元)である。94年は9

3年と比べて23.4%増であった。

 四川省の財政支出は90年142億元(赤字23億元)、94年237億元(赤字

101億元)である。四川省の累計赤字は10億元で銀行、企業から主管部門が借り

ている。

 流通税は徴税段階でまず8割を地方分として帳簿に記帳し地方財政に移転し、年末

調整で最終的に83.5%を地方財政に移転する。

 中央と四川省で分ける税種についての徴税方法、分配方法はつぎのごとくである。

まず、国税局がすべて徴収し、そのなかから地方が受け取るべき部分を地方の口座に

振り向ける。それ以外の税目については、中央、地方がそれぞれ独自に徴収すること

になっている。

 

ヲ)四川省の重点産業と重点企業

 四川省の工業体系は整っており、39の工業部門を擁している。なかでも電子工業

の生産額は全国首位である。冶金工業は全国4位、機械工業は全国3位、化学工業は

全国5位、石油天然ガス工業は全国1位である。石炭工業は全国4位、国防科学技術

は全国1位、軽工業、紡織工業も重要な地位を占めている。

1)重慶市を中心とする国防工業、鉄鋼業、

2)成都を中心とする電子、精密機器、航空産業、

3)綿陽を中心とする原子力工業、電子工業、

4)攀枝花を中心とする鉄鋼業、

5)自貢を中心とする苛性ソーダ化学工業、

6)瀘州を中心とする天然ガス化学工業、

などが四川省の工業の核心である。

 

12 四川省工業企業の売上高と付加価値(1994年、億元)

+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−+−−−−−+−−−+−−+

|   業 種         |産品売上高|付加価値額|B/A|企業|

|               |     ()      () |付加価|数 

+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−+−−−−−+値率−+−−+

|1|冶金、圧延加工業      | 209.10 | 122.64 | 58.65 555

|2|交通運輸設備製造業     | 169.70 |  26.55 | 15.651337

|3|化学原料、化学製品     | 139.05 |  43.35 | 31.181662

|4|紡織業           | 125.08 |  37.05 | 29.621262

|5|食品加工業         | 115.72 |  38.96 | 33.672857

|6|レアメタル製品業      | 115.08 |  53.07 | 46.124384

|7|電力、蒸気の生産と供給  | 114.13 |  45.65 | 40.011290

|8|普通機械製造業       | 106.37 |  38.57 | 36.261697

|9|電子、通信設備製造業    |  86.13 |  29.91 | 34.74 198

10|飲料製造業         |  62.26 |  26.09 | 41.912179

+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−+−−−−−+−−−+−−+

11|電気機械、器材製造業   |  61.09 |  16.94 | 27.74 711

12|金属製品業         |  57.18 |  21.50 | 37.601681

13|専用設備製造業       |  48.37 |  16.05 | 33.19 935

14|石炭鉱業          |   46.12 |  22.35 | 48.461833

15|煙草加工業         |  37.06 |  16.13 | 43.52| 23

16|石油天然ガス採掘      |  35.45 |  18.30 | 51.63|  5

17|医薬製造業         |  34.13 |   9.60 | 28.14 267

18|非鉄金属          |  34.07 |   8.24 | 24.20 198

19|製紙、紙製品        |  32.85 |   9.22 | 28.07 800

20|食品製造業         |  26.47 |   7.28 | 27.51 959

+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−+−−−−−+−−−+−−+

21|皮革、ダウンなど      |  20.67 |   5.61 | 27.16 471

22|レアメタル採掘       |  17.89 |  9.67 | 54.08 767

23|プラスチック製品業     |  17.04 |  12.01 | 70.48 850

24|精密機器、オフィス機械製造|  16.81 |   3.89 | 23.17 219

25|化学繊維製造業       |  16.32 |   4.81 | 29.46| 42

26|印刷業           |  14.24 |   5.14 | 36.09 943

27|木材竹材伐採        |  12.78 |  9.76 | 76.42 147

28|その他製造業        |  12.07 |   2.00 | 16.60 757

29|服装その他繊維製品製造業  |  11.92 |   0.90 |  7.62 639

30|木材加工( 竹、藤、草を含む|   9.68 |   2.27 | 23.46 563

+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−+−−−−−+−−−+−−+

31|ゴム製品業         |   8.55 |   2.06 | 24.19 217

32|家具製造業         |   7.63 |   2.61 | 34.20 410

33|都市ガスの生産と供給    |   7.15 |   1.64 | 23.00| 42

34|水道の生産と供給      |   5.52 |   2.44 | 44.28 333

35|非鉄金属採掘        |   4.57 |  1.59 | 34.85 100

36|石油加工、コークス業    |   4.51 |   0.77 | 17.05| 92

37|鉄鉱石採掘         |   2.32 |  1.97 | 85.02| 99

38|文教体育用品製造業     |   1.93 |   0.72 | 37.54 195

39|その他採掘         |   0.10 |  0.07 | 68.68| 10

+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−+−−−−−+−−−+−−+

 資料: 『四川統計年鑑1995394 395

 

 

 重点企業としては、長虹ブラウン管工場、攀枝花鉄鋼公司、重慶鉄鋼公司、東方電

機、紅光電子管、第二重型機械工場、四川化学工場、瀘州天然ガス化学工場などがあ

る。

ワ)主要産業の生産量の全国における比重

 主要産業の生産量の全国における比重は、以下のごとくである。

 原油8.7 %、カラーテレビ11.7%、発電量5.5 %、鋼材6.9 %、硫酸11.3%、苛性

ソーダ8.6 %、化学肥料10.5%、自動車7.8 %、発電設備25.9%、などである。

 

カ)インフラの整備状況

1)発電

 発電量は94年1125万キロワット、2000年目標は1800〜2000万キ

ロワットである。(天然ガスは化学工業に用いる方針)。

2)鉄道整備

 宝鶏〜成都の複線化を陽平関まで行う。これにより輸送量は、現行の2400万dから

5000万dに拡大できる。

 成都〜昆明鉄道の電化を行う。

 重慶〜懐化(湖南省)鉄道

 成都〜達県〜万県の鉄道を計画中。

 三峡ダムが完成すれば、1万トン級バースが設けられ、1.2億トンの輸送能力か

増強される。

3)道路は10万キロに達しており、少数民族地区を除きすべての郷レベルにまで道路

は整備された。   

4)高速道路

 重慶〜成都高速道路の完成によって、重慶・成都間は5時間に短縮された。

 

5)航空路線と空港

 成都郊外の双流空港は年間利用客1200万人であり、全国4位にランクされる。

、さらに重慶江北空港は改造工事が完成した。

6)電話の普及率は100人あたり0.5台である。2000年には1.5台を目標と

している。

6)開発区の整備状況

 91年に重慶は国務院の指定した「長江沿江開放都市」になり、成都は「内陸省都

開放都市」として沿海地区開放都市と同じ優遇条件を受けるようになった。こうして

成都、重慶、綿陽に3つの国家級ハイテク開発区が設けられ、さらに重慶には国家級

の経済技術開発区が設けられた。これら4つはいずれも経済特区なみの優遇措置を受

けられる。四川省にはこのほか省レベル政府の指定した56個の経済技術開発区と旅

遊開発区(観光開発区)がある。93年末までにこれらの開発区に対して181.9

億元が投資され、外資系企業は444企業、総投資額は146.9億元に上った。

 なお四川省の外資受け入れ額(実行ベース)は、19884027万$(全国15位)、19

891311万$(全国17位)、18902437万$(全国15位)、19918091年(全国11

)、19921.1214億$、19935.7141億$( 全国10) 198693年累計8.98億$(

全国13) である( 『中国統計年鑑』各年版)

  人口一人当たりの外国投資の受け入れ額は、19910.74( 全国16) 19921.

02( 全国20) 19935.15( 全国19) 19861993年平均1.05( 全国19

) である( 『中国統計年鑑』各年版)

 

13 四川省の開発区一覧

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|名称         | 所在地      |             |

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|重慶経済技術開発区   |四川省重慶市南坪北路|国務院認可の経済技術開発区|

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|重慶高新技術産業開発区|四川省重慶市沙坪土貝区|国務院認可のハイテク産業|

|成都高新技術産業開発区|四川省成都市外南永豊路|開発区         |

|綿陽高新技術産業開発区|四川省綿陽市臨園東路 |            |

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7)「四川省外国資本投資促進条例」

 四川省人民代表大会常務委員会は「四川省外国資本投資促進条例」(原文=四川省

鼓励外商投資条例)を制定し、公表している。

 このほか四川省は三つの自治州に対しては、別の投資促進条例を規定している。

 投資促進条例の主な内容は、つぎの通りである。

 外国企業の所得税率は30%とするが、成都、重慶に設けた生産的外国企業は24

%に減税する。とりわけ技術集約型、知識集約型、エネルギー、交通、港湾建設の分

野で3000万ドル以上投資し、しかも回収期間の長いばあいは、15%に減税する

。生産的な外国企業で経営期間10年以上のものは、利益の出た年から数えて1年目

、2年目は企業所得税を免除し、3年目から5年目までは企業所得税を5割減税する

。なかでも輸出企業については、企業所得税の減免期間が過ぎたあとも輸出額が当年

の生産額の7割を超えるばあいは、税額を5割減税する。前述の15%減税条項に適

合した輸出企業は、10%に減税する。先進技術企業は減免期が過ぎたあと3年間5

割減税とする。

 これらの優遇措置は基本的には沿海地区のそれと同じだが、輸出企業に対する減免

期間以後の減税措置は内陸地区四川省ならではの優遇規定である。

 対外経済貿易委員会によれば、外資導入の状況は以下の通りである。

1) 四川省の借入残高は94 31.55億ドル、政府ローン60.67%、世界銀

行27.18%、商業ローン9.68%、である。

2) 95年6月現在契約ベース67億ドル、実行17億ドル、49カ国から5860

社である。その比率は、香港59.6%、台湾23.1%、米9.0%、シンガポー

ル4.1%、日本3.6%(21社)である。

3)政府ローンは、フランス、イタリー、アメリカ、日本、カナダ、オーストリアなど

16か国から計19億ドル借入れている。

 香港の徐展堂氏(新中港公司)は成都〜綿陽間の高速道路の開発許可を得て、BO

T方式で道路建設と道路周辺の開発を行い、話題となっている。また成都にシンガポ

ール資本が「蘇州なみの工場団地」をつくる計画も進んでいる。

 

8)少数民族地区発展政策

 アバ自治州に24万キロワットの水力発電所が建設された。資源を検討し製鉄精錬

の計画もある。そのほか草原改造、牧畜発展、公務員など人材養成にも力を入れてい

る。共産党四川省委員会の副書記はいまイ族の出身者である。四川省のテレビ普及率

は7割である。

 インフレについていえば、「肉を食いながら不満をいう」のが今日の中国の庶民の

姿である。肉を食うこと、不満をいうこと、これが中国の現実である。インフレの実

態は、政府統計よりも3〜4ポイント高いのが実情であろう。

 農村の過剰労働力問題対策だが、四川省で1200万人を中小都市の中小企業に移

した。都市の戸籍管理は厳しく行っており、永住戸籍と臨時戸籍に峻別している。農

村の職業紹介機関を通じて「労働許可」を出して、働く場ではさらに「臨時の許可」

を出す形でコントロールしている。成都では原則的に労働者を受け入れないことにし

ている。八五期に成都の周囲20キロに衛星都市を作るため、100地域でテストし

た。九五期には300中小都市で実行する計画である。

 

 四川省の有利な条件は、

1) 水資源

2) 鉱物資源

3) 労働力資源

4) 農業資源

である。このうち食糧は4300万トン(全国の9.5%)、豚羊など502万頭(

全国の13.7%)、養蚕21.3万トン(全国の25.7%)。

 四川省の消費量は全国の9.2%を占めており、市場として大きい。原材料消費は

西部の半分を占め、小売は全国の7%で4位。

 四川省の困難は、計画経済の残滓と企業負担が主すぎること。

 資金不足、企業管理、業界管理が不足している。日本に学びたい。

 企業改革として「八商品五業種」計画がある。

 「八商品」とは、1)鋼材(型鋼、重軌、シームレスパイプ、薄板)、2)カラーテレ

ビ(松下、東芝など。長虹は全国最大のカラーテレビ工場であり、年産150 万台)、

3)ビデオ(錦江電機工場は国務院電子工業部の指定企業になっている)、4)通信設備

(ファックス機、光ケーブル、電話のデジタル交換機)、5)オートバイ、6)自動車、

7)建築、工事用機械、8)発電変電の8商品である。

 「五業種」とは、1)シルク、2)食品、3)医薬、4)紡績、5)建材、である。

 四川省は初めてブランド戦略を提起した。小さな巨人として中小企業の育成を狙う

。国有企業改革は80社でテスト中である。合併による余剰労働者の整理が肝心であ

る。

 三角債問題の解決方法は、話し合いにより実物返済か、リスケジュールによる方向

で処理しようとしている。

 専業銀行の人事は政府と関係ない。

 国有企業のトップ人事は審査委員会で資格あるものから選ぶ。

 

3−3.四川省の将来ビジョン

 今回の四川省現地調査で改めて確認したことは、改革開放の政策がようやく内陸地

区にも根づき始めたことである。重慶や成都に経済技術開発区あるいはハイテク開発

区が設けられ、外国企業の進出が始まりつつある。すでに発展した沿海地区の相対的

高賃金を避けて内陸地区の安価な賃金を利用する動きが生まれたこと、中国の開放政

策が中国国内市場の開放にまで発展してきたために、市場戦略の観点から内陸地区に

視点を移したこと、さらに原料資源の確保の観点からの内陸シフトなど、要因はさま

ざまだが、いずれにせよ、中国の改革開放政策が内陸地区にまで波及してきた実例を

われわれは四川省で観察できた。

 ここで四川省の市場経済化、四川省経済のテイクオフのもつ戦略的意義を考察して

みたい。中国はこれまで、広東省を中心とする華南経済圏、上海市を中心とする上海

経済圏(揚子江下流域経済圏)、大連・天津などを中心とする環渤海経済圏の三つの

エンジンをもって中国経済のテイクオフを準備していた。しかし、これらはいずれも

沿海地区に属しており、中国全体を巨大なジャンボ機にたとえた場合、内陸地区とい

う尻が重すぎて離陸が困難であった。しかし、いま内陸地区の経済の中心である四川

省の「第四のエンジン」が始動することによって、中国経済の離陸を確実に保証でき

る推進力が生まれたと評価できるであろう。

 この意味で、四川省経済の離陸は、中国経済全体の離陸にとってきわめて重要な意

義をもつものである。

 では、動き始めた四川省経済の市場経済化を加速するためには何が必要なのか。答

えはインフラ整備の一語に尽きるのではないか。これまでの四川省・中国当局の努力

によって、重慶〜成都のハイウェーに代表されるようなプロジェクトは進行してきた

。これによって四川省の二つの経済センターが5時間で結ばれることになったのは、

画期的である。両者が市場経済圏として一体化する方向が見えてきたからである。

 重慶−成都という二つの中心およびその沿線には、工業都市が形成されていくはず

である。このような形で四川省経済が発展するならば、それは省外の周辺地区の市場

経済化をも大いに刺激するはずである。

 日本からのアクセスを考えるばあいに、上海〜重慶(江北空港)、上海〜成都(双

流空港)間を結ぶ航空路の増便も不可欠であろう。航空路線の整備によって、日本と

重慶、成都との時間距離は大いに縮小することが予想できる。将来は日本からの直行

便によって、その時間距離はますます縮小するであろう。

 三峡ダムの完成によって、揚子江を利用した水運もより可能性が開けるであろう。

四川省はかつて国防三線建設の基地であった。当時、設けられた国防工業の民間転用

が進み、内陸地区に世界の開放経済の波が波及することは、中国の開放政策をより確

かなものとし、中国を世界経済のよきパートナーとして育成していくうえでのカナメ

の一石ともなるであろう。

 

3−4.ODAのあり方

 四川省に対するODAのうち有償資金協力としては、重慶長江第二大橋建設計画(

91年度47.64億円)および3都市上水道整備計画に含まれる重慶部分(91年

 、厦門、昆明と合わせて104.0 億円)がある。

 第四次円借款において計画中のものとしては、岷江の紫坪舗ダムがある。その計画

概要はつぎのごとくである。

 紫坪舗ダムは都江堰の5キロ上流、成都から60キロの位置にある。これは、水利

、発電、環境保護の総合プロジェクトである。冬は水不足なので、夏の水を貯水する

ことによって、水量調整し、「錦江の冬、水なし」の水枯れ状態を改めるものである

。ダムの貯水量は、174億立方米である。灌漑面積は1000万ムー(66.7万ヘク

タール)から1400万ムー(93.3万ヘクタール)へ拡大する。これは四川省におけ

る「九五計画」(19962000)の柱となる。ダムの主な目的は、工業用水の確保であ

り、発電は66万キロットで副次的な位置づけを与えられている。

 四川省人民政府の担当者が94年10月日本外務省を訪問し、中国課長と会ったと

ころ、円借款は中西部のインフラ部門拡充へ傾斜したいと指摘したが、「この日本側

の意見に私(王建〓)も大賛成だ」。

 円借款などのコンサルタント業務を順調に行うために、四川省では「川協工程諮問

公司」というコンサルタント会社を作り、FS(feasibility studies ) をやった。

この作業を通じて感じたことだが、日本側専門家は「環境保護に対する理解」を欠い

ており、環境保護にかかわる部分を計画から除外しようとした。すなわち3億ドル(

=300億円)申請を172億円にケチった(四川省予算処長・会計師王建〓氏の話

)。これはなにかの誤解である、と思われる。環境保護重視は日本政府の方針であり

、日本側からこれを否定することは考えにくい。察するに、中国側の総額規制方針の

もとで、環境保護関連の部分が「不要不急」として削除され、それが日本側が総額を

ケチったからと中国内部で説明したものと思われる。

 ただし、このような誤解が四川省政府当局者によって行われていることは、はなは

だ遺憾である。総じて、円借款や無償供与の実態、手続きプロセスなどについて、あ

まり知られていないとの印象を受けた。

 四川省政府の考えるODAの受け入れ分野の重点は、四川省政府の考えている産業

政策において重点分野とされているものと同じである。八五計画(19911995)であ

れ、九五計画であれ、四川省当局はこのような産業分野に力を入れようとしており、

それを支持するような外国援助は大いに受け入れたいと表明した。

 すなわち水利、エネルギー、国有企業改革のための工業の技術改造などが差し迫っ

た必要分野、重点分野である。

 日本ODAへの期待は何かと問われるならば、「量的にもっと増やしてほしい」の

一語に尽きる。日本の民間投資も、香港、台湾、アメリカ、シンガポールについで、

5位という地位は、「日本の経済力からして少なすぎる」と感じている、との見解が

しばしば語られた。

 

 

地図1 主要都市

 

地図2 鉄道インフラ